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記憶冷凍

路地裏で凍死した男の遺体が発見された。外傷はなく、警察は酔っぱらった男が道端で寝込んでしまった事故として処理をした。身元を示すモノはなく、火葬費用を節約するため遺体は大学病院に引き渡された。

遺体を引き取った教授は脳科学者で、記憶を映像として取りだす研究をしている。凍死体の脳はダメージが少ないので貴重な実験材料だ。早速、頭蓋骨を開き、脳に電極を差し込んだ。モニターに古ぼけたビルの映像が映し出される。

よし、成功だ!

男が古ぼけたビルの中の「粉雪」という店に入るとドレス姿の女が現れた。色白で手足が長い美女だ。話しているうちに女が密着し、白い胸元が大写しになる。刹那、女の口から雪のようなものが噴き出しホワイトアウトした。それが男が最後に見たものだった。

教授はしばらく茫然としていたが、何が起きたのかを理解すると体が震えだした。

警察に通報しないと……

立ち上がると息が白くなった。
何かがおかしい。体の震えは益々大きくなって、立っていられない程だ。

気配を感じ振り返ると、白いドレスを着た女が静かに笑っていた。


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