マガジンのカバー画像

短編小説「夢のゴーグル」「公共孤独死相談所ハローデッド」他

8
短編小説の置き場です。 「夢のゴーグル」ある新製品VRゴーグル開発者へのインタビュー 「公共孤独死相談所ハローデッド」孤独死に関する政府機関ができた社会の話 「たいせつなも…
運営しているクリエイター

2019年2月の記事一覧

小説「気がつけば秀吉」

 授業に出たくなかったので、目黒日吉は学校の屋上に来た。昼休みには生徒でにぎわう屋上も、授業中だからもちろん他に誰もいない。日吉はそこで腐りかけていた手すりにもたれかかって、雲に覆われて薄暗い空をぼんやりと眺めていた。手すりのサビを無意味に撫でたり、ゆするとガタガタするので何度もおもちゃみたいに揺らしていた。屋上は風が吹いて少し冷たいのが心地よかった。日吉は精神的にもやもやすると、いつもひとりで屋上に来ていた。ひとりになりたかったのだ。  その屋上へもうひとり生徒がやってきた