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「あくびと風の威力」リーディング公演(2015.1)

神戸アートビレッジセンター 1階
作:角ひろみ、演出:サリngROCK(突劇金魚)
出演:片桐慎和子(突劇金魚)、嘉納みなこ(かのうとおっさん)、紙本明子(劇団衛星/ユニット美人)、ののあざみ、本多真理、サカイヒロト、西田政彦(遊気舎)

 阪神・淡路大震災当時小学校6年生だった女子たちが、10年後に同窓会を開く、という作品。初演から関西での公演はすべて観ている。以前のレビューは、こちら。
http://homepage3.nifty.com/kansai-dnp/store.htm
このレビューページを見ていると、ぼくがどれだけこの劇団を愛していたかがわかろうというものだ。
 芝居屋坂道ストアという劇団が1998年に上演した作品。この劇団は’95年1月16日に旗揚げ公演の千秋楽を迎えた、というまさに劇的な劇団。この作品は角ひろみの初執筆作で、第4回劇作家協会新人戯曲賞佳作・北海道知事賞を受賞、他劇団によってもたびたび上演されているが、神戸での上演は’01年以来のこととなる。
 劇団は'05年に解散し、角は「結婚して、子供産んで、育てて、台本書いて」という日々を岡山の地で送っていたようだ。他のメンバーも、何人かはFacebookやmixiで見つけたが、演劇を続けたり、音楽をやったり、コスプレしたり、働いたり、結婚したり、子供産んだりしていたらしい。
 今回は、角がふと「あぁ、来年20年やわ」とふと思って、演出とキャスティングを突撃金魚のサリngRockに任せ、劇の設定を元の10年後から今にあわせて20年後に少し書き直して、リーディング公演にして、実現した。アフタートークで、初演時のメンバーを集めてやろうか、という案も出たと紹介されていたが、それは無理な話だろう。でも、そういう案も出たということに、ちょっとほっこりした。初演の劇団員のキャストは以下。
 なお:岡知美    涼ちゃん:大木なつ美
 カワベ:大西美穂  亜矢さん:森井陽子
 時津:角ひろみ
今回は、以下のとおり。
 なお:片桐慎和子  涼ちゃん:嘉納みなこ
 カワベ:ののあざみ 亜矢さん:紙本明子
 時津:本多真理(2001年東京公演でキリコ役)
 12歳、22歳、32歳。女性の10年の節目が鮮やかに描かれていると同時に、5人のうち3人にあとの20年がなかったことを改めて突きつけられ、何も変わっていないことに気づかされる。変わっているのは現在だけで、過去は何も変わっていない。当たり前のことだ。でも、現在が変わっている以上、過去の切り取り方が変わっていたり、忘れてしまったりしたことはある。
 リーディング公演となったことで、何かが生じたり失われたりしただろうか。ぼくにはよくわからない。リーディング公演といっても、椅子に座ったきりではなく、かなり動き回っての上演だったし、写真(リハーサル風景)で見える大きな窓の向こうの街路も使っての演出もあった。ほとんどは本を持っていたから、役者よりも言葉のほうに注意が向けられるようになったかもしれない。その分、からだ絡みの勢いで畳み掛けるようなスピード感や迫力は幾分か減じられたかもしれない。
 14年ぶりに見た芝居で、同じところで目頭を熱くしていた。舞台芸術については、よく瞬時に消えてしまうといわれる。しかしこの作品は、舞台の外の世界を巻き込み飲み込んで自らの力にしてしまう再生力、長い寿命がある。舞台作品の享受体験に、歳月を経たのちのこういう立ち現れもあるのだなと、深く得心した。
写真は角ひろみさんのFacebookから

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