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ゆるくかいてる

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秋風記/太宰治 不真面目感想

この一文に引かれて読むことにした。太宰が「太宰」しすぎていると思って……。それもそのはずで、私がモノローグや告白の類と思っていたこのセリフは太宰劇場の一セリフでしかなかったからだ。だがそこがいい……! 30分もあれば読み終わるような短編小説なのだが、主人公もKも太宰が書く人間という感じがちゃんと出ている。優しくて思い込みが少し強めで頑固なところもあり臆病でもあり、矛盾を抱えて生きているあたりが歪ではあるのだが、人間らしいなと思わされる。 もちろん、考察しがいのある作品でも

    • 太宰治の終わり方

      死について扱っているため不謹慎ととられる表現があるかもしれませんが、そういった意図はありません。 誰しもが抱える矛盾や中途半端さを描いている点は、太宰治の作品がもつ魅力の一つであると思う。このような作品の魅力は太宰本人にも当てはまっていると思うのだが、太宰の死についてもこの要素が含まれており、そこまで含めて太宰の人生は完結し完成されたのだと私は思っている。 太宰が小説「グッド・バイ」を遺して亡くなったことは有名だ。終わりを予感させるかのようなタイトルの小説を未完としたまま

      • 痴人の愛/谷崎潤一郎 御伽噺の家でカップル像は変化する

        導かれるだけの立場だった女性が、相手を導いても良くなったのかなと思って書きました。 「痴人の愛」のナオミと譲治の関係性がより密接に築き上げられていくのは、大森の家でふたりが同居し始めてからだろう。 この借りた洋館のことを作中では「御伽噺の家」と呼んでいるので、ここでもそう呼ばせていただく。 わたしが気になっているのは、御伽噺の家の前の住人である「絵かきとモデル女」とナオミと譲治の間に対比のような関係性を見いだせないかということだ。 まず前の住人についてだが、おそらく絵か

        • 人間失格/太宰治 感想

          最後の「神様みたいないい子でした」で泣いたし、救われた。 このセリフがあって、葉蔵に少しでも共感した読者は、葉蔵の身に起こったことを受け止め続け、時には自分のことのように捉えていたのでボロボロになっていた分の傷が一気に癒やされる思いをするというか、救われるのだと思う。(実際私は泣いてしまった) 作品を通して共感をこえて共鳴するような感覚を味わったと思う。太宰作品を読んでいると共鳴のような感覚をうけることが多い。人間失格ではその感覚が特に強かった。自分はうまくやれている、人間

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