失恋のその後
過去に大失恋をした経験がある。
わたしは現在既婚者だが、結婚する前はそれなりに恋愛をしてきた(と思っている)。
恋人との別れは何度経験しても悲しく、いつも1週間くらいは落ち込んだが、すぐに立ち直ることが多かった。人生を前に進めよう、もっと1人の時間を満喫しようと。
しかしあの時の恋は並大抵の努力では忘れることが出来なかった。
彼は5つ年上のサラリーマンだった。
彼と知り合ったのは友人が誘ってくれた飲み会の席だった。彼の一目惚れから猛アタックが始まり、交際はすぐにスタートした。
これまで同じ年か年下としか付き合ったことのなかったわたしにとって、5歳年上の彼は大人で、スマートで、安心出来て、おまけに頭も良くて完璧な存在だった。
きっとこの人と結婚するんだろう、とわたしはぼんやりと思っていた。
しかし交際が始まって半年くらい経った頃、ある日を境にピタッと連絡が返ってこなくなった。
彼はもともと連絡不精で、無駄なメールのやり取りなどもしたがらない性格だった。
しかし1週間経っても返事がなかったことは初めてで、「仕事が忙しいのかな?」とわたしは真剣に彼の体調を心配していた。
ざわざわとした心を落ち着かせながら待っていると2週間後にようやく返事がきた。
「おつかれ!ごめん仕事でばたばたしてた。久しぶりに会いたいね」
こんなメールだった。2週間も放置して心配させておいて勝手だなぁと少し腹が立った。
しかし大人な彼に子どもっぽいと思われたくないという思いから、気にしていない素振りをした。
「元気だった?次はいつ会えるかな?」と、当たり障りのない返事をした。
しかしそこからまた2週間返事がこなかった。
そんなやりとりがなんと6か月も続いたのだ。会えなかった期間も丸6か月。頭の中ではぼんやりと「この恋は終わったんだろう」とわかっていても、本人からその言葉を聞いたわけではなかったため、心がついていかなかった。
今振り返ると半年間も会う約束をしてくれないなんて、すでに関係は破綻していた。しかし、焦りや不安、恋愛特有のマジックもありわたしは正常な判断が出来なくなっていた。
借りていた本も返したいと思い、勇気を出して久しぶりに電話をかけた。
彼は何もなかったかのように電話に出て、1週間後に会う約束をした。彼に会える!とわたしは大喜び。期待はどんどん膨らんでいった。
約束の1週間はすぐに過ぎてついに彼に会う日がきた。
しかし今までのようにエスコートしてくれることもなく、明らかに冷たい態度だった。その態度を見て自分の心臓が波打っているのがよくわかった。
もう追いかけるのは辞めようと思い、食事も早々に切り上げた。それでも最後にケジメを付けたくて「わたしたちは今どういう関係なの?」と尋ねた。
すると彼は「もう付き合ってはないんじゃない?」と。
やっぱり終わっていたんだ、しかも勝手に、わたしに何の話もなく…
悲しみや怒り、憎しみなど様々な感情に満たされていた。
それを出さないように必死で押し殺し、最後は笑顔で手を振った。(若かりし頃のわたしは偉かった)きっと今のわたしだったらもっと早い段階でブチギレるだろう。
彼との最後のシーンはしばらくの間わたしの心を支配し続けた。悪夢を見たり、彼と行った場所を通ると、嫌でも思い出す。急に涙が出てくることもあった。
彼は、フェードアウトという形でわたしとの関係を終わらせようとしていたのだ。適当にすまされたというその事実が一番辛かった。
あの幸せな6か月間はなんだったんだろう。
結局わたしはその恋愛を引きずり続け3年もの間好きな人も出来ず新しい恋愛をすることもなかった。
正常な判断が出来なくなっていたわたしは、「もしかしたらまた会いたいと言ってくれるのではないか」と復縁を願い続けてしまっていたのだ。
失恋後に友人が紹介してくれた男性も素敵な方ばかりだったが、「彼ならきっとこう言ってくれるんだろうな」「彼ならもっとスマートに対応してくれるんだろうな」とどうしてもあの人と比較してしまった。
「復縁 期間」「復縁したい 振られた側」とか、いろんなワードをネットに打ち込んで検索していた。
どうやら復縁するには、こちらから連絡をするのはあまり良くないらしい、それならもう少し待ってみようと。
しかし待てど暮らせど彼から連絡が来ることはなかった。
もう少し、あと少し、と思い続け3年が経過してしまったのだ。(どれだけ時間を無駄にしているんだとか思うけど若気の至りだったのです)
その後入ってきた噂によると彼は職場のわたしと同じ年の女性と交際をスタートさせていたらしい。それは連絡が突然来なくなった時期と全く同じ時期。
今となってはそんな卑怯な男こちらから願い下げだと思うが、当時は本当に深く傷ついていた。
この苦しさをどう埋めたら良いかわからず、恋愛に関する指南書を読んだり、またネットで検索をかけたり。
そこに楽になるこたえが書いてあったわけではないが、ある指南書に「悪い恋愛は未練を残し引きずりやすい、前を向けないのは執着しているだけ」と書いてあり、衝撃を受けた。
3年間も引きずってしまったのは、それほどまでに彼を愛していたわけではなく、納得がいかないから執着していただけだったのだと気付くことが出来た。
きっと今も世の中には失恋のショックから、復縁を願っている人がたくさんいると思う。
復縁を願うことは悪いこととは思わない。でもせっかくなら前を向きながら心の片隅に置いておくことが一番だと、失恋を経験したわたしは思う。
どうか復縁したい気持ちばかりにとらわれて貴重な時間を無駄にしないでほしい。
「あの時こうしていれば別れなくて済んだかもしれない」「もっと自分が変わればヨリを戻せるかもしれない」
失恋後はいろいろ考えてしまうが、きっとどのタイミングであっても別れは訪れていた。
別れた後の地獄に突き落とされたような気持ちも、泣いてばかりいて落ち込む毎日も、それが永遠に続くことはない。3年引きずったわたしでも、今は思い出すこともないし、「なぜあんなに引きずっていたのか」と不思議でならない。
そして失恋の後は、明らかに付き合う男性が変化した。
外見よりも言葉の優しさ、学歴ではなく知性、思いやり…
そういった部分を自然と見るようになっていた。
結果的に知性があり思いやりに溢れた男性とわたしは結婚した。今は毎日安心した気持ちで過ごせている。
あの失恋は、自分自身を変えるきっかけにもなった。
苦しい時期は本当に辛かったが、それは必ず終わりがくる。自分自身に磨きがかかり、彼よりもっと素敵な男性に出逢える。
これは自分を変えるチャンスなんだと思い続けてほしい。
しばらく落ち込んだら、また前を向きながら進んでいこう。完全に忘れなくていいから、心の片隅にしまっておいてね。
わたしは友人たちの恋愛トークを聞きながら、そんな風にいつも思っている。
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