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大殿筋を鍛えるためエクササイズをどのように選択するか?

僕たち臨床家は
大殿筋のトレーニングを提供するときに
本当に効果的にアプローチできているのか
その活動レベル自体を直接目にすることはできません

姿勢や動作から推測することはできても
実際に大殿筋がどれだけ活動しているのか
そして
その活動を最大限に引き出すために
どうすればいいのか
明確にすることは難しいですよね

そこでこのnoteでは
大臀筋の活動を最大限に生かすための
エクササイズ選択について
最新の体系的レビューから得られた知見を共有し
臨床のヒントを提供したいと思います

このレビューは
2020年にJournal of Sports Science and Medicine
に掲載された論文で
股関節伸展を伴うエクササイズにおける
大臀筋の活動レベルを分析したものです

レビューの概要

このレビューでは
PubMed/Medline、SportDiscuss、Scopus、Google Scholar、Science Direct
これらのデータベースから
筋電図を用いて大臀筋の活動レベルを測定した研究を収集しています

そして、
6本の論文から得られたデータを統合し
さまざまなエクササイズにおける
大殿筋の活動レベルを比較しています

この論文では
各エクササイズにおける大臀筋の活動レベルを
%MVICで表しており
この値によって
どのエクササイズが最も効果的に
大臀筋を活性化させるのかを比較しています

つまり、%MVICが大きいほど
そのエクササイズは
大臀筋をより強く活性化させていることを
意味しています

大臀筋活動レベルの高いエクササイズ

分析の結果
大臀筋の活動レベルが非常に高い(>60%MVIC)
と分類されたエクササイズは以下の通りでした

大殿筋の最大随意等尺性収縮率(%MVIC)の平均のまとめ
値はプールされた平均値と標準偏差の平均値で示されている

ステップアップ系
ステップアップ、横向きステップアップ、斜めステップアップ、クロスオーバーステップアップ
ヒップスラスト系
ローテーションバーベルヒップスラスト、バーベルヒップスラスト、アメリカンバーベルヒップスラスト、プルバーベルヒップスラスト、バンドヒップスラスト
デッドリフト系
ヘックスバーデッドリフト、デッドリフト
スクワット系
ベルトスクワット、スプリットスクワット
ランジ系
インラインランジ、ランジ
その他:
修正された片足スクワット

これらのエクササイズは
いずれも大殿筋を強く収縮させ
筋力や筋肥大に効果的なエクササイズであると考えられます

大殿筋(GMax)活性化の比較。筋活性化の分類は、低値(0~20%MVIC)、中程度(21~40%MVIC)、高値(41~60%MVIC)、超高値(>60%MVIC)となっている

臨床的示唆

このレビューから、以下の臨床的な示唆が得られます。

ステップアップ系エクササイズ

大臀筋の活動を最大限に引き出すには
ステップアップ系エクササイズが
最も有効であると考えられます
これらのエクササイズは片側で行うため
バランス感覚や体幹の安定性も
同時に鍛えることができます
ただし
これらのエクササイズは難易度が高く
初心者や体幹が不安定なクライアント
には注意が必要です

ヒップスラスト系エクササイズ

引用:healhtline

ヒップスラスト系エクササイズは
ステップアップ系の次に
大殿筋の活動を効率的に高めることができます
ヒップスラストは
膝の屈伸がないため
スクワットなど他のエクササイズと比較し
負荷をより直接的にかけられるため
大殿筋の筋力強化や筋肥大に
効果的なエクササイズと言えます

またこの論文では
足のポジションを調整することで
大殿筋の活動レベルを調整することができると
述べられています

具体的には
足の回転と大臀筋の活動
論文では、ヒップスラストを行う際
足を外側に回転させるように意識することで
大殿筋の活動レベルが
最も高くなることが示されたと書かれています
股関節外転と大臀筋の活動
体重ヒップブリッジ(体幹を上げるエクササイズ)で
足を30°外転させた状態で行うと
15°や0°の外転と比べ
大殿筋の活動レベルが
高くなることを示したと書かれています

デッドリフト系、スクワット系、ランジ系エクササイズ

引用:IFAST Fithness

これらのエクササイズも
大殿筋を十分に活性化させることができます

デッドリフトは非常に高いレベルの
大臀筋の活動を引き出す可能性がある
エクササイズとして挙げられています

一般的にデッドリフトは
大殿筋だけでなく
ハムストリングスや脊柱起立筋など
多くの筋肉を同時に鍛えることができるため
全身の筋力向上に役立つことが考えられます

この論文で非常に高い活動レベルと言われた
エクササイズのバリエーションとしては
一般的なデッドリフトとヘックスバーデッドリフト
となります

次にスクワットは
大殿筋の活動レベルを高めることができる
エクササイズの一つとして挙げられていますが
ステップアップエクササイズやデッドリフトほど
高いレベルの活動を誘発するとは
結論づけていません

この論文でスクワットは
以下の点が指摘されています

1)スクワットのバリエーションによって効果が異なる
スクワットにはフロントスクワット、バックスクワット(ハイバー、ローバー)、平行スクワット、フルスクワットなど
多くのバリエーションがあります
これらのバリエーションによって
大臀筋の活動レベルは大きく変化します

2)スタンス幅、深さ、バーベルのポジションの影響
スクワットのスタンス幅、深さ、バーベルのポジションは
大殿筋の活動レベルに影響を与えます
この論文ではバックスクワットにおいて
スタンス幅を広くするほど(大転子の距離の1.5倍や2倍)
大殿筋の活動が強まる傾向が見られたとされています
スタンス幅が広いと
股関節外転筋の活動が高まり
それが大臀筋の活動にも貢献するためと
考えられています

スクワットの深さと大臀筋の活動
については研究結果が一致していません
フルスクワットは
平行スクワットや部分スクワットと比べて
大殿筋の活動が大きいとう報告があります
しかしこの研究では
スクワットの深さと負荷が調整されていない点が
課題と言われています

一方で
フルスクワットと平行スクワットの間には
大殿筋の活動に有意な差は見られないとの
報告もあります

さらにスクワットの深さに応じて
負荷を調整した研究では
部分スクワットの方がフルスクワットよりも
大臀筋の活動が高いと報告しています

他にもこの論文では
深いスクワットで
大殿筋が股関節伸展モーメントに
貢献する割合が減少する
可能性があると述べています
これは深いスクワットでは
膝の屈曲が大きくなり
ハムストリングスの活動が促進され
大殿筋の活動は抑制されるためと
考えられています

また深いスクワットのメリットとして
この論文では
筋肉の緊張時間が長くなることや
より大きな機械的ストレスがかかることから
筋力や筋肉の成長に
有利な可能性があると述べています

ランジは
一般的には
スクワットと比較して
動作範囲が小さく膝への負担が少なく
バランス感覚を鍛えることができると考えられます

この論文では
非常に高いレベルの大殿筋の活動を
引き出す可能性があるエクササイズとして
挙げられています
この論文ではインラインランジと一般的なランジが
挙げられています

エクササイズのバリエーション
同じエクササイズでも
足幅、バーベルのポジション
動作の速度などの違いで
大殿筋の活動レベルは変化します
そのため
クライアントの体力や目的
そして運動経験に合わせて
エクササイズバリエーションを
選択することが重要です

まとめ

大殿筋のエクササイズ選択について
体系的な知見を紹介しました
クライアントのニーズや目的に合った
エクササイズを適切に選択し
安全かつ効果的にトレーニングを実施するため
この知見を参考にしてみてください

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