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神経組織とかくれんぼ

舌がんに罹り、舌亜全摘手術をしてから6年経った。
幸い味覚と嗅覚は残ったので食べたり飲んだりは訓練次第で楽しめるくらいまで回復している。
ある程度普通の生活ができるようになってから気づいたことがある。それは『今痛い場所がわからない』と言う不思議感覚。
どういう事かというと
『口の中の奥歯のあたりが痛い…気がする』
『触ったり鏡で見たりしても何もない』
『ちょっと調子悪いから葛根湯飲んでおこう』
『あれ?奥歯痛いのなくなってる』
つまり、痛かったのは奥歯ではなく、風邪引き掛けて軽い炎症を起こした喉だったわけで。手術をする前まで当たり前に分かっていた『痛い部位』が時間をかけて探さないと見つからなくなってる、いや、違う部位に痛みが間違って伝わってしまっているのである。

まぁでも考えてみれば、舌を9割近く切り取られ、リンパ郭清のために顎から首にかけて大きく切除してるから当然神経組織も大部分持ってかれてる。再建した舌(に見える塊)とは血管は繋がっているが神経は通っていないから、まともな伝達を望むのは無理な話なのかもしれない。奥歯と喉は近いから誤差と言えば誤差だ。

何が一番困るかというと、我慢できない痛みになって受診するとき『さて、何科に行くべきか?』と迷う。幸い私の病状(状態)をかかりつけのお医者様は分かってくれてるので近い部位まで細かく診てくれる。先日は頬のあたりが痛んで受信し、頭部頸部を細かく診てくれて、辿り着いた診断名は『眼精疲労』だった。眼科に行って目の病気がないことを確認してもらい、目薬を処方してもらって治った。

体の部位を失った人が、その部位が有るという錯覚に陥ることがあるのは聞いたことがある。でも私の場合、痛みの原因となる部位の近くに『痛いのここです』と間違ったサインが出てしまうので厄介。切り取られた顎から首の部分は感覚が戻ってきているので(まだ鈍いけど)切断されてた神経組織が間違ってくっついちゃったのか。人体の神秘。

不思議体験があると『もしかしたら、近い将来突然舌が生えてくるんじゃね?』と妄想しながら色々と模索する変な癖ができたw
んなことあるかい!と突っ込まれそうだが、誰にもご迷惑をかけない限り、この変な癖を直そうなどと微塵も考えてはいない。
間違ったサインを送ってくる神経ではあるが『体のここの近くが不調だよ』と知らせてくれるだけでもありがたい。
神経組織とのかくれんぼは厄介だけど、健康的な生活を送るために必要な陽ストレスと思うことに決めた。
いつか、この体験が偉い研究者さん達の参考になったら嬉しいな。
医学のさらなる発展を期待する。

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