女子寮のような入院生活

入院生活は最終日にはもう少し居たくなるような居心地だった。

入院病棟の同じフロアの患者さんの多くは乳がん患者だった。
ここでの自己紹介は、術式、発見の経緯、担当医など病気に関すること。
名前や職業、年齢はそれほど重要では無いので話す人はあまりいない。

ここで出会った先輩患者の方々にはとてもよくしていただいた。
シニアな方が多く、その何とも言えないお心遣いに
感動と同時に、私もこんな素敵な人になりたいと思った。

ある再発の先輩は、抗がん剤治療を心配する私に
ご自分の抗がん剤治療で髪の毛が抜けた様を明るく「ドライヤーをかけたら花吹雪のように散った」と身振りを交えて話してくださった。
聞いていた私も他の患者仲間も、思わず大笑いしてしまうお話ぶりだった。
脱毛のことで大笑いできる環境が心地よかった。

相部屋はわずか1枚のカーテンで仕切られているだけなので隣や向かいの人が夜眠れずにいること、痛がっていることなどがわかる。
翌朝、先輩方は実に自然にお話をされる
「大丈夫?」とは聞かない。普通にご挨拶をして、会話の中で天気を話すように聞き、話す。深刻にならず、まぁこういう日もあるわね、という感じである。
心配はするけど相手に踏み込まない優しさは、人生経験なのかお人柄なのか。

患者仲間と連れ立って食事をしたり、バルコニーから一緒に外を見て
こんな所で夜景を見るとは思わなかったわね、と笑い合い合った。
女子寮のような入院生活だった。

患者は病気自体よりも周りの反応で落ち込むことが結構ある。とても深刻に捉えられたり、かわいそうと思われることで落ち込むのだ。
だから病気について話すのをためらい、抱え込んでしまい、さらに落ち込む。

患者仲間同志は病気のことを遠慮せずに話せる。
見ていると入院生活とともに明るくなる患者さんは多い。
病気について語り合う事で納得して、受け止めて、立ち向かおうという気になれるのだと思う。

女子寮のような入院生活から元気と素敵な出会いをもらいました。

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