北川聖司(森林総合監理士)

長野県上田市在住。 林業事業体で民間のフォレスター(森林総合監理士)として活動していま…

北川聖司(森林総合監理士)

長野県上田市在住。 林業事業体で民間のフォレスター(森林総合監理士)として活動しています。 自然豊かな日本において、森林の持つ価値と向き合い、それを高めていきたい。 森林に係る皆さんの力になれるよう、経験を積む毎日です。 趣味は写真撮影です。

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フォレスターとして成し遂げたいこと。

初投稿です。 林業に従事する者として、林業界が盛り上げるほんの小さな一撃を与えられるよう、コツコツ発信を続けていきます。 初投稿はタイトルの通り、フォレスター(森林総合監理士)として成し遂げたいことを綴っていきます。 結論先ずは結論。 【林業とそれに係る皆さんの社会的地位の向上】に貢献すること。 大きく出てみました。 理由は単純。 林業とその従事者は必要不可欠でかっこいい!にも拘わらず社会的地位は決して高くない(というか認知度が低い)現状があるから。 もちろんすべての仕事

    • 低密度植栽で生産される材は並材か?

      私はかねてから低密度植栽について否定的だ。 国は「省力・低コスト造林の技術指針(案)」を作成し、造林の省力化を図り、造林を進めたい様子。 造林が進まない理由は様々あるが、造林にコストがかかりすぎること、人材確保が困難なことが主な要因。 だから、コストと工数を下げたいと考えるのは自然だ。 この手の趣旨の研修会が最近は頻繁に開かれている。 造林の省力化・低コスト化のためにすることは、すごく簡単にまとめると 主伐から再造林までは一貫作業で。 地拵えは機械で。 植栽本数は減ら

      • 夏場、木材トラック荷不足問題

        日ごろお世話になっている木材トラックの運転手さんとの会話でのこと。 「夏場になると途端に暇になってしまう」 「たくさん出す事業体も造林期になってしまう」 「そんな事態に急になるから毎年困っている」 とのこと。 林業側からすると夏場は毎年申し訳なく思う。 ただ、そうなってしまうのは当然のことだ。 なぜなら、立木が水を吸っている夏場は木材の収穫に適さないから。 加えて、植えた木を育てるために下刈も欠かせないから。 合自然視点で見れば当たり前のこと。 一方で産業的にみるとどうか

        • 林業界の働き方改革について

          今回は林業界の働き方改革について考えたい。 昨今は働き方改革の政策により、働きやすさを重視していく流れがある。 私見になるが林業界はそれが遅れていると思う。 特に人手不足の業界である林業。 そんな中で働き方改革を遂行している事業体には、よい人材が集まり、よい組織ができ、よいサービスが提供でき、よい経営ができ、社員が定着し、事業が永く続いていくというサイクルが生まれるんではないかと、浅はかながら思う。 働き方改革の本質一言でいえば生産性を上げようってことだと思う。 生産性が上

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        フォレスターとして成し遂げたいこと。

          丸太の造材は質か?量か?

          林業の技術者として未熟なため、読者の方からご意見をいただければと思っていることがあります。 それは、造材において優先すべきことは質か量か。 奥深い作業なので、単純化すべきことではないが大きな方向性として考えたい。 自分の意見答えが出てないなりに自分の答えを先ず。 理想は質を高めるために1本1本の丸太に向き合いたい。 が、現実はある程度質より量を出すことに向き合わざるを得ない。 =(悲しいが)質より量なのかなと。 大前提として丸太の価格が低水準な点がある。 例えばカラマツの場

          丸太の造材は質か?量か?

          除伐を忘れるなっ!

          私が活動している長野県の東信地域では、主にカラマツの主伐・再造林が進んでいる。 長野県が再造林や下刈などの補助を手厚くしてくれているため、森林のサイクルが回り始めていることはいい傾向だと思う。 そんな背景の中、呼びかけたいことがある。 「除伐を忘れるなっ!」 詳細を綴っていく。 とりあえず「除伐を忘れるなっ!」 そもそも除伐とは植栽木の生育に支障をきたす植栽木以外の樹種と植栽木のうち将来的に見込みのない木を除去することで初期段階の林分を整理することを目的とする作業。 除伐

          スマート林業の罠

          スマート林業の技術は手段であって目的化するものではない。 そしてそれを活用する技術者と作業を実行する技能者は基本をしっかり押さえておく必要がある。 スマート林業技術はそれらをサポートするものであり、新規就労者の敷居を低くするものと私は考えている。 最近、スマート林業について考えさせられる場面があった。 ある会議でのこと。 原木の調達をしたい団体から意見を求められる場面があった。 おっしゃりたいことはわかる。 できな理由ばかり並べていても進歩はない。 ただスマート林業の現在

          木を伐れないフォレスター

          今回は私が抱くコンプレックスの話。 それは、現場技能者が持つべき能力が皆無なこと。 木を伐ったり重機を動かしたり... なんせ腕っぷしが弱い。 森林を総合的に監理し、地域のグランドデザインをするうえでも、木を伐れる(林業の現場経験豊富)方が言葉にも計画にも説得力を帯びます。 そういう意味ではフォレスターを極めることは私にはできないかもしれません。 それならどうするか。 現場以外の能力をできる限り伸ばして、苦手なことは得意な人の手を借りて、仲間とともに林業を極める道を選ぶことに

          木を伐れないフォレスター

          海なんか

          私は海なし長野県民。 最高の山の景色が広がる長野県、海なんかなくてもいいんだ。 そんな私は毎年、お盆のころは妻の実家がある愛媛県に帰省している。 車で半日かかる長旅だ。 朝方に長野県を出発し、愛媛県に到着するのは夕方ごろ。 実家に到着すると海が出迎えてくれる。 うん、海最高。 海を懐かしく感じる心は人間のDNAに刻まれたものなのだろうかと哲学に耽る海なし長野県民。 海なんか… 山だって… なんで海なし県に生まれちまったんだーーーっ‼

          きをうえる #未来のためにできること

           私には3歳になる息子がいる。 ある日、私の母が息子に買い与えてくれたおもちゃで遊んでいると ふと自分の仕事の尊さを再認識する場面があった。 そのおもちゃは、ひらがな一文字とそれから連想されるイラストが載った単語カードのようなもの。 ”あ”なら「あひる」といった具合だ。 あから順にめくって、最後の「わをん」に差し掛かる。 ”を”から始まるものなんてあったかな? 自分でも想像しながらめくったところ「きをうえる」。 そうきたか!と心の中でツッコミを入れつつ、数ある〇〇を〇〇の中

          きをうえる #未来のためにできること

          問題提起 - 低密度植栽に思うこと -

          低密度植栽、皆さんどう思いますか。 昨今、林業の低コスト化に向けて盛んに口にされている「低密度植栽」。 一言いいたい。 あたしゃ反対だよ。 正確には目先の経費や手間を減らすためだけの低密度植栽には賛同しかねます。 植栽密度は目標林型からの逆算で考えなければならない。 今回は、低密度植栽への懸念点について記していきます。 低密度植栽の趣旨並材を生産目標の中心とする育成単層林を造成することを目標にしている。 低密度植栽のメリットは、苗木代と植栽経費が安く済む点がある。 保育間伐

          問題提起 - 低密度植栽に思うこと -

          100年後のための森林ゾーニング

          我々が今相手にしている森林は60年ほど前に計画され植えられたものです。 昔は人と森林と人の生活がより密接だったため、森林所有者が各々植えたい木を植えていたかもしれません。 時が流れ主伐期を迎える森林が多くなっている一方、森林経営の意欲や人が山に入る機会が減っている現在において、次の森林をデザインしていく必要であり、それを形にしていくことが我々世代の役割です。 50年・100年後を意識した森林を計画していくうえで「ゾーニング」はとても大切なことだと考えます。 そんなゾーニングに

          100年後のための森林ゾーニング

          ジョジョから学ぶ人の動かし方 - 納得は全てに優先するぜッ‼ -

          今回は仕事の話。 このフレーズをご存じですか。 みんな大好き「ジョジョの奇妙な冒険」の第7部のジャイロ・チェペリのセリフです。 私このセリフ大好きなんです。 なぜなら、このセリフに100%納得したから。 私は、人に動いてもらわないと成立しない仕事をしています。 森林の整備のためにあらゆる人々を納得させないといけないのです。 森林所有者・地元住民・現場作業員・行政・木材出荷先などなど。 キャリアの中で悩むことがありました。 円滑に仕事を回すために何が必要なんだろう。 な

          ジョジョから学ぶ人の動かし方 - 納得は全てに優先するぜッ‼ -

          林業の本質

          林業に携わる者として、自分の仕事の本質が何か考えてみます。 林業の本質を記すにあたって先ずは、林業の定義をハッキリさせます。 林業の定義森林には多面的機能がありますが、それらの発揮に寄与する作業や技術は「森づくり」と私は定義します。 先述のとおり木材の生産に重きを置いた技術を極めていくことが林業に携わる者としての関心ごとです。 特に林業事業体に在籍しているので。 世代で繋ぐ資源のリレー私はこれが本質だと思います。 私たちが今見ている(相手にしている)森林は、先人たちが植え

          絶対読んでほしい - 林業事務方の魅力 -

          林業と聞いて多くの人がイメージするのは、いわゆる”木こり”だと思います。 業界では「フォレストワーカー」「現場」「技能者」「作業員」などと呼びます。 一方、私は彼らとは少し違った立場で林業に携わっています。 私は森林施業プランナー兼フォレスターであるので、一般的な業界で例えれば”営業兼マネージャー”的な役割を担っています。 これらの仕事を担う人々を業界では、「プランナー」「事務方」「技術者」などと呼んでいて、”裏方”と紹介することが度々あります。 このように林業の仕事は大

          絶対読んでほしい - 林業事務方の魅力 -

          目的を明確にする - 下刈編 -

          どんな仕事も着手前に目的を明確にすることで、仕上がりと仕事に取り組む姿勢に大きな違いが出てくると思います。 林業における各作業について、その目的を改めて明確にしていこうと思います。 目的に加えて、労務低減策や目から鱗情報も提供していきます。 目的植栽木が小さく競争力が乏しい段階で、成長や生存を脅かす雑草木を刈り払うことで、植栽木の健全な成長を支えていくことが目的です。 日本は高温多雨なため、下刈をしないと雑草木に埋もれてしまい、日当たりが乏しくなったり、風通しが悪くなること

          目的を明確にする - 下刈編 -