職業倫理欠如がもたらす弊害とその主な弊害に対する対策
昨日、専らセコム依頼の銀行・ATM警備の仕事を担当する隊員に対する現任教育が行われ、自分も出席した。
その現任教育のテーマは隊員のモラル・意識といった職業倫理に関するものだった。
隊員が職業倫理の欠如により、いいかげんな気持ちで仕事をすればその人に悪意はなくとも法令違反に至ることもある。こういったコンプライアンス違反は顧客の生命・身体・財産を守るとともに社会の治安維持に貢献する事が要請されている警備員にとっては致命的な信用失墜であり、最悪の場合、警備会社の倒産原因にもなりうる。つまり、警備にとって最大のリスクの1つは法令違反であり、そうならないための手段として職業倫理の改善といった問題が存するともいえる。
では職業倫理の改善による手段とは違う手段で法令違反というリスクを防止すればよいのでは?という意見もあるが、特に一人現場の場合はいくら他の防止策を講じても監視する人間がいない以上は完全に防止することは極めて難しい。やはり法令違反を考える上で職業倫理の問題を避けて通ることはできないのである。
ただ職業倫理は隊員の内面に関わる事柄である以上、その改善というのはなかなか難しい。極端な話、幼稚園や小学校低学年の時教わったような道徳教育を一から教え直すぐらいのことをしないとモラルのある隊員を養成することは不可能だろう。
でもそんな時間もないし、そんなことをすれば隊員のプライドを傷つけ、かえって仕事に対するやる気を奪ってしまうことにもなりかねない。
ではどうするか。一応現任教育で職業倫理について教育することはすべきであるが、その場合においても隊員の人格を尊重するように配慮する必要があるだろう。それとともに警備員の個人的な資質に依存しない形で法令違反に対応するため、取引先の実情に応じた効果的なマニュアル作りや、特に1人現場の多い部門については日々の法令遵守もふくめた業務上の疑問点を解消するためのミーティング等の隊員同士で話し合える場を設ける体制作りを今以上に推進すべきだろう。それらの対策と併せ、抜き打ち的に現場を視察してその仕事ぶりをみることも必要だろう。
それとともに1人の隊員を1つの現場に配置しつづけることは取引先現場の職員との慣れ合いが生じる恐れがある。そのことが緊張感の欠如という職務遂行を生み出すことにつながる。よって定期的な配置換えを行う必要があると考える。
そこまでしてもやってしまう隊員もいる。そういった隊員の方についても事後的に再発防止のための報告書の提出及び、個別面談・教育も必要になりうる。
しかしいくら上記の諸対策を行ってもその対象となる隊員に最低限必要となる資質がなければ意味がない。
その資質とはなにか。それは組織の一員として異論があったとしてもとりあえずは会社の方針に従ってくれる忠実さと自身の行いや失敗を素直に受け止める謙虚さである。会社の方針も自分の考えに合わないからといって勝手に判断して無視したり、何かやらかしてもすべて他人のせいにしてしまう方にいくら上記の対策の実行協力をお頼みしても無意味だろう。これは採用の段階で見なければならない点だと思われる。
そう考えるとこの職業倫理という問題はそれ自体よりもその欠如によってもたらされる法令違反等の弊害の方が問題であり、そのための対策は採用段階まで含む多岐にわたる問題であることが伺われる。
個人の意識と信用失墜が直接つながるところはサービス業の難しさである。
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