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官僚主義とヒューマノクラシー

ヒューマノクラシー(ゲイリー・ハメル)が希望の書でした。

自律分散組織の大家でもあるゲイリー・ハメルから、組織開発を担う人、より良い組織をつくりたいすべての人への大号令のようにも感じました。

どれだけ良い組織を作ろうと思っても、なんか見えない壁のようなものを感じる、前提から見直す必要があるように思う、といった方にぜひ読んで頂きたいです。


官僚主義とヒューマノクラシー

本書では官僚主義(bureaucracy)に対して、著者の造語であるヒューマノクラシー(humanocracy)の概念と実現のポイントについて説明されている。概念的な違いは、以下のように紹介されています。

官僚主義では「人間=道具」であり、製品やサービスを生産するために雇用される。ヒューマノクラシーでは「組織=道具」となる。人間が自分の人生や、顧客となる人たちの人生をよりよくするために使う道具となるのだ。官僚主義で中核となる問いは「人間を組織により奉仕させるには、どうすればよいか」だが、ヒューマノクラシーでは、「どんな組織なら、人々から最高の力を引き出し、その力に値するような組織になれるのか」となる。

官僚主義とヒューマノクラシー

本書では官僚主義(**bureaucracy**)に対して、著者の造語であるヒューマノクラシー(**humanocracy**)の概念と実現のポイントについて説明されている。概念的な違いは、以下のように紹介されています。

官僚主義では「人間=道具」であり、製品やサービスを生産するために雇用される。ヒューマノクラシーでは「組織=道具」となる。人間が自分の人生や、顧客となる人たちの人生をよりよくするために使う道具となるのだ。官僚主義で中核となる問いは「人間を組織により奉仕させるには、どうすればよいか」だが、ヒューマノクラシーでは、「どんな組織なら、人々から最高の力を引き出し、その力に値するような組織になれるのか」となる。

ヒューマノクラシー

人の力をいかにコントロールするか、を考えてきた官僚主義に対して、ヒューマノクラシーは、組織と人の力をいかに引き出すかについて考えらている点が特徴的です。

官僚主義が、人から情熱やクリエイティビティを奪う

本書では一貫して、"人間の力"については信じる姿勢が貫かれています。

私たち人間にはレジリエンスがあり、創意にあふれ情熱を持っている。しかし、組織はそうではない。

なぜか。

それは組織が人間そのものよりも人間らしくなくないからです。

なぜか。

官僚主義によって組織ができているためです。

そもそも官僚主義という言葉は、18世紀初頭にフランス政府の大臣ジャック=クロード=マリー=ヴァンサン・ド・グルネーによってつくられた言葉であり、”事務室での支配”を意味し、誉め言葉ではない。政府によって起業家精神を阻むことを危惧して作られた言葉である。

また、社会学者のマックス・ウェーバーは20世紀初頭に、官僚主義は非人間的になればなるほど完璧に近づいていく、と記した。

ウェーバーによると、官僚主義は、それ以前の独裁的で無秩序な組織と比較すると、正確さや安定性、規律の厳密性という面で優れており、最も効率の良い組織形態である。

実際にこの効率を求める官僚主義の発展によって、自動車や携帯電話を多くの人類が手にする時代を築いてきおり、本書でも人類の発明の中でも官僚主義はトップクラスと書かれている。

しかし、この”効率”を追い留めると、以下のように、中央集権、分節化の特徴をもつことになる。

- 公式な階層がある
- 肩書きによって権力が決まる
- 権力が上から下へと流れていく
- 上位のリーダーが下位のリーダーを任命する
- 戦略と予算は上層部が決める
- 本社のスタッフが方針を決め、それに従わせる
- 仕事上の役割がきっちりと決められている
- 監督や規則、処罰によってコントロールされる
- マネジャーが仕事を割り当て、業績を評価する
- 全員が昇進を競い合う
- 報酬は職位によって決まる

ヒューマノクラシー

こうした良くある(というかほとんどの場合当てはまる)組織の特徴がによって、人間らしさは損なわれ、それによって、最大効率を手にしているのが現代の官僚主義に基づく組織である。

 官僚主義が倒しにくい理由

前述の通り100年以上前にウェーバーが、官僚主義によって人間らしさが失われる、と言っているにも関わらず、なぜ未だに官僚主義は変わらずあるのか、なぜ倒すのが難しいのか。

本書では以下の理由が紹介されています

①官僚主義はどこにでもある
これだけ広まっていると、当たり前のものだと受け入れたくなってしまう

②社会規範の一部になっている
社会の慣習になっているため、挑む人は愚かに思われる

③複雑で体系的
複雑に絡み合っているため、どこから手をつけていいか分からなくなる

④官僚主義者は現状を変えたがらない
官僚主義者は甘い蜜を吸っており、権限を手放したくない。実際官僚主義が終わらない理由として、リーダーが権限を手放そうとしないというのが最も大きな理由というデータもある

こういった理由から官僚主義から抜け出すのは難しい。

しかし本書では一貫して、できないとは言わない。大企業であっても、希望はあり、事例もある。

次の原則から始めることで、人間らしさを取り戻していくことができる

ヒューマノクラシーの7つの原則

ヒューマノクラシー実現に向けては、各組織ごとに適した進め方があると断った上で、以下7つの原則が紹介されている。

それぞれ章立てされ、事例も紹介されているが、今回は簡単に要約。

①オーナーシップ
権限委譲をすすめ、マイクロマネジメントせず、組織に対してオーナーシップが持てる状態をつくる

②市場
中央集権の限界を認め、自由市場の原理が組織に働く状態をつくる

③健全な実力主義
能力とパフォーマンスがオープンに評価され、能力があると認められた人が評価され報酬を得られる状態をつくる

④コミュニティ
お互いが人間的な感情を出すことができ、相互に貢献し合えるコミュニティ化を目指す

⑤オープンであること
情報、意思決定のプロセス、組織内・外の境界線をオープンにする

⑥実験
細かな計画よりも実験を奨励し、実験の責任を個人に追及せず支援する

⑦パラドックスを超える
組織内で起きているトレードオフを乗り越える方法を考える。状況ごとにバランスがとれるよう、ときに一貫性を少し犠牲にする

まとめ

官僚主義の問題は、人間が作ったシステムなのに、人間らしくないことだ。なので、どれだけ発展しようとも(むしろ発展することで)、心がしぼんでいく。

ヒューマノクラシー

本書でも言われている通り、官僚主義の恩恵はたくさんあり、人類の発展に確実に寄与してきた。しかし、「人間らしくない」に変えてまで手に入れたい発展とは何だろうか。働くという事、組織というものに、人間らしさを取り戻す革命を告げる一冊。強くお薦めします

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