【行列のできるリモコン】のお題で、青春の香るショートショート
きょう、初めて学校をさぼった。
いつもと反対の電車に乗り、知らない駅で降りると、
そこは潮の匂いが満ちていた。
うちは祖父も父も医者で、当然 私も医者になると期待されている。
幼少の頃から塾に通わされ、県内一の進学校に入学し、
今も家と学校と塾の3か所を行き来する毎日だ。
微分積分も三角関数も、新課程の行列だってできるようになった。
でも、それに何の意味があるのか?
このままリモコンロボットのように
親が敷いたレールの上を歩くだけの人生なんて耐えられない…
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「と言ってます…」
「そんなことを…」
「今回は大事がなくて良かったですが、よく話しあってみてください」
「本当にご迷惑をおかけしました…
でも先生、私たちはあの子を思い通りにコントロールしようなんて
思ったことは一度もありません。できるはずがないじゃないですか。
ただ、いくら天才児とはもてはやされても、まだ小学校1年生です。
親が守り、導いてあげるのは当然のことじゃないでしょうか?」
「う~ん。頭が良すぎるっていうのも困ったもんですね…」