対人コミュニケーションで「5W1H疑問文」は控えるべきでは? と言う提案

最初に結論:相手が「はい」「いいえ」から答えられるように聞いた方がいいと思う

色々あって三度退職してフリーのストーリーライターになっている私ですが、いわゆる「社会」から離れた後も、度々「あの時はどうしてうまくいかなかったんだろう?」なんて考えることがあります。もっと言えば、どうして自分はメンタルが破壊されてしまったんだろう、という問いです。
その時にいつも考えるのが、自分は相手の悪意を勝手に連想して脳内で膨らませて、それを現実化させてしまう悪癖がある、ということでした。想像力が豊かすぎるんです。そしてそれが負の方向に傾いてしまうと言うわけ。

ただ……私も人間ですから「そんな言い方しなくてもいいじゃん……」という気持ちになる場合もありました。
この記事は、せめて自分が「加害者」にならないようにという戒めと、世の中の空気が少しでも優しくなってほしい願いを込めて書いています。

「5W1H疑問文」は非常に強いモノの訊き方である

まずは、記事内の「5W1H疑問文」という言葉の意味を整理します。
これは「5W1H」(=When: いつ、Where: どこで、Who: 誰が、What: 何を、Why: なぜ、How: どのように)の言葉から始まる相手への疑問文を指しています。別の言い方をするなら、「はい」か「いいえ」で答えることのできない質問です。

少しだけ例を挙げれば、「いつまでにやるんだ?」「○○担当は誰?」「それはどうやってやるの?」というものになるでしょう。なんだかもうこの地点で胃がキリキリしてきますね。
そうです、この「5W1H疑問文」は、非常に"強い"言葉遣いなのです。

"強い言葉"だとどのような不都合が起きるかですが、本来伝えたいニュアンスを遙かに超えて、相手に要らないストレス・恐怖を与えてしまう可能性があります。
コンビニで「割り箸ください」と伝える時に「割り箸」とだけ言う人がいたら……ビビりますよね? それと同じようなことが起こるんです。

言うだけ言って相手に答えを考えさせる、という威圧感・パワハラ満載の悪手

この「5W1H」を用いた質問は、相手に対して「はい」「いいえ」では答えられない返事を要求します。つまり、質問された側はこれに対して、しっかりと回答を考えなければならない負担が生じるわけです。相手が上の立場の人間であれば尚更「しっかり答えなきゃいけない」とプレッシャーがマシマシになります。
その一方で、質問をした側は、答える側よりも多くのことを考える必要がありません。なぜなら会話のボールは相手にあるから。もしこのコミュニケーションがうまくいかなかった場合、それは質問者にとって「答えられなかった相手の不手際」となることでしょう。

これが生み出すのは、コミュニケーションにおける会話コストが平等でなくなってしまうことです。
質問者は3秒の間に質問をし、回答者はそれに対して5秒以上、長くて10秒以上もの時間を掛けて回答する必要があります。そしてそれは、回答者にとって非常に居心地の悪い時間になるでしょう。特に僕のような「自分だけが話していると罪悪感を覚えるタイプの人間」には地獄そのものです。

もっと言えば、この「会話コストが平等ではない」ことが招く事態として、質問者が回答者からの返事を元にノータイムで更に5W1H疑問文をぶつけてしまうことがあります。
質問者は3秒で考えた質問を行い、回答者は15秒かけて回答し、それに対して質問者は2秒で考えた追加の質問を行い、回答者はさらに10秒以上かけて回答して……こんなことをしていたら、回答する立場の人間は嫌でも精神が磨り減ります。

質問自体が「相手の否定」を目的にしている場合、それはもう最悪以外の何物でもない

この「5W1H疑問文」の例として「いつまでにやるんだ?」「どうやってやるの?」という文章を出しましたが、皆さんはこの言葉が、どんな状況・どんな人が喋っているように聞こえていたでしょうか?

考え得る限り最悪のパターンは、「上の立場にある人間が、相手を否定して追い込むために問い詰める」という状況です。そのようなことをする人物は「疫病神」と呼ばれても文句が言えないほどの重罪を背負っていると思ってください。
ハッキリ言います、この世界に存在してはいけません。

有名な話として、誰かが誰かに暴言を吐いた場合、暴言を吐かれた人物の生産性が50%、それを周りで聞いていた人の生産性が33%落ちる、というものがあります。(細かい数字は異なる場合がありますが、大体このくらいだったはずです)
つまり、強い言葉で相手を否定するのは百害あって一利無し、ということ。相手をやりこめる立場にある人物は一瞬気持ちよくなれるかもしれませんが、「人間の脳は自分と他人の区別ができません」。言われた側も、周りで聞いている人も、言った側も、全員が傷つきます。
更に、この現象は「感染」します。言われた側の人間が抱えたストレスを解消するために、更に立場の低い人へ同じ事を繰り返してしまうのです。

こんなことはあってはいけません。
もし、記事を読んでいるあなたが「自分はその傾向があるかもしれない……」と思ったら、アンガーマネジメントを勉強してください。あなたの怒りが生来の気質に依存するならメンタルカウンセラーに頼ってください。

「自分はそうではない」と思ったあなたは……本当にそうでしょうか?
真に害悪極まりない人物は往々にしてそういう自覚はなく、他人へ迷惑をかけ続け、まともな人を遠ざけ、最後は組織そのものを腐らせます。

なぜ「5W1H疑問文」を使うのか? という考察

相手に対して「5W1H疑問文」を使う場面を想像してほしいのですが……仕事においてはおそらく、相手の回答を聞いた後に何らかの指示・提案を行うことが多いと考えます。つまり質問者は疑問文の答えが知りたいのではなく、本当はその次の台詞で相手をコントロールしたい、ということです。

例:仕事がうまくいっていない人に対して……
「何やってるの?」→「自分が指示する内容に従え」
「今どこにいる?」→「○○をしろ」「○○までに戻れ」
「どうやってやるつもり?」→「(ありがたい講評)」

質問者が「5W1H疑問文」で尋ねる場合、その根底には「起きている問題の背景が分かれば自分で解決できるだろう」というマインドが隠れています。「俺が指示を出すから、お前は今何が起きているかを伝えればいい」ということです。
これは仕事において絶対悪というわけではないのですが……ただ、発想としては「機械のメンテナンス」と同じだということは留意してください。

○○が壊れているから△△をする、○○がうまくいっていないから△△をする、なぜなら「そういうもの」だから――
しかし、我々がコミュニケーションを取る相手は人間です。人間相手なら、もっと良い表現はいっぱいあります。わざわざ初手「5W1H疑問文」で尋ねて相手をビビらせなくても、同じ目標達成をめざす仕事仲間であれば別の言い方があるはずです。

「何やってるの?」→「うまくいってないことはある?」
「今どこにいる?」→「今って○○の辺りにいる? 頼みたいことが……」
「どうやってやるの?」→「~が心配なんだけど手伝えることはある?」

人間は理屈をこねくり回せるくらいに賢い生き物ではありますが、それでも感情を完全に無視することはできません。相手を動かしたい時は脅すような物言いをするのではなく、相手の心にしっかり寄り添って、一緒に共通課題の解決を図るスタンスで接するべきでしょう。

対案&まとめ:相手が「はい」「いいえ」で答えられるような質問に変えてみよう

とはいえ、仕事においてはしっかりと情報共有をしておきたい場面がかなりあります。その中で「5W1H疑問文」を完全に排することは無理です。
が、しかし、代わりに別の形で質問をすることで、「5W1H疑問文」が与えるプレッシャーを軽減できます。塵も積もれば山、些細な言葉遣いの変化も続けていけば、職場の雰囲気を良くすることに繋がるでしょう。

先程、いくつか言い換えの例を示しましたが、もう一度確認……
「何やってるの?」→「うまくいってないことはある?」
「今どこにいる?」→「今って○○の辺りにいる? 頼みたいことが……」
「どうやってやるの?」→「~が心配なんだけど手伝えることはある?」

この言い換えのキモは、「5W1H疑問文」からただの疑問文に変えているという点です。
このようにすることで、回答者はまず「はい」「いいえ」のどちらかで答えることができます。必要な情報があればその後に補足が入るでしょうし、それだけで十分なら会話のボールは質問者へ返っていきます。

会話のボールを質問者へすぐ返せる、と状況作りは、前述した「会話コスト」の不平等さをかなり抑えることにも有効です。
質問者は3秒で聞いて、回答者は1秒で答える、それに対して質問者はさらに4秒で聞いて、回答者は4秒で答える……これなら、聞かれる側もそんなにストレスを覚えなくて済みます。「平等に会話している」という雰囲気もありますよね。

以上、しがないストーリーライターからの提案でした。
もし「自分はこう思った」などの思いつきがあったら、この記事をタネにSNSなどで周りと話し合ってみてください。
いつの世も、世界を地獄に変えるのは人間です。強かにいきましょう。

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