『マドモアゼル・モーツァルト』感想

「マドモアゼル・モーツァルト」を観劇してきました。

コンスタンツェ役が華優希さんに決定という発表を見てから絶対に観たい!と思っていた作品でしたが、まさかチケットが取れるとは思っていなかったので、観劇当日になるまで「チケットを取った夢を見ていただけでは」など考えていました。杞憂でした。

ブリリアホールでの観劇は初でした。悪名高い東京建物ブリリアホールでの公演…取れたチケットはA席、三階席。KAATの三階席で「手すり邪魔体験」をしたことがあったのである程度覚悟はしていました。が、三階席でもA列なら、舞台前方に役者さんが来ても胸から腰部分が見えなくなる程度で、顔は見えました。でも明日海さんが舞台前方でしゃがんだときは顔も見えないし、終盤で倒れたときなんか手すりにすっぽりと明日海さんが包み込まれてしまいます(伝われ、この表現)

予習のため、Kindleで原作『マドモアゼル・モーツァルト』を全巻買って読みはじめたところ、ドはまりして気づいたら読み終わってました。なんて絵が上手いんだ…ピアノを弾く指の動きひとつ取っても表現がリアルで、コマ割りも斬新なので「次は何が来るんだ」とドキドキしながら読んでました。劇場の物販でも販売してるので、絶対に読んだほうがいい!と思います!

さて肝心の舞台ですが、すごく良かったです!!ここでどうこう言うよりもパンフレットの小林さんの言葉を読んでください。「性別を超えて惹かれる」というクィアな要素を、不必要に誰かを傷つけない演出で表現していることに感動しました。あと、衣装がめちゃくちゃ素敵。細かい部分までずっと見ていたくなります。ピアノの空色もきれい。

モーツァルト役の明日海さん。ヴォルフガングとしての男装も、エリーザとして着るドレスもめちゃくちゃ似合っていてこのひとはマジで人間なのか疑いました。エリーザ役が合いすぎている…!天使の輪、階段、ピアノというシンプルなセットが明日海さんの存在感であふれ返ってます。『噂の男』でアンサンブルを引き連れてイケイケで踊っている明日海さん素敵すぎます。小さな男の子みたいな無邪気な表情から、命を削りながらも作曲をやめられない苦しい表情まで演じ切っています。「服を脱げよコンスタンツェ」のイケボの威力。

そして思いっきりのびのびと演じている華ちゃんがなんとも魅力的で!笑いの間の取り方がすごく絶妙なので客席で何度も笑いが起きてました。胸を寄せて上げてモーツァルトを誘惑してるとこなんかもう面白すぎるし可愛すぎるし最高。こんなに早く外部の舞台で華ちゃんを見られるなんて嬉しいです。もっとたくさん華ちゃんのお芝居が見たい。

音楽座の公演を見ていないので原作との比較になってしまいますが、原作をそのままなぞるのではなくむしろレオポルトの死後からの流れは原作のストーリーと分岐しているかな?という印象でした。原作はモーツァルトとサリエリの関係にフォーカスされているのに対して、舞台はモーツァルトとコンスタンツェの物語だと感じるくらいキャラクターの描き方に違いがあります。

あと、ウェーバー夫人がこの二人を結婚させたのってお金目的だったはずなのに、この舞台だと「娘の恋心を成就させるためにお母さん頑張った」みたいになってるなあと感じます。原作では「ボクには君が必要なんだよ」とコンスタンツェに言っていたりと、モーツァルトもコンスタンツェを憎からず思っているような描写があるのですが舞台だと「音楽が理想の恋人!」と言い切っているので、コンスタンツェが猛アタックするから結婚したみたいに見える気が。

それと、ひとつ残念だなと思ったのが、サリエリの出番が…少ない!!!原作だと家までついてきちゃうし、亡き者にしようとしちゃうしで巨大感情パラダイスなんですが、今回の舞台版は大人の余裕と色気に満ちたとんでもないイケメンになった代償として出番が減ってしまいました。でもそんな中でも平方元基さんの温泉旅館(パンフレット参照)のような安心感と、見ててドキドキする色っぽさ、モーツァルトに惹かれることへの色々な意味での葛藤に苦しむ姿が素晴らしかったです。気づいたらミニクリアファイルつきフォトカード買ってました。

今回かなり驚いたんですが、MMのモーツァルト、なんとレクイエムを書かずに亡くなるんですね…!アマデウス、モーツァルト!、ロックオペラモーツァルトのようなモーツァルトを扱った作品といえば、晩年の彼に起きる印象的なエピソード「だんだんヴォルフガングがやつれて、なんか黒い服着てる人にレクイエム書くように依頼されて、死ぬ」の流れがあるものだと思ってたんです。原作でもその流れからどんでん返しが始まるわけなので、舞台もそんな感じに終わるのかなと思ったのでびっくりでした。モーツァルトの生涯を描くにあたって必ずしも上記のストーリーをなぞらなければならないわけではないというのも斬新で、様々な「こうでなければならない」という規範を超えて人々を魅了するマドモアゼル・モーツァルトの姿と重なる気がします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?