「祖国防衛者の日」のお祝い
ロシアの新聞のサイトからちょっとした記事を紹介するシリーズです。
再び『文学新聞』から。
今回は、肩の凝らない軽いもの、という基準で選んでみた。
記事というよりは、むしろ広告のようなもので、決して「軽い」とは言えないのだが、ロシアの今日の世相を反映していて、興味深く感じた。
いや「興味深い」という表現も適切ではないかもしれないが、とりあえず、読んでみていただけるとありがたい。
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兵士たちに2月23日のお祝いを送ろう
親愛なる友人の皆さん、人道的な作家たちによる「ドンバスのためのブハンカ」プロジェクトは、前線に向けて次回のマイクロバスを派遣することを決定しました。これまでと同様に、寝袋、冬服、防寒ブーツや長靴、冬用下着、携帯無線機、ヘルメット、発電機、薬、その他諸々の緊要不可欠な物資を運びましょう。もちろん、これまで毎回そうしてきたように、自動車も兵士たちへの贈り物としましょう。
昨年の9月から、当プロジェクトは、すでに5台の自動車を贈りました! それらはいずれも装備が満載されました。3台は、ドネツク人民共和国民兵組織の第3精鋭部隊ゴルロフスク旅団の陣営に届けられました。2台は、ヘルソン方面で活動するロシア連邦軍特殊任務部隊「旋風」に配備されています。前線では、まだまだ必要です。
もうすぐ2月23日、「祖国防衛者の日」です。塹壕の中にいる人々、検問所に立つ人々に祝日のお祝いを届けましょう! 装備をたっぷり詰め込んだ次の「ブハンカ」は、まさに彼らを助けるものです。
前回まで協力してくれた皆さん全員に大いに感謝します。あなたがたの寄付金、SNSでのシェアや「いいね!」、あるいは率直な支援のメッセージ、それらすべてがとても貴重なものです。前回までのミッションの報告については、プロジェクトのサイトの「ミッション」のページをご覧ください。
そして、わたしたちは、あらためて「あなたの」援助お待ちしています。すべての支援して下さった方、支援してくださる方に心よりお礼申し上げます。わたしたちが共にあること、それこそが力です。勝利は必ずやってきます!
ロシア貯蓄銀行の送金用カード番号:2202 2036 6741 3852(イーゴリ・ヴィクトロヴィチ・П)
『文学新聞』2023.2.6(全文訳)
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例によって自己流の試訳である。
いくつか補足する。
まず、2月23日の「祖国防衛者の日」とは、ロシア革命直後の1918年に赤軍がドイツに勝利したことを記念して定められた、旧ソ連時代からのロシアの祝祭日である。
考えてみれば、昨年2月24日に開始されたロシアによるウクライナ侵攻は、今年の「祖国防衛者の日」でちょうど丸一年となるわけだ。
「ドンバスのためのブハンカ」プロジェクトの「ブハンカ」とは、辞書によれば、型に入れて焼いた箱型の黒パンを意味する。なぜ、そのような言葉がプロジェクト名になったのかは不明だ。ひょっとしたら、マイクロバスの四角い形から黒パンの塊を連想したことが由来かもしれない。
同プロジェクトが前線に贈ったとされる5台のマシーナは、「機械」の意味もあるが、ここでは当然なんらかの車を指すのだと思う。だが、どんな車なのか、一般的な乗用車なのか、特別な用途の貨物自動車なのか、まったくわからない。民間による支援なので、軍事用の車両ではないだろう。あるいは、物資を積んだマイクロバスをそのまま贈与するということなのだろうか?
一読して、この記事から私が強く感じたのは、(上ではのんきな調子で試訳してしまったが)ロシアの国内状況は、まぎれもなく戦時下にあるのだな、という感慨だった。この状況が時限的・局所的な「特別軍事作戦」などというものでないことを、おそらく大方のロシア人は分かっているのだろう。
それにしても、兵士たちにとって緊要不可欠な物資すら、民間からの有志の支援に頼らなければならないとすれば、(ロシアにとって)かなり深刻な事態ではないだろうか? ロシアの財政状況は、それほどまでに逼迫しているのだろうか?
ちょうど2月8日付『日本経済新聞』朝刊に、ロシアの財政が一段と悪化しているという記事があった。原油相場の下落と欧米による経済制裁で石油収入が減少し、拡大する戦費の捻出が困難になってきているとのことだ。
そういった状況が、停戦に向けた圧力という方向ではたらいてくれることを切に望みたい。
※タイトル画像は、OpenClipart-VectorsによるPixabayからの画像を使用
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