書案六尺 〜伍 酒の肴か肴の酒か?

noteでは先輩のクリエーターさんが、それはもう旨そうな料理やまつわる話を書いていらっしゃるので、ふと酒の肴について徒然なるままに書いてみようと。

酒の肴、どちらが主でどちらが従なのかと言えば
このことばが昔からしっくりこないなぁと感じている。

というのも、所謂お酒と料理のマリアージュとか何とかは私にはあまりないと言っても良いからだ。酒の肴と言われるものは子供の頃から大好きだったのだが(コハダとかの光りもの多いな)、ついでに水分を補うくらいの間隔で酒を飲んでる、様はつまんない酒呑みの類である。
酒が嫌いなわけでは断じてない。 が、旨いのを飲んでる時には食い物邪魔だなぁ派である。様はマルチタスク派ではないのだ。

むしろ酒や肴とそのものではなく、楽しい呑み会が好きで、結果として両方美味しく嗜んでいる。
リーマンやめてから(とはいえ現状も給与所得者である以上変わりはないわけだが)、一時期のウザ絡みしてくる上司や同僚などとのクソ面白くない連中と呑まにゃならん事は無くなったので、基本今の呑みの場は全部楽しい。
よって私にとっては呑みの場そのものが肴になるんだろうか?

そういえば、変わったものを肴にして旨そうに酒を呑んでた人を思い出した。
とっくに物故しているが、母方の祖父である。

この人戦前は田端で呉服屋を営んでおり、毎晩芸者さんやらを引き連れて飲み歩き、地元で相撲の勧進元(所謂興行主)になったりと、様はフリーな散財をする粋人であったそうだ。
大戦中、空襲で店が全焼し、当時の文士が多く住む大森にあった別宅に居を移した。
それからは全く働かず自分でたまに小商いなどして一生を終えたのだが、終戦後の食糧事情厳しい中、配給の砂糖をタバコの葉をまろやかにしたいらしく、全部砂糖水にして霧吹きで葉っぱに飲ませてしまい、家族から改めて大顰蹙を買ってたりしていたそうな。(以上亡き母から聞いた話)

そんな爺さんと気が合ったのが、やはり亡き父親で、よく2人で呑んでいた記憶がある。
たまに我が家に遊びに来ることがあり、その度に我が親父が『せっかくお義父さんが来るんだから…』的にウキウキして、仕事休んで江ノ島辺りでサザエやら岩牡蠣(多分密漁だな)など取り揃えて、夜を待たずに2人して至福の表情で呑んでたなぁ。

このじいちゃんが正月一同が集まった時に、孫を一人一人あぐらをかいた片っぽうに座らせ、もう一方の太ももを支点にして真ん中に置いた湯飲み茶碗に一升瓶から酒を器用に注いで、やおら一口呷って何が二言三言語りかけてくるのだ。
こちらは元来の早口と濃密なアルコールのペイパーを吹き付けられたまったもんじゃなかったが、本人実に旨そうにまさに至福の表情で酒を呑んでいたのを思い出した。
つまりは孫を肴にして酒呑む爺様であった。
(僕より年下の従兄弟姉妹は覚えがないかなぁ、つうかもういなかったか?)

実に酒の肴は人それぞれでありますなぁ。

こんなこと書いてたら、買っといた牡蠣でアヒージョ作って、泡系の酒で一杯やらねばならんなぁと明後日の予定を立てている自分がいる。

最初に申し述べた事と甚だ矛盾するけど、こういう事もありですよ。うん。 いいのいいの。😃

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