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大関をたった14場所で陥落した男⑨最強のライバルは自分自身(終)

“モンゴルへ帰れ“と言われた時の気持ちを聞くと、
「めっちゃ淋しかったですよ」
そう、ぽつりと言った。
冒頭の「カラダぼろぼろ」発言以降は、ずっと強気で明るく、笑顔だった照ノ富士が、一瞬淋しそうな表情をみせた。

その表情に気付いた筆者は、満身創痍の状態にさらに塩を塗るように、嫌なことを思い出させてしまったことを小さく後悔した。
しかし、そんな私の心配をよそに、この三兄弟に悲壮感はない。決して能天気というわけではなく、力強いのだ。

兄たちは口を揃えて言った。
「あとは気持ちの問題。相撲が下手になったわけじゃないからね。良い時もあれば悪い時もあるのが人生。大関に上がるまでがちょっと早かったからね。ちゃんと今の自分を受け入れて、何をすべきかきちんと考えること。今は、自分自身が最強のライバルだよね」


場所が終わり、『元大関、幕下陥落が決定的』と報じたニュースが、『過去に例が無い』とあえて添えていた。前例なんてなくても良いじゃないか。最初のひとりになるのが照ノ富士だ。

「もう一度、三人で嬉し泣きしたいよね」
駿馬と照矢は、弟・ガナに発破をかけた。
そしてまた、三人は笑った。 (文中敬称略)

(あとがき は こちら

(本記事は、(株)宣伝会議が主催する教育講座「編集・ライター養成講座」の卒業制作として提出した記事から掲載しています)

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