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Dream hunter.

 悲しいことにFacebookやInstagramにアップできるような写真がない。「南国!お金を稼いでます!圧倒的成長!仲間に感謝!」なんてと麦○ら○一○みたいに言えたらどれだけよかっただろう。
 地表を這うように餌を探している自分にグラン○ラインはあまりにもまぶしすぎる。
 僕にできることといえば逆ザヤを掴みにいってお金が結構減って心が無になったり、全身ナイフでグサグサになったりしながら樹液を集めるぐらいだ(でも樹液もいっぱい集めると薄いゼリーの味がします)
 もっと稼ぎたいなあと不動産にも手を出したけれど、綺麗な物件を買うだけの余力がなかったので、ボロボロの不動産を買って寝泊まりしながら修復して売るということをやった。
 夜に会社の仕事をして、昼に寝て目が覚めたら、なんとなくお家を直す……という昼夜逆転したサイクルで動いていたことがまずかったんだろうけど、お昼に食料調達に行ったら「あの家幽霊が出るらしいんよ。注意しいや」と忠告された。親切心あったけえなあと思い「そうなんですかー」といつものように同意したけれど「その幽霊の正体は僕なんですよ」とは言えなかった。怪異はこうして気まずくなって消えていくのかもしれない。
 弱い自分を許してほしい。お家は売れたし利益も出たけれど、買い主さんが近所の人から「お宅幽霊屋敷ですよ……」と言われているかもしれないと思うとちょっと憂鬱な気持ちになったりする。もし幽霊屋敷と言われていたらごめんなさい。幽霊なんて非科学的なものは存在していないんです。だから大丈夫ですと言ってあげたい。もう言えないけど。
 短くも長くもない人生のなかで投資をやっていると数年に何度か大波に遭うことがある。大波に乗れたこともあったし、大波に乗れずに瀕死になったこともあった。
 大波に乗るために重要なのは、底で仕入れることでも、天井で売り抜けることでもなく、目標を達成したら外野の雑音を無視して売ることなんじゃないだろうかと思う。
 上がる上がると希望を抱いていたら凄まじい暴落があって仕事が出来ない精神状態になったり、安定銘柄を買ったら随分と前から粉飾をしている事実が発覚して、上場廃止になるかもしれないと思いながら何年ものあいだ年越しをしたことがある。あれは本当につらかったし心が磨り減った。もう二度と味わいたくない。
 それで学んだのは、この世のどこにも簡単に大儲けするような甘い話はなくて、熟せば甘くなりそうな樹液を集めてシロップにするしかないということ。向こうから来る話はぜんぶクソ。はー、メープルシロップがほしい。

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