第59回理学療法士国家試験 午前21-25の解説
息子は第57回の国家試験に不合格で、第58回の国家試験に合格しました。昨年は第58回の試験問題が手元にありましたので、息子の合格の後、恩返しのつもりで国家試験の解説を投稿しました。
第59回は息子は受験していないので問題が手元にはありません。毎年厚労省から問題が公表されるのは5〜6月ごろでかなり遅いです。そこから出版社も対策本を作るので、対策本が手に入るのは夏前になってしまいます。またクエスチョンバンクなどの対策本は国試問題のすべてを網羅している訳ではありません(ごく一部です)。
昨年、国試対策の問題集を作って投稿したところ、多くの方に利用していただきました。今回、投稿を利用していただいた受験生(合格ラインを超えたらしい)の一人にお願いして、国家試験問題を入手する事ができましたので、昨年同様、早めに国家試験問題と解説を投稿したいと思います。
理学療法士ではありませんが、医師の立場から解説をします。これは違うよという所があればコメントいただくと幸いです。
(21) 対応があり正規分布を示さない連続変数の2群間の差を検討するのはどれか。(59回午前21)
1.Paired-t検定
2.一元配置分散分析
3.Kruskal-Wallis検定
4.Mann-WhitneyのU検定
5.Wilcoxon符号付順位和検定
【答え】5
【解説】
正規分布を示す連続変数はパラメトリック・データ、正規分布を示さない連続変数や名義変数はノンパラメトリック・データと言います。
検定方法は統計学の主要分野の一つです。以下の投稿でまとめていますので、参照してください。
1.Paired-t検定:×
Paired-t検定はパラメトリックデータで対応のある (paired)2群の差の検定に用いられます。
2.一元配置分散分析:×
一元配置分散分析はパラメトリックデータで、3群の差の検定に用いられます。
3.Kruskal-Wallis検定:×
Kruskal-Wallis検定はノンパラメトリックデータで、対応のない3群の差の検定に用いられます。
4.Mann-WhitneyのU検定:×
Mann-WhitneyのU検定はノンパラメトリックデータで、対応のない2群の差の検定に用いられます。
5.Wilcoxon符号付順位和検定:○
Mann-WhitneyのU検定はノンパラメトリックデータで、対応のある2群の差の検定に用いられます。
(22) 二次予防の組み合わせで正しいのはどれか。(59回午前22)
1.健常成人―――――――――――――――禁煙指導
2.脂質異常者患者――――――――――――栄養指導
3.回復期の脳血管疾患患者――――――――服薬指導
4.急性期の脳血管疾患患者――――――――血圧管理
5.生活期の脳血管疾患患者――――――――運動指導
【答え】2
【解説】
・一次予防とは生活習慣の改善、健康教育、予防接種などの病気にかからないように事前に施す処置や指導のこと
・二次予防は病気の早期発見・早期治療
・三次予防は再発予防やリハビリテーション
二次予防を早期発見・早期治療とだけ覚えれば、一次予防・三次予防もわかると思います。
1.健常成人――――――――禁煙指導:×一次予防
2.脂質異常者患者―――――栄養指導:○早期治療になります
3.回復期の脳血管疾患患者―服薬指導:×三次予防(再発予防)
4.急性期の脳血管疾患患者―血圧管理:×三次予防(再発予防)
5.生活期の脳血管疾患患者―運動指導:×三次予防(リハビリ)
(23) 筋収縮で正しいのはどれか。(59回午前23)
1.神経筋接合部での伝達物質はノルアドレナリンである
2.カルシウムイオンが筋小胞体に取り込まれる
3.神経筋支配比はそれぞれの筋で異なる
4.エネルギー源はADPである
5.A帯が短縮する
【答え】3
【解説】
1.神経筋接合部での伝達物質はノルアドレナリンである:×
→アセチルコリン
2.カルシウムイオンが筋小胞体に取り込まれる:×
→カルシウムイオンが筋小胞体から放出される
3.神経筋支配比はそれぞれの筋で異なる:○
4.エネルギー源はADPである:×
→エネルギー源はATP
5.A帯が短縮する:×
A帯は短縮しません。I帯とH帯が短縮します。
(24) 課題と記憶の組み合わせで正しいのはどれか。(59回午前24)
1.自転車に乗る―――――――――――エピソード記憶
2.海外旅行の思い出を語る――――――展望記憶
3.紙や鉛筆を使わず暗算する―――――ワーキングメモリー
4.教師になったきっかけを説明する――意味記憶
5.建物の建築方法について説明する――手続き記憶
【答え】3
【解説】
1.自転車に乗る―――――――――――エピソード記憶:×
→手続き記憶
2.海外旅行の思い出を語る――――――展望記憶:×
→エピソード記憶
3.紙や鉛筆を使わず暗算する―――――ワーキングメモリー:○
4.教師になったきっかけを説明する――意味記憶:×
→エピソード記憶
5.建物の建築方法について説明する――手続き記憶:×
→意味記憶
(25) インフォームドコンセントの説明で正しいのはどれか。(59回午前25)
1.終末期の患者が対象外である
2.医療法により罰則が課せられる
3.専門用語を用いて詳細に伝える
4.患者が自己決定する機会を保障する
5.患者は一度同意したら撤回できない
【答え】4
【解説】
1.終末期の患者が対象外である:×
→すべての患者が対象です
2.医療法により罰則が課せられる:×
→インフォームドコンセントは1997年医療法改正によって「説明と同意を行う義務がある」と規定されました。ただし、説明を行わなかったからといって罰則はありません
3.専門用語を用いて詳細に伝える:×
→専門用語を控え、だれでもわかるような言葉で説明します
4.患者が自己決定する機会を保障する:○
5.患者は一度同意したら撤回できない:×
→一度決定しても、決定はいつでも撤回できます
Dr. Sixty_valleyの第60回理学療法士国家試験対策のポータルサイトページは以下です。
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