秋葉原のコンカフェの歴史を振り返る
秋葉原のコンカフェ店舗数は200店舗を超えている?
2022年1月現在、秋葉原には200店舗以上のコンカフェがあると言われています。これは事実と言えます。ここで言う秋葉原は台東区秋葉原ではなく、電気街の秋葉原、千代田区外神田を中心とした地域を指します。
参考としてメイド系飲食店の数は2005年8月は18店舗、その8年後の2013年7月は74店舗が営業していました。前回の再録記事にあるポジショニングマップ掲載店舗数が当時営業している全店舗となります。8年単位で見ると2005年18店舗→2013年74店舗→2021年200店舗以上と衰えることなく増加しているように見えます。
※コンカフェとメイドカフェは一致するものではありません。コンカフェの店舗数に言及するため、便宜的に使っています。
■コンカフェにメイドカフェは含まれない?
コンカフェとメイドカフェは同じカフェなのでしょうか?違うカフェなのでしょうか?
コンセプトカフェの略がコンカフェだとしたらメイドカフェはコンカフェの一種にはなります。最近のコンカフェに関する報道ではコンカフェはコンセプトカフェの略称だと説明するものもあるかと思います。しかし、一般的にコンセプトカフェというと以下のようなカフェが当てはまります。
ユニークなテーマのお店、さらに言うと何らかのコンセプトを持っていればコンセプトカフェなのです。ブームとなった猫カフェ、古民家カフェはコンセプトカフェです。ハンドメイドカフェ、絵本カフェ、探偵カフェ、予言カフェなどもコンセプトカフェです。一方で「コンカフェ」という言葉を使った場合、これら多くのコンセプトカフェはコンカフェという認識はされません。
コンセプトカフェの略称がコンカフェ。メイドカフェもコンセプトカフェの一つなんだからコンカフェという主張は成立しないのです。もし言えるとしたら、メイドカフェの一部にコンカフェがあるかもしれない、メイドカフェの一部からコンカフェが生まれたというものになります。図に表すと以下のようになります。
ここから言えるのは、メイドカフェの文化から生まれたコンカフェの店舗数が異様に増えて200店舗以上まで増加しているということです。
■コンカフェとメイドカフェの違い
同人誌「メイドカフェ批評」ではメイド喫茶(メイドカフェ)を次のように定義しています。
使い方は人によってそれぞれです。観光客向けに演出されたパフォーマンスを楽しむ、読書、友達との界隈、ゲーム、原稿…今なら仕事リモートワークもできる場所です。そこでオタク趣味を全開にしても引かれることはありません。かつてはきんもーっ☆事件のように理解のない人達によって中傷、差別されることがありました。
オタク向けのキャバクラと言う人もいましたが、コスプレキャバクラがメイドカフェとは別に存在します。お酒のないキャバクラという人もいましたがメイドカフェのメニューにはお酒も存在します。どちらもメイドカフェを誤解した表現です。
コンカフェでは、客と若い女性との会話がベースとなります。キャストドリンクというメニューが存在し、実質指名が可能です。
最近のコンカフェの特徴としては、1人用のテーブル席で対面にキャストが立ち、目線が合うように客席が1段高くする内装が増えています。テーブルが小さく、オーダーしたフードとドリンクでいっぱい、作業するのには向いていない。対面に立つキャストとお話するのに特化した作りです。接客ではなく接待と判断されてしまう恐れがあります。
※店側でプロモーションの一環としてコンカフェの内容でメイドカフェ、コンセプトカフェと主張するケースがあります。
秋葉原のコンカフェ増加の歴史
■コンカフェ誕生前夜~誕生
所謂萌えブームと呼ばれた2004年~2005年以降に秋葉原で増加していったメイドカフェは様々なコンセプト、バリエーションのお店が増えました。その中にはメイド服以外のコンセプトが特になく、具体的なコンセプトがないために「全く新しいコンセプトのお店」という陳腐なキャッチコピーのお店がでてきました。中にはお客さんの動向でコンセプトの方向付けをしていくというお店もありました。これがコンカフェの源流と思います。
既存店舗と差別化ができず、サービス面で上回ることができず、なんとなくコンセプトと言うというお店です。
観光客、一見さんがひっきりなしに押し寄せる秋葉原ではそれでも経営が成り立ったのです。
風向きが変わったのは2008年6月に起きた秋葉原無差別殺人事件でした。ホコ天のトラブルもあり、事件後にはホコ天が中止、観光客が少なくなったメイドカフェは大打撃を受けました。
苦戦する店が出る中、当時新興店だっためいどりーみんが極端な客引きによって客を獲得することに成功しました。それに乗じて一部のメイドカフェも客引きに力を入れるようになりました。当時客引きの目立っためいどりーみん、もののぷ、ぽぽぷれの3店舗はネオメイドカフェとして、メディアに取り上げられるようにもなっています。
次にトイグループの登場があります。既存店の居抜きから始まったクラウンティアラをきっかけに秋葉原に続々と新規店舗をオープンさせ、一時期は中央通りにグループをアピールする垂れ幕を掲げていたこともありました。
当初はクラウンティアラの経験から制服や内装に拘ったメイドカフェを作っていくことを期待していました。が、実際には秋葉原初と言える業態としてはガールズバー、客引きによって客を獲得するのに成功した他店舗展開のグループとなりました。
※今は店舗数を限定し、客引きどころかビラ配りも目立たないグループです。あくまで目立たないようにしているグループというのが正解かもしれません。
同時に「コンカフェ」という言葉もトイグループが話題となった2015年頃には使われ出しています。私のツイートで「コンカフェ」を使ったのは2015年6月ですが、この時点で「コンカフェ」という言葉を使う人達は多くいました。
■JKビジネスのメイドカフェ・コンカフェ化
トイグループの台頭と共に秋葉原ではJKビジネス業者がやってきました。当時メイドカフェ業界の人たちはこのJKビジネスに興味はなく、別の業種という認識をしていました。秋葉原にどれぐらいのJKビジネスの業者があるのか?店舗数は?どんなサービスか知っている者は少なかったのです。摘発があってもそれは変わりありませんでした。
社会活動家のColabo仁藤夢乃がメイド喫茶で少女援交が行われている、性風俗だ、人権団体ヒューマンライツ・ナウ伊藤和子らが秋葉原には児童ポルノが溢れているという根拠のないデマを国内外に流すまで別世界のことと思っていたのです。
その後、社会活動家や人権団体はJKビジネス=買春という認識で公明党佐々木さやか、自民党平沢勝栄・野田聖子らにロビー活動をしかけました。
その結果2017年4月に大規模な補導が秋葉原で行われています。
当時、補導された女性から話を聞いています。
その後、2017年夏に東京都はJKビジネスに特化した条例を施行しました。
しかし、この条例は下着や水着、女子高生の制服による接客を制限したものでしかありませんでした。JKビジネス業者の多くは女子高生の制服を辞め私服のカフェ、JKカフェからガールズカフェと名称を変えるだけで営業が継続できたのです。
私服でのガールズカフェでは客を捕まえることができないのか、JKビジネスの店舗では、やがてメイド服、ミニスカポリス、ナースのコスプレ姿で客引きをするようになりました。こうなるとメイドカフェとの違いはわかりにくくなります。
■JKビジネスとコンカフェとの合体を象徴する入れ墨事件
2018年1月に秋葉原のメイド喫茶経営者が働いている女性を泥酔させお尻に入れ墨を入れたという報道がありました。※2024年7月現在、報じた朝日新聞や産経新聞のネット記事からは削除されています。経営者は懲役1年執行猶予3年の判決を受け、2021年6月に執行猶予期間を満了。
当時のマスコミの多くは「メイド喫茶」での事件として報道しましたが、実際は違います。今は偽装メイドカフェと呼ぶ事例ができましたが、この事件がJKビジネス業者がメイドカフェに偽装しトラブルを起こして事件化した最初の事件となります。
より詳しい情報はメイド喫茶経営者がメイドを泥酔させお尻に名前の入れ墨をいれた事件、解説
注目すべきはメイドカフェとしてオープンしたはずの「エターナル」との関わりです。今の「エターナル」系列は偽装メイドカフェのグループのひとつとして秋葉原では認識されています。2021年5月の大規模な摘発時にはさらなる摘発を恐れ、営業を停止、他の場所で営業を行う対策を講じました。
※エターナルは、秋葉原でも話題となった無料案内所との関わりも出て、偽装メイドカフェ色を強める懸念もありましたが、2024年1月25日現在、エターナルの店舗は秋葉原コンセプトショップ協会に登録している店舗もあり、偽装メイドカフェから健全化に向かっています。
JKビジネスへの規制が強まると同時にJKビジネス業者がそれまでのメイドカフェに急激に近づき、メイドカフェ側でも一部がJKビジネスとの同化を望んでいたのです。
コロナ禍によるメイドカフェとコンカフェの分離
しばらくメイドカフェとコンカフェの境界が曖昧な時期は続きます。それまでメイドカフェとして営業してきた店はコンカフェと言う必要はないのですが、新しい店はコンカフェかメイドカフェかブレることが多いために起きていた現象です。
単純にコンカフェという言葉は一般的に認知されていないため、お店をアピールするためにコンカフェ、メイドカフェあえて曖昧にしていました。Googleトレンドを見るとJKビジネスへの規制が強まると共に「コンカフェ」の検索は伸びていますが、「メイドカフェ」+「メイド喫茶」で検索する人は「コンカフェ」より圧倒的に多かったのです。2020年のコロナ禍が起きるまでは…
なぜコロナ禍によって「コンカフェ」の検索件数が増えたのか?
夜の街でのクラスタ発生として批判されたのはクラブやキャバクラでした。コンカフェは批判の対象とされなかったのです。そのため緊急事態宣言下でも営業を続けた店は数多くありました。時短営業要請を無視した店も珍しくありません。キャバクラの変わりに利用するお客さんが増え、バイトなど仕事を失った若い女性の受け皿となったのです。
ナインティナイン岡村隆史の発言が炎上しましたが、その現象がまさにコンカフェで起きていたのです。
歌舞伎町や池袋や湯島の歓楽街では閉店したキャバクラやスナック跡地にコンカフェが入るというのも珍しくありません。キャバクラやガールズバーを経営してきた企業の中にはコンカフェに業態変更させるケースも出てきます。
「コンカフェ」の検索が増えてくると、コンカフェ側で「メイドカフェ」という言葉を使うメリットは少なくなります。使わなくなることでメイドカフェとコンカフェは違うものという認識が一般的にしやすくなりました。
コンカフェのポジション
コンカフェはコンセプトカフェの略称とは言うには無理があります。あまりに他のコンセプトのあるカフェと違いすぎます。コンカフェにメイドカフェが含まれるというのもあまりにも乱暴です。
歴史的に見るとメイドカフェの一部から生まれたとは言えますが、現在はJKビジネス、キャバクラ・ガールズバーの新業態としてのコンカフェも数多いのが実態です。
コンカフェがJKビジネスとしての届け出やキャバクラやガールズバーの延長として風営法の許可を取って営業するのは働く人たちも利用できる人たちも安心ができます。その代わり18歳未満が利用できない、チラシ配りに大幅な制限がかかります。カフェとして求人や宣伝することもできません。
千代田区がチームAKIBA安全・安心プロジェクトを開始したのは、このコンカフェ問題を放置できないと捉えたものです。
これを受け、業界団体「秋葉原コンセプトショップ協会」が2021年1月に設立されます。
秋葉原のカフェとして営業を継続し、コンカフェ文化を作っていきたいのであれば、業界としてどう安心、安全を担保できるか?2022年のコンカフェ業界は大きな動きがありそうです。
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