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長々と雑に紹怪 【釣瓶火】

 

釣瓶火とは


鳥山石燕の画図百鬼夜行に描かれた火の妖怪である。別名はつるべおとし(つるべおろし)。つるべおとしは大きな首が落ちてくる妖怪として紹介されてもいるが、本noteでは同名別個の妖怪として扱いたい。尚、江戸時代の怪談本である「古今百物語評判」では「西岡の釣瓶おろし」という怪火が紹介されており、これが釣瓶火の原典であるようだ。この妖怪の特性は、四国、九州地方において、夜間に山道を歩いている際、木の枝からぶら下がり、さながら釣瓶のごとく上がり下がりを繰り返す姿を見ることがあるというものである。また、これは陰火であるとされて木に燃え移ることはなく触れても熱くはない、時折火の中心部には人の顔のようなものが見えるという報告もある。

釣瓶火の正体は…


その正体は木の精霊とする説もあるようだが、菌類やバクテリなどの生物発光ではという説が有力な模様。釣瓶の如くすとーんと落ち、また上がっていく動きで考えると、蜘蛛ではないかとも思うのだが、蜘蛛の身体にバクテリアが付着したもの、あるいは蛍を捕食した直後などその光を携えることもあると聞くので、こういったものがつるべ火の正体では、とも考えられる。
以上は実際に釣瓶火との遭遇事案があった場合での考察だが、果たして完全に創作であった場合はどうだろう。
「秋は釣瓶おとし」という諺がある。これは秋の日が井戸の釣瓶が落ちるように早く沈み暮れてしまう、つまり秋の日暮れが早いことのたとえである。
妖怪創作においては結構な割合で、言葉あそびによるものが多い。日は火に通じ、釣瓶おとしという言葉を妖怪に擬える。さらに五行説(木火土金水)の考え方から火は木から生ずることより木の精霊で木にぶら下がるもの、といった創作があったのではないだろうか。
あくまでも思索想像の域のものだが、こういう想像を巡らせることができるのも、妖怪の魅力の一つである。


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