違法の冷蔵庫

片田舎での商談が終わり、駅に向かうタクシーで、僕は空腹の音を響かせていた。

下車の折、食事処のありかを運転手に尋ねた。
「そのシャッター通りに、食堂があるよ。」

運転手に礼を言い散策を始めると、通りに不似合いな真新しい店構えが現れた。
店に入ると、学生風の男が野菜を刻みながら「お好きな席にどうぞ」と言った。他に客はいない。

カウンターに座り、ピラフと野菜炒めを注文した。

旧型のテレビが映す番宣を眺めていたら、男は「そのテレビ、実は拾い物です。この辺は都会の不法投棄がよくありますが、稀にお宝があるんです。」と、僕の前に料理を並べた。

箸を口に運ぶ。男は雪平鍋を洗いながら続けた。

「高校の頃、向いの店主が超高級酒が沢山入った冷蔵庫を拾ったそうです。両親はこの店を貸し切って、店主総出で酒盛しました。」

箸を止めた。

「ただその酒は毒入りで、皆死にました。だからこの商店街はシャッター通りなんです。両親の保険金でこの店は建て直しました。」

以上で410文字です。
NHK放送文化研究所のWebサイトに、違法は「法律に違反している」こと、不法は「法律に違反しているほかに、反社会的な行為を含む」旨の記載があり、違法は不法に含まれると解釈して書きました。