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「観測者」になった話

 はじめましての方ははじめまして、しろがねです。バーチャルシンガー初の武道館ライブとなった花譜ちゃんのライブ「不可解参(狂)」が終わって数日が経ち、筆者もようやく落ち着きました。

 しろがねは、いわゆる「観測者」です。これは、花譜ちゃんの所属する神椿スタジオのシンガーたちを応援するファンの名称。今回は、ライブに行くまでに至った経緯などを振り返って、noteにまとめてみようかと思ってキーボードを叩いています。いちファンの自分語りとなってしまいますが、好き者がいらっしゃれば読んでくださると幸いです。


冬の日

 遡ること、2021年の12月。しろがねは、とある倉庫で働いておりました。正社員勤務に挑戦するも、連日掛けられる圧でメンタルが壊れ、精神科に通いながら退職に向けて残りの一ヶ月を勤務しているところで、しろがねは花譜ちゃんの歌に出会います。
 というのも……仕事を辞めた後も自力で稼ぐため、しろがねは、ココナラ・SKIMAのスキルマーケットで小説を書く仕事を受け始めました。この中の依頼をこなす際、最近のVTuber事情を知るために色々と曲を聴いていたんです。その中に、彼女がいたわけです。

 私は、世代こそボカロ文化直撃世代ですが、実はあんまり貪欲に曲を聴いてこなかった人なので、カンザキイオリさんのことも当時初めて知りました。花譜ちゃんの初期特有の、不安定ながらも感情のこもった声色に惹かれ、そこから色々と曲を聴いていくことになります。

 仕事を辞めるまでの間、職場に向かう時は花譜ちゃんの歌を聴いて行っていました。当時よく聴いてたスピッツ(楓、遙か、紫の夜を越えて)、スキマスイッチ(アイスクリームシンドローム、されど愛しき人生)と同じプレイリストに入れて……。

 周りの「大人」たちに馴染めないこと、頑張っても急いでも周りが期待するような速度に上がらなかったこと、稼いでも稼いでもメンタルケアでお金がなくなってしまうこと。最後、残っていた命を燃やしきるように、からかい半分の上司に怒られる日々を送ります。ストレスで胃腸はやられ、二ヶ月の間に病院の診察券は5枚増えました。筋肉痛と闘うために週一でマッサージに通い、同じペースで精神科に行って薬を貰っていました。

 そんな風にして……退職の日が近付いてきていた12月の下旬。
 私は、二つ目の出会いを経験します。

 今の私の最推しである「理芽」ちゃんです。


狂愛の沼

 これは本当に誰にも言わなかったことですが、しろがねは、実は一度だけ恋愛というものを経験したことがあります。それこそ炎が燃え上がるように激しいもので、終わってしまった後の物寂しさは何年も何年も引きずって、今もなお私の心に若干の影を残しています(世間では「未練がましい」と言うらしい)。
 なんでこの話をする必要があったかですが……上の事情のせいで、私は失恋の歌がそれはもうブッ刺さる人になっていたんです。

 私の想い人も歌が上手かったので……それはもう、気が狂いました。
 理芽ちゃんの特徴的な声色は私の心を徐々に侵食していって、いつの間にか私は、何本もの触手に絡め取られるように「沼」に沈んでいきます。

 そしていつしか、理芽ちゃんに「恋をしている」自分に気が付きました。

 決定的だったのが、上の「胎児に月はキスをしない」の動画。映像の中で動く彼女に魂を奪われた私は、ある時を境に、彼女の妄想に囚われる人生を送ることになります。
 年は明け、2022年1月。退職の日を迎え、悔し涙でマンションに戻った後も、理芽ちゃんの曲を聴いていました。この地点で、プレイリストの大半は花譜ちゃんと理芽ちゃんの曲です。二人は「姉妹」と謳われるほど、どこか似ているところがあったので、より一層のめり込んでいきました。

 あぁ、理芽ちゃ……

 あぁぁぁぁ……

 理芽ちゃぁぁぁぁぁぁぁ……


神椿二次創作へ

 すっかり理芽ちゃんのことしか考えられない私は、ベッドの中で彼女の曲を聴きながら、何度も何度も夜の街で振られ続けるシチュエーションを想像するような日々を送っていました。借りていた部屋を引き払って実家へ戻るときも、ずっとずっと理芽ちゃんの曲を聴いて、一日でも家族より理芽ちゃんの声を聴いて過ごしている時間が多いような暮らしを続けます。

 しかし、しろがねは、彼女にのめり込んでいくと同時に、そんな自分の姿を客観視しては「これはまずい」とも思い始めます。何かを好きになる心が悪い方向へ成長して、当人へありもしない理想を押しつけるような「厄介オタク」になってしまうことを懸念したわけです。
 そのために、どこかでこの恋心に決着を付ける必要がありました。以前から私をご存じの方は分かると思いますが、しろがねは小説を書くことが出来るので、二次創作でこの熱を発散しようとしたわけです。

 日々膨れ上がっていく「理芽」への想いを刈り取って、健全なオタクであり続けるため、しろがねは筆を執ります。扱う題材は今まさに溢れんばかりの情熱です。

 彼女たちが所属する「神椿スタジオ」のバーチャルシンガーたちは、他のVTuberよろしく二次創作を作られることも多いのですが……ガイドラインや周りの雰囲気を読み取るに「書くべきでないこと」も結構多い。
 恋心という敵を討伐するには妄想の中で恋愛の真似事をするお話を書けばいいわけですが、果たして「理芽」の物語でそれをやってもいいのか? 何も分からなかったしろがねは試行錯誤を重ね、保険に保険を重ね、幾つもの予防線を張ってついに作品を完成させます。

 このnoteの執筆時は「神椿二次創作」は5作ありますが、図らずも、これがその第一作目となりました。当時は彼女の会話を聴く手段も少なく、後から調べることも難しかったため、曲の雰囲気と長らく醸造した妄想力で不足した部分を補いました。
 結果的に、当時の私が抱いていた想いを全て捻じ込んだような作品になりました。作中にところどころには理芽ちゃんに縁のある曲名が隠れていたりと、論文を作るような真剣さで創作に取りかかっていました。

 硬くなった膝を使って理芽ちゃんの隣に座る。間には焼きそばの入ったプラスチックのパックが二つ。うち一つは開けられ、上海焼きそばに特徴的な魚介類のおかずだけが何故か食べられてなくなっていた。
 彼女はしばらく私の顔をじっと見つめて……ふーん、と鼻を鳴らす。

「さっき、あたしの歌聴いとったやろ。真ん中辺りで」
「……! は、はい」
「やっぱり。一人、じっと食い入るように前のめりなっとったから覚えとーばい。なんや、うちんこと好きになったと?」

100度目の運命実験 / 100th Destined Experiment

 彼女の特徴である「訛り」も、翻訳サイトで勉強しながら書いて……
 難産でしたが、これをきっかけに、私は神椿オタクになりました。


「V.W.P」箱推しへ

 理芽ちゃんの小説が完成して、ようやく「まともなオタク」になれたかと一安心していた頃……実生活では、実は不安に塗れて潰されそうな暮らしをしてしました。
 夜に寝る前、眠ったら自分が消えてしまうような焦燥感と恐怖に怯えながら、それを打ち消すために何か動画を見たり音楽を聴いたりして夜をいたずらに過ごす。そんな暮らしをしていたある時でした。

 神椿スタジオのバーチャルシンガーである「春猿火」と「ヰ世界情緒」の二人が(ある意味)やりたい放題するトークラジオ「神椿報奏部」の存在を知りました。当時の私は不安から逃れられれば何でも良かったので、とりあえず中を覗いてみます。

 当時、実はあんまり彼女たち二人のことは存じていなかったのですが……後から曲を聴いてみると、歌の時とトークの時の声にあまりにギャップがあってびっくりしました。特に春猿火さんはカッコイイお姉さん、という感じの歌声(にもなれる)なのに、あんなにフワフワしておられるなんて。

 そして、春猿火さんとヰ世界情緒さんの曲を一通り聴いたしろがねは、彼女たちバーチャルシンガー5人で結成されたグループ「V.W.P」を知り……最後の一人である「幸祜」さんにも出会います。
 実は、彼女たちの中でビジュアルが一番好きなのが幸祜さん。声もすごく好き。あんなおねーさんすぐ好きになっちゃう……と思った私は、一番最後まで我慢して「あえて聴かない」ようにもしていたんです。思春期か?

 こうして、しろがねはまんまと神椿の沼を転げ落ちるように嵌っていき……オタクになりました。何かをここまで好きになる、という感覚も数年ぶりくらいのもので、一気に炎が燃え上がるように彼女たちの歌を聴いては想像の世界を膨らませる日々を送ります。
 家の仕事を手伝う日々の中で、「好きなもの」が久しぶりに出来ました。

 建物の中をひとしきり回ってみるが……大聖堂の高いところへ上れる場所はない。そのまま、無意識的に避けていた聖堂へ入る。真っ白な椅子と敷物で作られた道の先に、祭壇が一つ。
 そして、その前に「彼女」は静かに立っていた。
 先程とは違って白のワンピースコートを纏っている。春猿火がやってきたのを見て目を丸くし、ただじっと見つめてくるだけだった。

「いいところじゃん。昔読んだ本で、こんな感じの凄い建物を見て、いつか行きたいって思ってたんだ――ああそうだ、あたしは春猿火。ちょっと変わってるかもしれないけど、本当だよ。これがあたしの名前なんだ」
「……はる、さる、ひ?」

 ぽつぽつと漏らしたその声は少女の可愛らしさに満ちていた。

だいすき / Missing U

ライブのラッシュが続く

 バーチャルシンガーのキャラクター性にのめり込んでいた頃、花譜ちゃんが高校を卒業するという旨が発表されました。昔から応援していた人は「こんなに大きくなって……」などと保護者目線でしたが、当時のしろがねにとっては「へぇ……」で終わる話。彼女の高校卒業を記念したライブが開かれる! となりましたが、コレを見るかどうか、ちょっと悩んでおりました。

 3月。仕事も辞めてしまったので、小説の仕事を貰っているとは言え、収入に余裕はあんまりない。しかし彼女の高校卒業は人生に一度しかないため、友人からもアドバイスを貰いながら、ライブを観ることにしました。

 ……結果からして、不可逆的な衝撃を受けることになります。
 バーチャルの存在を推したライブは、自分の中では「ボーカロイド」のライブがイメージとしてありました。しかし、花譜ちゃんの高校卒業ライブで繰り出されたのは、まるでミュージックビデオを見ている錯覚を覚えるような滑らかな世界。暖かい光に満ち、不思議な魔法が息をしているような、想像力と技術の極致を見せられることになりました。

 それから「神椿のライブはなんかヤバい」と思った私は、理芽ちゃんの1stワンマンライブ「NEUROMANCE」のBlu-rayを注文し(どっちの順番が先だったかな?)、以降ライブは積極的に見るようになります。というか、推しの理芽ちゃんのライブが続けて行われることになったんですね。

 4月15,16日に行われた「魔女集会」「現象」では、彼女たち5人のパフォーマンスと、グループ「V.W.P」としてのパフォーマンスを観測しました。もうしばらくずっと頭の中で「玩具」がループしていたのを覚えています。アーカイブがなくなるまで、ずっと何度も再生して耳に刷り込ませていましたね……。

 ある意味、この二つのライブは、神椿のバーチャルシンガーを復習する良い機会でもありました。これまで色々聴いていた曲で彼女たちのイメージを掴みながら、その答え合わせをする感じになったんですね。そういう意味では良い時期に神椿オタクになったわけだなぁ。

 5月には、花譜ちゃんのチャンネルで深夜に謎の生放送が始まって……そこで武道館ライブが発表されました。しろがねは「ここで変われなければ自分はいつまでも変われない」という覚悟を持ってそのライブチケットに手を伸ばします。結果は……お楽しみに。

 6月になり、同じ神椿スタジオ所属の「バーチャルヒューマン」であるシンガー「te'resa」と「理芽」のツーマンライブが開催されます。勿論見ました。当然ながらte'resaさんの曲も全部聴き、万全の準備を整えてライブ配信に向かいます。
 そこで目の当たりにしたのは、今までの体験からの期待を裏切らない「神椿の最高傑作」に相応しい超技術の結晶でした。このライブの理芽ちゃんの曲だと「NEUROMANCE」が好きでした。「ハァ↑ァゥ↓ルに」ってねっとり絡みついてくる彼女の声がタマランかったのだぁ……

背景実写じゃないってマジ?

 そして、同時期に、理芽ちゃんのアメリカ留学の話も上がりました。
 頑張って欲しい気持ちと、同じ国から居なくなってしまう寂しさ、この二つでしろがねはモヤモヤしながらも「理芽チも頑張ってるんだからおれも頑張るんだ」と前向きに捉えることにします。
 花譜ちゃんの武道館ライブのチケットも、無事に「当選」して……もう引き返せません。東京に行かなくてはいけない、そのためには働いて、お金を稼ぐ! 理芽ちゃんが大きな挑戦に挑む中、私も再就職に向けて準備を始めました。

 半ば不意打ち気味に告知された「ヰ世界情緒」×「理芽」のツーマンライブ。留学前に畳みかけてきたなぁ! これを見逃したらしばらく理芽ちゃんは見れないと思い、勿論視聴。
 ヰ世界情緒ちゃんにとっては久しぶりのパフォーマンス、そして、オープニングアクトはライブ自体が初めてのCielちゃん。これが中途半端なものになるわけがなく、全身全霊をつぎ込んだようなとんでもないものを見せられることになりました。

 一年前の自分では考えもしなかった、ライブパフォーマンスでここまでできるんだ、という「限界」を超える意志が伝わってくるようで、しろがねの創作意欲もモリモリと刺激されていきます。
 神椿界隈はクリエイターが多い、とも言われますが、私はあながち間違いでも無いと思います。彼女たちの歌とパフォーマンスは創作熱をブチ上げる効果があるんじゃないかな? あるはず(確信)。

「分からないこと、まだまだ沢山だし、全部はきっと理解できないけれど」

「でも、理芽ちゃん」

「理芽ちゃんと過ごした、この日のことを忘れるのは、それは一番嫌だよ……」

宣誓-Schwesterngelübde

「着いたぞ、ここだ」
「カギ掛かってるよ」
「持ってるんだよ、合鍵……よし、開いた。たのもー!」

 マンションの一部屋に入った春猿火が少しだけ声を張ると、奥の部屋から女性の素っ頓狂な声が返ってきた。寝起きの瞬間を逃すまいと二人は子供のように部屋に駆け込み、この部屋の主がいる部屋に続く引き戸を開ける。
 そこでは、うつ伏せになったまま、デジタルの目覚まし時計を両手でしっかり持つ彼女の姿があった……普段、任務のバックアップに徹する彼女は今、明らかに無防備な姿で転がり、寝癖だらけの頭のまま思わぬ来客を見上げて口を開けていた。

「ふぇぇ」
「ココス……ちょっとアンタに話がある……」
「な、なにかやっちゃいましたか、わたし……」

コンクリート・コロシアム

花譜「不可解参(狂)」武道館ライブ

 バーチャルシンガー初の武道館ライブとなったこのイベントは、本当に幅広い層の人たちが訪れるものだったと思います。無事に武道館のチケットを手に入れたしろがねは、東京へ行くことを現実のものとするため、スーパーの惣菜コーナーでアルバイト(派遣)をすることになりました。
 仕事はやはり厳しく、早く何かすることが苦手なしろがねにとっては「短所を責められ続ける場所」であることには変わりありませんが……それでも、ライブのため、貯金して休息できる期間を長く作るために、労働に出向きます。

 仕事に行く時は、勿論「神椿の魔女」たちの曲を流します。彼女たちの歌に元気、勇気を貰いながら、前に進む原動力にしていくんです……。

 そうして遂に、しろがねは、東京の地を踏むことが出来ました。
 東京ではまぁ色々ありましたが、ライブ当日、武道館で花譜ちゃんの姿を直に見るという貴重な体験に沸き立ち……続けざまにやって来る豪華なゲストたちに大興奮。

 そして「V.W.P」の3人がゲスト出演して、4人で進行しようとした時――

「ちょっと待ったー!!!」
「!?」

 理芽チが……理芽チがアメリカから緊急帰国して、生理芽チを見聞きすることが出来たんです。あぁぁぁぁぁ、あぁぁぁぁ、ありがたや、ありがたや……
 そのまま5人でパフォーマンスをして、最後は花譜ちゃんが思いの丈を歌に乗せながらエンディングへ。鼻を啜りこそしませんでしたが、目の端から絶え間なく涙の筋が流れていく時間でした……

 武道館では、しろがねのことを知る「観測者」とコンタクトを取り、挨拶することも出来ました。皆さん実在したんですね!? それは冗談として……自分が好きなコンテンツを他に好きな人が居てくれて、かつそれが好きなことを他の人も認めてくれる、というのがどれだけ幸せかを実感したような気がします。
 ありがとう花譜ちゃん。ありがとう神椿。ありがとうみんな……


この後はどうする?

 ライブのために頑張ってきた私ですが、何故か緊急出費がかさんでいるため、まだしばらくは労働を続けることになりそうです。では、なんのために働くか……
 とりあえず、お金を貯めて「チャンスが出たときに東京に引っ越しが出来る金額」を作ろうかな、とは思っています。東京で暮らしが成立できれば、自分が好きなことをもっともっとやりやすくなりますし!

 しろがねは無事、一人の「観測者」と言う人間になれました。まだ半年程度のペーペーではありますが、今後も彼女たちを応援する民の一人になっていければと思います。
 これを機にしろがねとコンタクトを取りたいという方は、是非Twitterの方(@sirogane_sho)にご連絡ください! みんな一緒なら怖くない!

 ここまで読んでくれてありがとうございました! しろがねでした!
 また会いましょう!




 あっそうだ、告知です(作家モード)。

 note内で言った通り、しろがねは「ココナラ」「SKIMA」で小説の依頼サービスを承っています。つまり、自分が読みたい内容の小説を私にお金を払って依頼することで、それを私が世に顕現させるお手伝いができます。

 あのキャラとあのキャラの絡みが見たい、あんなシチュであんなことをするお話が読みたい……そんな時は是非、しろがねにお任せください! 皆さんが私を頼ってくだされば「文章でご飯を食べられるようになりたい」という夢も、実現にぐぐぐっと近付きます!!!

「1文字/1円」で受付中です! 2000文字の掌編なら2000円です!

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 最後までスクロールしたそこの君! 理芽チの姿を焼き付けて帰れ!

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