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sunday play 日本の名作#3「やぶのなか モノローグバージョン」(2015.1)

メイシアタープロデュース公演 SHOW劇場 vol.9 sunday play 日本の名作#3 やぶのなか モノローグバージョン
吹田市メイシアター小ホール
原作:芥川龍之介、脚色・演出:ウォーリー木下(sunday)、美術・映像:津田道子、音楽:宮内優里
モノローグバージョン 出演:山下残、中西ちさと(ウミ下着)、赤星マサノリ(sunday)

 山下と中西はダンサー。といっても、演劇の経験がある。赤星は俳優。でも、テーマパークのダンサーの経験がある。もう一つの、田渕法明、蟷螂襲、永津真奈の演劇人だけで演じられるダイアローグバージョンを見られなかったのが残念だった。メイシアターの企画として、非常にシャープだった。
 タイトルのとおり、芥川龍之介の短編「藪の中」(1922年)を舞台化したもので、男の刺殺体を前に三人の主張が食い違い、「真相は『藪の中』」、明らかにされないまま終わるという物語。
 舞台美術は、天井から吊るされた木枠で、鏡が張られたものもあれば、スクリーンになっているものもあり、何も張られていないものもある。演者が時折ビデオカメラを手に持って誰かの顔をクローズアップするなどし、その映像が枠に写ったりする。
 観客は、普通の入り口からではなく、ぐるーっと回って、通されるとそこは舞台の上で、その吊るされた木枠を見ながらよけながら、段を降りて指定された席に着く。その時点ですでになんだか面白く、同時にチラシのイメージの断片化、錯綜した鱗文様が思い出された。ここで蛇のような存在だったのは、やはり女だ。ウォーリーはこの女の造形に「カルメン」を援用し、その魔性の肉付けとしている。
 このバージョンには、3人が互いに目を合わさないというルールが決められていたと、劇の中で語られていた。このことでウォーリーがプログラムの中で「多元宇宙」と解説していた、その世界観が表現できていたわけだが、欲を言えばもう一段の念押しがほしかった。ここに今いる3人は、本当は全く別々の世界に存在していて(一人は死んでいる)、時空を共有していないのが、たまたま何らかの大きな力が加わって、この空間一点に凝集しているという設定。そして3人個々は、観客に向かっては開かれている状態。それをモノローグと呼んでいる。
 中西の淡々とした乾いたコケットリー、山下の人を食ったようなつかみどころのない訥々さが、その世界の個別、孤立を引き出した。赤星の鋭角の激しい演技もよかった。アイコンタクトなしにこの複雑な舞台美術の中、3人がめまぐるしく位置や役柄を変え、眩暈感を出すためには、ダンサーの身体が必要だったのかもしれない。その点についてやや物足りなさはあったが、かといって殊更に踊って見せられても違和感だけが残っただろう。ダンサーであること、役者であることを考えさせられもした。

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