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お返し断捨離

職場に大きな箱が届いた。半年前、何も言わずに姿を消した麻友子からだ。
中には映画の半券やアルバム、衣類などが丁寧に仕分けて詰められていて、
一番上にピンク色の封筒が。彼女からの手紙だった。

「突然こんなモノを送り付けてごめんなさい。
 あなたのもとを去ってからも、
 私はあなたにもらったモノに囲まれて暮らしてきました。
 キリンが逆立ちしたピアス、ユニオンジャックのランニング、
 丸いレンズのサングラス、オレンジ色のハイヒール…
 どれも素敵な思い出で、これらを身に着けているだけで幸せでした。
 でも、あなたには彼女がいる。大好きだけど、もう、終わりにしないと。
 この半年間、毎日1個ずつお別れをして箱に詰めてきました。
 やっと断捨離できたので、全てお返しします」

辛い思いをさせたのだな…私は目頭が熱くなった。
箱から思い出の品を1つずつ取り出していくと、
一番底から、見覚えのないブリキ缶が出てきた。
微かに異臭が漂う。

恐る恐る蓋を開けると、
へその緒が付いたままの赤ん坊が横たわっていた。


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