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寂しい病

突然、寂しくなってしまった。藪から棒に、途方もなく、寂しくなってしまった。

世界中の人がひとり残らず寂しく見える。道行く人も、歳をとった人も、若者も、幼子を連れたお母さんも、幼い人も、きれいなパンを焼いている職人さんも、本屋さんも、歯医者さんも、美容師さんも、お医者さんも、社長さんも、社員さんも、平和な国にいる人も、戦禍にいる人も、宇宙船の中の人も、沖にいる人も、頂にいる人も、谷にいる人も、木の枝に巣を作っている鳥も、お腹に卵を一杯抱えた蟷螂も、こたつ布団にくるまっている犬も、誰も彼もが寂しく見える。

寂しさを埋めるために、ご飯を食べる、お菓子を食べる、お酒を飲む、セックスをする、詩を書く、絵を描く、セーターを編む、刺繍をする、花を育てる、野菜を育てる、鳥を見る、写真を撮る、山に登る、波に乗る、彫刻する、器を焼く、本を読む、テレビを観る、喋る、旅をする、会社を経営する、働く、ピアノを弾く、踊る、コスメを買い漁る、競馬をする、パチンコをする。

やることは沢山ある。あれこれやっているうちに一生は終わる。寂しさは埋まるのか。埋まらない。埋まらないとわかっても、やっぱりなにかやり続けないといけないのか?やらずにはいられない何かを見つけてそれをやり続けてそれこそが幸せだと、寂しいまま微笑むのだ。きっとそうだ。

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