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レトルト三角関係

目を覚ますと、ベッド脇に2人の男の人が立っていた。2人ともドラマで見るようなイケメンだ。1人が私の額に手を当てる。
「きょうは顔色がいいね。どれどれ熱はないかな?」
「近過ぎ!まったく油断も隙もあったもんじゃない。きょうは俺が千尋の面倒をみるから、もう帰れ!」
「嫌だね。君に任せたら三食レトルトカレーになるのが関の山だろ」
「馬鹿にするな!ラーメンくらい作れるよ。なぁ千尋、きょうは俺と遊ぼうぜ」
「カレーにラーメンって小学生じゃあるまいし。本当にしょうがない奴だな…」

私はくすくす笑ってしまった。だって、こんなにベタな三角関係、マンガでしか見たことなかったから。首をゆっくり動かすと、部屋の隅でほほ笑む両親の姿が目に入った。

「パパ、ママ、ありがとう。学校には行けなかったから、一度でいいから大好きなマンガの主人公の気分を味わいたかったの。もう思い残すことはないわ。2人の子どもに生まれてきて本当に幸せだったよ」

両親がベッドに近付き私の手を握ると、レンタル彼氏のふたりは静かに病室を出ていった。

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