ひとさじエッセイ：春の雨

雨が土を濡らして空気が心地よい匂いになる。
今年も雨が降るたびに暖かくなってくる季節になった。


春の雨の日は特段お気に入りだ。
湿気に蒸らされることも無くて、程よく涼しく、土を濡らす匂いが気分を落ち着かせてくれる。

独特な匂いにつられて毎年この時期は「去年は何やっていたかな」とよく物思いに耽る。
去年は確か全部から逃げ出しておばあちゃんの家に駆け込んだ時期だ。
仕事もやめて、家事もやめて、考えることさえもやめてひたすらにぼんやり雨の降るおばあちゃん家の庭を眺めながら本を読んでいたと思う。
当時は何もしないことに努めていたから今になって思えば至福の時だったようにも思えるし、好きな匂いを嗅ぎながら去年の今頃は穏やかだったなと思い返すこの瞬間も穏やかで心地よい気がする。

正直実家は居心地が良くないけど、個室に篭っていればなんともないし、Alexaと上手くやっていけていて、調子が良いとは言い切れないけどまぁ悪くもない。

せっかくの雨の日なので今日は仕事せず、穏やかに過ごそうかな。
また気温や気圧に悩まされるその日に備えて。