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SIWAの和紙トークvol:02-台湾で出会った「太陽の光で印刷するノート」

みなさん。こんにちは。山梨県和紙メーカー大直の一瀬です。日常使える和紙製品ブランドSIWAを運営しています。この「SIWAの和紙トーク」では私が和紙屋の家に生まれ、40年ちょっとの人生の中であっと驚き、心が動いた紙にまつわることについてお話ししていくマガジンです。

第2回目は、台湾で出会った、デザイナー王慶富さんが手がける太陽の光で印刷するノートについてお話します。

2015年7月に仕事で台湾を訪れた際に、ぜひ行ってみたいと思い尋ねた紙のお店、品墨良行(ピンモウリャンハン)。ここは王慶富(ワンチンフー)さんが営む、紙にまつわる様々なアイテムを展開するお店です。お土産にはもってこいのアイテムもたくさん販売している「品墨良行 街上店」と、紙と印刷にフォーカスした「品墨良行 紙的材料室」2店舗展開しているのですが、どちらも歩いてすぐ近くなので、台湾に行った際にはぜひ遊びに行って欲しいお店です。

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店内には、たくさんの紙が並び、自分だけのオリジナルノートが作れたり、王さんが手がけている書籍や雑貨があったりとたくさんの紙アイテムが並んでいます。

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その中でも私が目を引いたのは、晒日子(サイリーズ)シリーズのノート。
日焼けをしやすい紙で装丁されたノートに、印刷したい部分に光を遮るフィルムを当て、「日焼け」という手法を使って、印刷するノート。この太陽の光をつかった印刷というアイデアにまず感動し、紙好きにはたまらない、あの日焼けして良い感じに味の出た紙の質感も相まって、なんて面白いんだろうと思いました。

ちょうど訪問した日はお店の外で、王さんがノートを干してました。

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台湾の太陽は強いから夏だと1日で印刷が完了するよ!と王さん。

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太陽の強さや、干す日数によって表紙の焼け具合も変わり色も様々。365日の日にちの入ったノートも魅力的でした。(右が王さん)

王さんは、台湾の太陽が好きで自分も寝ながら、野菜なども一緒に干されているこの写真に表現されているように。自然を愛し、自然の持つ力も表現していてそのコンセプトも素晴らしいと思いました。

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訪問した日は紙にまつわる色々な話をしてすごく楽しかったです。

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本当に話が尽きず、名残惜しい別れるする際に、3ヶ月後に偶然にも王さんが日本でワークショップもするというので、驚き、ぜひ日本でも会いたかったので、早速参加することを決めて台湾をあとにしました。

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王さんの日本でのワークショップは東京の「世田谷ものづくり学校」で開催されました。屋上でみんなで作ったノートを干す体験もしてとても楽しかったです。その際にも、太陽の光で干して作った乾物などの話も一緒にしてくれたりもしました。

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王さんはイベントの参加者に、太陽で干した具材を使ったおにぎりを握ってみんなに振る舞っていました。

王さんの世界観が好きでいつか一緒にコラボなどもできると嬉しいなと思ったりもしましたが、まだ実現はしていません。台湾にはしばらく行っていないけど、またいつか会いに行きたいです。

今回の記事を書くにあたり、2015年に台湾に行った際に購入した晒日子のノートを改めて眺めてみました。SIWAの製品のもつ経年変化と同じ時の流れや、紙のもつ独特の風合い、温かみがありました。

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紙のもつ特性を活かし、自然の力を使って紙を日焼けさせるという今回の晒日子のノートは、2014年にDesign For Asia Grand Awardも受賞されています。

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印刷技術における環境問題は色々と課題があります。印刷に使われるインクの中には揮発性有機化合物(voc)の排出されるものがあり、印刷作業に関わる人体への影響や、石油系インクによる大気汚染の問題、溶剤の排出による水質汚染など様々。現代では環境に配慮した様々なインクなどが開発され、大豆などを使った植物性のインクやノンVOCインキ、有機溶剤を含まないUVインク、油分を含まずvocの発生が少ない水性インクなどがあります。
(VOCとは揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds)の略称。
大気中の光化学反応により、光化学スモッグを引き起こす原因物質の1つとされており、揮発性があり、大気中で気体状となる有機化合物の総称です。)

ただ、その環境に良いとされる印刷方法にも、大豆インクでは環境ホルモンの問題が、UVインクは紙のリサイクルにおいて脱墨性が悪いなど、まだまだの課題が残っているのも現状のようです。
ちなみに私たちの印刷に対する現在の環境に対しての取り組みは、SIWAの色つけは水性顔料で色つけをしています。名入れなどの印刷案件の場合は、3年ほど前から花王さんが開発されたルナジェットというvocの排出がない水性顔料のインジェットプリンターを導入し一部に使用したり、自然素材を使った藍染などの染色方法も積極的に取り入れています。2021年の4月に行った奄美大島の泥染の染め直し企画もその一環でした。

そんな印刷における環境問題の観点からも王さんの考えだした、この晒日子シリーズは太陽の光だけで印刷を行う究極に環境に良い印刷方法であったことが、私の心にスッと気持ちよく入ってきた理由の1つだったのだと思います。

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品墨良行のHPはこちら。


次回は、カナダ、バンクーバーで素敵な紙にまつわる製品を作っている人々についてお話ししたいと思います。




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