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九尾狐と駆ける

2022年11月27日(日)、栃木県矢板市にて、『九尾の狐パワースポットマラソン』の第1回が開催された。
栃木県で九尾の狐といえば殺生石のある那須町のイメージが強いと思うが、この矢板市の片岡地区にも九尾の狐の伝承がある。
今回はそれに焦点を当てたイベントとのこと。
かつて九尾の狐が駆けた地を走り、そしてその九尾の狐を退治した勝善しょうぜん親王のパワーを感じるという、体験型イベントの趣が強いようで詳細なタイムは計測しないという。

ちょうどこの地域に親戚がいて馴染みのある地域であること、12kmという長すぎない距離、そして九尾の狐に関するイベントとして、この記念すべき第1回に参加することにした。

自分の体力事情

最初に自分のスペックについて話そう。
幼少の頃から運動は大の苦手、走る?そんなの息が苦しいし脇腹痛くなるし好きじゃない!そんな感じの子供だった。
運動の中でも水泳は好きでスイミングスクールに小学校中学年まで通い、刀好きが高じて中学では剣道部に所属した(スパルタ指導がしんどすぎて稽古を休みまくって3年かけてやっと1級を取れたくらいのへっぽこスキルだが)
一応、運動嫌いでもそういった活動をしたことで少しばかりの筋力と体力は培われていたようだ。

アラサーになり、「老後の健康を作るためには今から意識しなければ」と、今年夏より1日1万歩を目安に歩いたり(歩数で稼ぐポイ活の目当てもある)、スクワットを細々としたりと足腰を意識していた。
…ウォーキングもスクワットも最近はちょっとサボり気味であるが…。
ウォーキングでは平坦なアスファルトの上を1kmあたり12〜13分で歩いている。

今回のマラソンは約12kmのコースを2時間の制限時間でゴールする企画となっている。
これなら、少しの早歩きか小走りなどで1kmあたり10分以内で行けたら時間内にゴールができると考えた。
記録や順位は今回は意識しない、というよりも走りの初心者が高すぎる目標を立てられるわけもないので、とにかく時間内に無理せずにゴールすることを目指すことにした。
本来ならペースを一定に保つのが大事なのだろうが、普段走らない素人のためバラツキが出ることを前提に、早い区間や遅い区間含めて平均10分/kmで抜ける計画でいった。

当日の装備

自分は(一応)ミニマリストであり、これまでは歩くときも普段着で歩いてたため、安定して走りやすいように装備を整えた。
夏に、長パンで歩くのがだるくなって、水着としても履けるユニクロのスイムアクティブショーツを購入したため、普段着ているヘインズのビーフィーT(半袖)とそのパンツに、インナーを合わせることにした。
スマホや貴重品を安定して身につけるために、ランニングポーチも購入した。
決め手は基本的に安いもの(参加決定したのが大会の1週間前とかなので、すぐに欲しかった)であり、クオリティはもし壊れるにしても、この大会の12kmさえ走りきれれば、を割り切っていた。

プライム会員のため、Amazonで以下のものを購入した。
(ポーチに関しては購入当時セールで¥500だった)

Amazonで服、特にインナーを買うのはサイズの心配もあった(今回のは身長と体重でしか判断材料がないため)が、届いたものを着てみると大きな違和感もなく着られたため、無事だった。

靴も普段はローカットスニーカーを履いているのだが、これに関しては以前運動用に買っていた(そして眠らせていた…)無印良品の『踵の衝撃を吸収するスニーカー』(※廃盤)を履くことにした。
足を少しでも慣らすために、参加決定してから大会まではこのスニーカーを履いて生活していた。

その他の装備としては、寒さの中にいると耳が痛くなるため、昔買ったJackWolfskinのネックウォーマー(頭にも被れるのでどう表記したらいいか不明)をヘッドバンドのように身につけることにした。

当日の持ち物は、上記の格好に

  • 手拭い(ハンカチなどとして)

  • 小さめのポケットティッシュ

  • iPhone 13 mini(背面にMoftXを装着し、中に参加費¥2,000を仕込む)

  • Apple Watch 4(ワークアウトで記録をとる)

  • AirPods Pro(音楽聴く&1kmあたりの通知を得るため)

  • 九尾稲荷神社のお守り

を持っていた。
鍵などの他の貴重品は、親戚に預けることで、極限まで荷物を減らした。

九尾稲荷神社のお守りは、以前殺生石を見に行った後に訪れ授かったものになる。今回共に走ろうと思い、ポーチにくくりつけた。

力をお借りします

飲み物はマラソンとしては比較的短い距離であることや、給水ポイントがあること、飲むタイミングがうまく掴めずに調子を壊す可能性、寒い時期の開催であることなどから不要と判断し携帯しなかった。

当日の様子(主にメンタル面)

序盤(田園地帯)

さて、当日のマラソンは当初の予定より遅れて10時10分にスタートした。
飛ばしすぎないことを意識していたが、周りの走り慣れているであろう方々と共に走ると、自然とハイスピードになっている感覚もあった。
1km地点で息が上がり始め、防寒にもなるかなとつけていたマスクを外した。
2km到達する前に「なんでこんな体力でこれに参加してしまったのだろう」と、若干の後悔も湧いてきた。
序盤の田園地帯を抜け切る前に、早々と歩きも入れるスタイルになった。
コースの案内や道路を渡らせるために各地に配置されたスタッフさんの前では、なるべく駆け抜けようともするも、3kmも行く前にかなり脚の筋肉に負担がかかっていた。

そして、寒かろうと防寒対策をしっかりしたが、この日は清々しい晴れ間で、この日光による温もりが運動で火照る体をさらに熱くした。
「インナー脱ぎたい!」「足暑い!」
そう思いながらも、とにかく足だけは止めまいと前へ前へ進んだ。
スタート時点では周りに沢山の人がいたが、あっという間に人と人との感覚が開き、自分の前を走る人も豆粒のようになっていた。
後ろにはあとどれくらいいるのか。最後尾につくらしいバイクがいないことからビリではないだろうが、ビリになるのも時間の問題だろう。
それどころか、だんだんと強張り重くなる脚、苦しい息に「リタイア」という文字も頭に浮かんだ。
結局、リタイアが認められるのかは確認もしていないし不明だが、スタッフに言えばどうにかしてくれるのだろう、と考えながら走っていた。
最悪リタイアしよう。でもそれまで走れるなら遅くてもなんでもいいから踏破しよう。
そんな風に自分のハードルを下げまくりながら走っていた。
…まぁ、リタイアという選択肢を考えながらも「リタイアしたらSNSなどで発信しづらいなぁ😅」とか考えたりもしていたので、なるべく完走を目指していた。

中盤(山道)

5kmも行かないうちに、とぼとぼ歩いたり、後ろに人の気配を感じて抜かされまいと少し走ったりとペースはグダグダだった。
やっと田園地帯を抜けて山道に入っても、枯れ葉を踏む音に心地よさを感じながら、まだリタイアの可能性を考えていた。
足だけは止めまい、「前へ、前へ!」と、心を炭治郎のように奮い立たせながら、遅くとも前へ一歩一歩進んでいた。
だが、ここで疲れから咳も沢山出て、喉からは鉄の味がし、本格的な吐き気まで催した。
「吐きたい、この山道に穴ほって吐きたい。でもここだって誰かの私有地なのだろうし吐けない…」
本格的にリタイアの文字が浮かんだが、一旦立ち止まり、しゃがんで呼吸を整え、それまでなるべく控えていた徒歩を本格的に取り入れた。
考えてみれば、変に走るよりも早歩きぐらいの方が早いのではないか、タイム的にも大丈夫だったんじゃないか。
そんなことも考えながら、少し大股目に歩いていた。

前にも後ろにも人がいないので時々立ち止まって撮影したり

そんなペースで歩いていると、後ろから選手が歩いてきた。
その人はスタートからずっと歩いていたそうだ。なんだ、そういう攻略法もアリなのか、と思い、歩くことへの躊躇はなくなった。
「後ろにあと3人いますよ」
そんな風に少し会話をし、その人は自分を越していった。
具体的に立ち位置がわかると、どこか安心した自分がいた。
更に歩いていると、もう一人の選手に追い越された。この人も小走りや歩きなどで自分のペースで進んでいた。

最初の山道を抜け、石関の別荘地へ。
コースの約半分に配置された給水ポイントで飲むというより口の中にぶっかけるように水をいれ、少し心身ともに回復し、またゆっくりと小走りをしていく。
割とこの辺りは親戚の関係で見慣れており、見知ったルートで安心感もあった。
途中で追い越された選手を再び追い越し、その地を抜け再び山道へ。
だが、ここで自分は進路がわからなくなった。
基本的に道路でも田んぼ道でも山道でも、正規ルートが分かるように目印があるのだが、目の前には真っ直ぐの道と右に続く上り坂があった。
どちらへ進むべきか?
前日にコース紹介VTRを、なかなか時間が取れず確認していなかったこともあり、少し立ち止まった。
そこへ先ほど追い越した選手が来たので相談し、こっちかな、と二人で右の道を選択した。

だが、なんとなくあまり踏まれていないような道で、だんだん選択を間違えた気がしてきた。
先に方に道が見えなくなり、「こっちではないですね…」と意見も一致したので、分岐まで戻った。
危うく迷うところだった、危ない危ないと別の道へ行ったら、そちらには足跡があったため正解と判断し進んだ。

普段は街中で生活しているからか、この山道は幻想的な感覚を与えてきた。
色々吹っ切れた自分は、時々立ち止まってスマホを取り出し撮影したりもした。
そうしていくと、神社の境内へとたどり着いた。
この神社こそが今回のマラソン大会での目玉的存在である『生駒神社(勝善様)』だ。
ここで少しだけ立ち止まり、境内を眺め、ポケモンGOでポケストップを回し、再び先へ進んだ。
本当はお参りもしたかったが、時間に余裕があるわけではないし参加費以外にお金も持っていなかったため、後日改めて挨拶に向かおうと思う。

一度立ち止まって記念に撮影

終盤(ラストスパート)

ルートとしては境内の後ろから侵入し、鳥居から出ていく
初めて訪れたが、大きな鳥居だなぁ

神社を抜けると県道へ出て、再びアスファルトの上を行く。
神社の時点で残り3kmとの案内が貼られており、気づけばもう「リタイア」の文字はどこかへ消えていた。
とにかく、時間内でのゴールだけを目指していた。

途中一緒に歩いていた選手を再び追い抜き、最後はなるべく走ってみようとペースを早めた。
ここら辺までくると道案内のスタッフも「後少しですよー!」と声をかけてくれた。
「もし時間内に間に合わなかったら、次回の目標は時間内でのゴールにしよう」とか「表彰はまずされないだろうし、それなら39歳まで(今回参加した高校生〜39歳部門)に入賞できるようにしてみようか」などとか考えながら走っていた。

道にはルートを示す白い矢印が書かれているが、お散歩わんわんが踏んだようだ
可愛かったので立ち止まって撮影

そしてスタート地点でもあったゴール地点が見えてくると、スタッフさんたちがゴールテープを用意してくれてた。
よし、あそこまで走り切るぞ。
そうしてゆっくりゆっくりと走り、ゴール。

ビデオカメラを構えたスタッフさんにコメントを残し、順位票をもらって少し話してから、Apple Watchでの計測を止めた。
時間は1時間59分00秒だった。
時間内でのゴールだ。
ゴールした地点を考えれば、実際は数十秒ほど短いだろう。
なんとか、無事にゴールまでこられた。

Apple Watchのワークアウトでの結果。一応1kmごとの区間の半分くらいは10分以内に走れている。
ルートはスタート地点から反時計回りに走ったが、北西で右にちょいんと出ているのがコースを間違えたところ。基本的に心拍数が高いな😅

閉会式

順位は47位。後ろに3人いる構図は変わらないままだったので、全体で見ればやはり遅い方だろう。
だが、『時間内に』『完走できたこと』が何よりも清々しい達成感を与えていた。

順位票にゼッケン番号と苗字を記入し、また受付付近へもどる。
選手には無料で豚汁が提供されるが、走った直後で固形物が喉を通る気はしなかったので、辞退した。

そうして達成感に包まれながら表彰式が始まった。
「自分は呼ばれないかもという人も呼ばれるかもしれないので前へ来てください」そんなアナウンスを聞きながら、呼ばれる気はしないが前へ詰めた。

総合1〜3位はやはり走り慣れてそうな男性が呼ばれた。
速い人たちはどれほど早く終わったんだろうと思いながら拍手をする。
そして、クラス別の順位発表。
自分が属するクラスの1位を拍手して眺めていたら。

なんと2位で呼ばれた。

聞き間違いか?と思いながらも、壇上へ上がると自分の氏名が記された賞状が目の前にあった。
それをいただき、先に受賞してた方々のように撮影してるカメラへ賞状を写し、降りていった。
いやきっと、早かったのではなく参加人数的なもので暫定2位みたいなものではないか、と考えつつ、それでも素人がロマンだけで参加し、時間内に完走し、更に賞状までいただけた結果にホクホクしていた。

参加賞のタオル、ゼッケン"46"、完走証、賞状
〜お守りを添えて〜

九尾さま素敵でした

閉会式も終わり、参加賞を頂いてから、今回ゲストで応援に来てくださっている『九尾狐のお散歩』の九尾さまと写真を撮っていただいた。
当初は参加賞のタオルと、持参したお守りで、と考えていたのが急遽賞状まで掲げることになり、更に風も吹いていて撮影に手間取ったが、いい写真が撮れた。
九尾さまは今回初めてお目にかかったが、ふわふわな尻尾としなやかな狐らしい動きが魅力的で神々しかった。
九尾稲荷のお守りを見せながら「今回は九尾さまのお力をお借りして完走することができました、ありがとうございました」とお礼を伝えた。
どこかのタイミングで九尾稲荷神社へもご報告へ参らねば。

🦊💕
右手の小さいのは九尾稲荷神社のお守りである

さて、そんな感じで無事に帰ってきた。
いや、実際には早速の筋肉痛との戦いをしながら帰還し、速攻親戚にマッサージしてもらい、湿布を貼って筋肉を労り、翌日の本格的な筋肉痛へのおそれを抱いていた。
だが、なんとか自分でもやり切れることが判明したため、次回の開催へ向けて走れる体も作っていこうと決心した。
次回は更にタイムを縮めて行けたらと思う。
クラス別1位や総合順位への入賞は周りの参加者にも寄ったり、まさかそんないきなり速くなれるわけでもないため、まだ狙ってはいない。
だが、せめてクラス別に関しては徐々に少しづつ狙ってみたいな、とも思った。

振り返って

なお、その翌日である今日は案の定激しい筋肉痛のため、有給にしてある。
筋肉痛を抱えながら、この記事を書いていることろだ。
それにしても、本当に走るのが嫌い(そのためボールを追いかける球技などもダメ)な自分が、いきなりマラソンを始めるとは数奇なものだと思った。
しかも今回の大会は、仕事中に職場でふと目にした新聞記事で知ったのだ(自分はとっていない)
それが知っている地域での開催であること、距離も約12kmとハードルが高すぎないこと、そして九尾の狐がコンセプトということで「なんとかなるだろう」と参加を決めたのだ。
高校生の頃から自分の人生や趣味などの活動は『狼』を軸に広がっている、と感じてたことがあったが、今回はこれもまた気になる存在である『(九尾の)狐』によって新たに走る機会を与えられたと思った。
これがおそらく普遍的な健康目的やスポーツの色が強いマラソンだったら、「もう少し体力をつけたら」と見送っていたかもしれない。
実際親戚も、開催を知ってはいたが自分には無理だろうと考えて話題に出していなかったらしい。
それが、「記念すべき第1回から参加したい」と思ったのは、やはりテーマやコースが響いたというのがあるのだろう。

好評につき第2回も計画する、と閉会式でお話があったため、自分も今度はちゃんと準備をしっかりした上で参加しようと思う。
長くなったが、これにてこの記事を締めようと思おう。

九尾の狐パワースポットマラソン大会実行委員会の皆様、この度は楽しい企画をありがとうございました!


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