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仕事でミスしてタクシー代を2万円払った話②


とうとう山深くなり
自分の力だけでは目的地に
辿り着けないと判断した運転手さんは
山の中の派出所に立ち寄ってくれました。

派出所に行くと私服の警官が出てきました。
「お巡りさんはいますか?」
「あ、私がそうですよ」
お巡りさんはそのへんにいるような
近所のおじさんのような格好をしていました。

「ここの住所の〇〇さんって方を訪ねたいんですけど」
そうするとその村の全員の名簿が載ったタウンページを持ってきて調べてくれました。

その方のお家は
本当に山深い獣道のようなところにあり
地元の方でも滅多に通らないところでした。 

ちょうど通りがかりの
軽トラックに乗った中年男性が
たまたまガスの点検にその辺りに行く用事があるとのことで名乗り出てきました。

タクシーから私は
軽トラックの助手席に乗せていって
もらうことになりました。
タクシーの運転手さんは派出所に待機です。

関わった人たちはみんな協力的で親切で
涙が出てきそうでした。

そこに着いた途端
家の中から親御さんが出てきて  
「よくこんなところまでわざわざ
 来てくださいましたね」
と言ってくださいました。

ただ当の本人であるお客様はおらず
実は免許証の住所を実家からかえておらず
実は近くに一人でお住まいとのことでした。

ここで親御さんから連絡先を教えて頂き
連絡を取りつつ
市内に戻ることになりました。

一方、あまりの帰宅の遅さに
お店からも私の元に連絡がきて怒られ
お金も底をついていたため
フリーランスだった彼氏を車で
呼び出して怒られ
中間地点のコンビニで待ち合わせて
それからは彼氏の車で
お客様と待ち合わせ場所に向かいました。

タクシーの運転手さんともここでお別れです。
「頑張ってね!」と一言。
私は運転手さんへの感謝の気持ちでいっぱいでした。

無事お客様の元に免許証を届けると
大変感謝され、「申し訳ない」と
逆に謝られました。

店に着く頃には営業も終わって
みんなが私を待っていました。

「怒られるんだろうな」
と暗いお店に戻ると
みんな心配したような顔でした。

「SIS、お前車持ってないのに
 そんな遠くに行ってタクシー代
 いくらしたんよ?」
「2万円です、あ、でもかなり安くしてもらったんですよ。帰りは彼氏に送ってもらったし。」
「馬鹿やろう。そんなお金持たないくせに。
 車持ってる俺たちに相談してくれたら
 代わりに行ってやったのに。」

怒られはしましたが
すごく私を思っての叱責でした。
私はみんなの前で号泣してしまいました。

すごく大きな失敗で
たくさんの人に迷惑をかけてしまいましたが
たくさんの人たちの温かさを実感した
今ではとても貴重な経験になりました。

この頃のお店のメンバーとは今も仲良しで たまにネタとして何度もこの話が上がります。

若い時の失敗というのは
成功よりも価値があるものなのかも
しれません。

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