00年代のメイドカフェ、コスプレカフェの景色はとっくに過去のものになり、コンカフェに塗りつぶされてしまった?

 先日の老舗メイドカフェぴなふぉあ閉店(秋葉原の“名門メイド喫茶”が突然の「無期限営業休止」 ショックの声広がる)に続き、LitlleBSD閉店のお知らせはを受け、こんなツイートがありました。

 過去を振り返らない街として秋葉原を取り上げたブラタモリの放映からももう10年以上経っていますが…

 その時に「地層」に例えた表現は汎用性が高く、何度か使っています。

 コスプレ系飲食店の歴史としてメイド喫茶という言葉よりもコスプレ喫茶、コスプレ◯◯という言葉が先に使われだし、コスプレ居酒屋のLittleBSDはその代表的な飲食店でした。当時、朝まで営業する居酒屋や秋葉原ではそもそも少なく、また電源やフリーWi-Fiが利用できる店としても貴重でした。

 コスプレ◯◯からメイド喫茶、メイドカフェという言葉が多く使われ出したのは2004年からの所謂萌えブーム以降です。ブームを象徴するものとして「メイドカフェ」が数多くのメディアで取り上げられました。テレビのバラエティ番組で扱われることの多いメイドカフェは@ほぉ~むカフェ、コスチャ、ぴなふぉあ、ミアカフェなどミニスカートのメイド服を着たお店が中心も、キュアメイドカフェ、メイリッシュ、シャッツキステなどもアニメや漫画の舞台としても使われることでブランド力を上げて行きました。様々なスタイルのお店が生まれたのです。そして、その時代表的だったキュアメイドカフェ、@ほぉ~むカフェも今もこの業界を代表するお店として存在します。

 秋葉原における「メイド喫茶」「メイドカフェ」に代表されるコスプレ系飲食店の役割として、かつて電気街に少なかった若い人が利用しやすい、店内でオタク趣味を明らかにしても構わない、さらには様々な人を受け入れる多様性の象徴のようなものがありました。LittleBSDもそういう店のひとつでした。

 今も日本初のメイド喫茶として営業しているキュアメイドカフェは公式サイト上にも「メイドカフェ」と表示をしています。

http://www.curemaid.jp/

 メイドカフェやコスプレカフェがコンカフェに塗りつぶされてしまった、というのは大きな間違いに思います。ここで言う「コンカフェ」とは秋葉原電気街の街中で「コンカフェいかがですか?」「お話しませんか?」「一緒にお酒飲みましょう」という声をかけたり、お店をアピールするパネルを持って客から声をかけられるのを待ち、釣れた客をお店まで引く客引き行為をする店たちのことを言います。コンセプトショップの略だからコンカフェ、メイドカフェもコンカフェのひとつと強弁する人もいますが、それは間違いです。

 まだ店があるという事実だけではなく、店の利用の目的や客層が異なります。秋葉原ならキュアメイドと対象的な@ほぉ~むカフェでも。思考を停止せず考えてみてください。秋葉原を訪れる外国人観光客がお酒を飲みながら若い女性の店員と話す前提のスタイル(基本的に風営法の許可取得済)のコンカフェと@ほぉ~むの店内でパフォーマンスメイドさんと同じものだと、どうして思えるのか?と。@ほぉ~むだけに限りません。メイドカフェやコスプレカフェは様々なコンセプトがあり、様々な楽しみ方がある。コンカフェと同列にすることはできないのです。

 そういったコスプレ系飲食店を分類した記事もあります。

 秋葉原以外になるとさらに顕著です。歌舞伎町にもコンカフェがたくさんあります。メイドカフェは極めて少ない土地柄でした。できてもなかなかうまく行かない。営業していた期間はわずか数ヶ月なのに、10年以上も看板が放置された店。児童福祉法や風営法違反で検挙される…そんな繰り返しで、長く続くコスプレ系飲食店は「メイド」をアピールしていない…そういう土地柄でした。

 さらに思考を進めれば所謂萌えブームで花開いたメイドカフェの文化そして機能は広がっていることに気づくことができます。LittleBSDの電源とフリーWi-Fiは今は一般の飲食店でも珍しくありません。アニメや漫画でのメイドさんのイメージもメイドカフェから来ているケースが目立ちます。今期のアニメ『アキバ冥途戦争』はまさにそのひとつです。セガやアニメイトのコラボカフェも当初はメイドカフェがその役目を担いました。

 一方で「メイドカフェ」という言葉が力を持ちすぎた結果、悪意のある人たちが利用し、軋轢、分断が生まれました。秋葉原でも例外ではありません。店側も自分の店が「メイドカフェ」と言いにくい状態が生まれたのです。しかも方向性として全く違うところから複数。そのひとつが「コンカフェ」でした。「コンカフェ」が「コンセプトカフェ」の略ではなく、メイドカフェと別物というのはこちらの記事で証明ができます。

 この記事で言及したいのは、本来「メイド喫茶」「メイドカフェ」と言っても問題ないはずなのに言えなくなった方。メイド喫茶の影響があり制服にメイド服を採用しているお店が出てきています。オタククラスタの居場所という点ではメイド服の制服とは限らない店もあります。いずれも「コンカフェ」からはさらに遠いお店たちです。

 これらの店はコンカフェとは競合しません。コロナ禍で外食の機会が減り、さらに物価高が追い打ちをかけます。普段から秋葉原の街を見てきていれば、家電量販店が減り、PCパーツのお店も減り、セガはGIGOとなり一部閉店、とらのあなまで実店鋪から撤退する状況を見てきているはずです。コロナ禍が落ち着き、海外から旅行者が増える希望もあっても、どうしても厳しくなるところは出てきます。

 メイドカフェが新しいコンカフェに塗りつぶされているのではありません。「みのや菓子工房」のようにルーツがメイド喫茶にありながら、メイドカフェと言わずにUDXにて移転オープンさせた意欲的なお店もあります。過去に固執し振り向けとは言いません。今、そこにあるものを雑に扱ってはならない。そこにいる人たちがいる。がんばっている人たちがいる。そこに目が行って欲しいと思います。

 メイドカフェを巡る環境は所謂萌えブームの頃からよいものとは言えません。主に大阪でメイドカフェを経営する人のツイートですが、コンカフェとメイドカフェを混同させようとする人たちの動きでより悪化しているケースもあります。メイドカフェが好きだという人はメイドカフェが好きと言える環境ができているとは言えません。言い換えれば「推し」たくても大手を振り「推し」としてアピールしにくいのです。私はできるよ、という人はいても誰もがそれができるか?ということを意識してください。

 振り向かないとメイドカフェはもうないものではありません。メイドカフェの地層の上にコンカフェの地層が覆いかぶさり、断層がないと見えなくなっているものでもありません。

 00年代から続くメイドカフェ、コスプレカフェの景色があるにも拘わらず、見ることをしない。とっくに過去のものと思い込み競う箇所が違うコンカフェと同一視して塗りつぶしているのは誰なのでしょうか?

(2023年10月18日追記)
 メイドカフェだけじゃなくメイドリフレも偏見の目で見られてきました。リフレの方が強かったかもしれません。

 メイドっぽい服装をしただけでいかがわしいものという偏見も残っています。


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