たったそれだけで


この話は抽象的過ぎて所謂””厨二病””と言われるかも。
それでもいいよって人こんにちわ





私はついこの間まで地獄で勤務していた。

地獄は暗くて日の光は霧のように頼りないものだった。

働けば働くほど目が死んでいき光を求めることもなくなっていった。

おもいきって職場を辞めるという判断は無く、ただ屍みたいに働いていた。

そんな時この地獄に蜘蛛の糸が垂らされた。





蜘蛛の糸という話を聞いたことはあるだろうか?

ある男が現世で非人道的なことを繰り返したことが災いし、死後は地獄に落ちた。しかし、そんな男でも現世で一つだけ良い行いをした。それは火災に巻き込まれそうになっていた蜘蛛を助けたこと。

そのことを知っていた神は地獄に落ちた彼に一度だけ救いを与えようと考え、天国から地獄へ蜘蛛の糸を垂らしたのである。

蜘蛛の糸を見つけた男は必死に登った。この先に天国がある、何としてでもこの頼りない糸を離すまいと。

しかしそんなにうまい事行くはずもなく蜘蛛の糸に気づいた他の人たちも一斉に登り始めた。

重さに耐えきれず千切れた糸、落ちていく男。

その光景を見た神は人間の醜さを嘆く、そんなお話。



私の地獄にも蜘蛛の糸が垂らされたんだ。

登る気などさらさら無かった。物語のようになるかもしれない、何も変わるわけがない。

そう思っていたのに何度も私のもとに糸を垂らしてきた。意地悪い神だと思った。物語では千切れるじゃないか。期待ばっかさせて。

そう思っていたのに私がつかんだ蜘蛛の糸は触れた瞬間、ロープのように太くなり凄い勢いで引き上げられた。疑心暗鬼と少しの期待で爆発してしまいそうだ、奈落の底に突き落とされでもすればすべてを諦められるのに。

意地悪い神は見放すことなく私を引き上げ続けた。

「地獄にいたんだ、現世で生きていきたいなんて無理な話だろう?私は何もない。何にもないんだ。」

そう引き上げている神に問いかけると

「君がそう思うなら帰ればいい。とてつもない覚悟が必要だ、中途半端な覚悟じゃ何も得られない。だけどね、何か一つ決断したとき不思議と追い風が吹いてくる。さぁ君はどうしたい?」


本当に意地悪だ。誰かを信じる力などもうないし未来を夢見ることもできない私にそんなこと聞かれたって。

だからここで終わらそうと思いその作戦に乗った。どうせ裏切るでしょ?知ってるよ。これが最後。ダメなら死んでしまえばいい、すべてを投げ出せばいい。世の中が悪いと人のせいにして身投げでもしよう。



そう思ったのに私は今日も生きている。

あの日最後の力でした決断は今日この日まで私を生かしている。

追い風も吹いた、時には足がもつれて動けなかった。それでもあの日私に決断させてくれた神は私を見放さなかった。


皮肉と敬愛をこめていつも言う言葉がある

「あなたが居なければ死ねたのに!!生かしてくれてありがとう!!」




あの日から本当の私の人生がスタートした




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