空海から学ぶ警備の現場思考と業務マニュアルとの関係

1. 長安で正統的な密教の伝授を受けた空海の弟子入りをした最澄。

しかし、彼は自分の弟子を送って、真言密教の教典の転写をしようとするばかりで、自ら教えを請いに来ない。

そんな最澄に対し、空海は密教を本当の意味で体得するには教典の転写ではなく自ら師匠の教えを請いに来て3年は修行しなければならない旨のことを最澄に抗議する。

大乗仏教の知識の体系化を使命とする最澄と教義を伝授するには頭の理解よりもむしろ、体全体で体得することが必要とする空海。 

司馬遼太郎著「空海の風景」の一場面である。

2.(1) この日本仏教を作った代表的な2人の知識に対するスタンスはそのまま、今の日本の教育に関するスタンスにも現れている。

すなわち、数値化し、文章化したマニュアルを主体とした形式知を重視した教育と、OJTを活用して、現場での教育係の指導によって、自ら業務を経験することで、体で覚えていく暗黙知を重視した教育、である。

日本を代表する経営学者の野中郁次郎曰く、日本人はどちらかというと、暗黙知を重視する人が多いとのこと。

(2) そういう意味では多くの日本人は空海の考え方の方に共感を覚えるのではないか。

確かに、頭だけで、業務の流れを掴んでも、実際、現場で起きることに十分に対処することは難しい。

特に自社が生業としている警備業は、なかなか教科書通りにことが進まないのが実情。
なので現場で対処していくことを経験していただくことで知識を体得していただくことを大切にしている。それが応用力の育成につながると思うし。

しかし、そんな自社でも部門にもよるが、マニュアルを用意している。また、年2回の現任教育では、警備検定2級のテキストを使用して、教授するスタンスをとっている部門もある。

これは現場で磨く暗黙知だけでは、指導係のレベルに大きく影響され、知識に偏りが出たり、一人よがりによるサービスのばらつきが生じてしまう。また、サービスのスピードや正確さを担保するため、マニュアルの存在は必要。

また公的に認められた許可書を使って、一般的なやり方や体系的知識を定期的にチャックすることで、暗黙知で欠ける部分をフォローするやり方をとっている。

(3) 暗黙知をメインとし、形式知で足りない所をフォローする。

晩年の空海も補充的に形式知的なスタンスを取り入れる必要性に言及していたと司馬遼太郎氏は上記著書の中でいう。

3. ただ、今の若い人はマニュアルを重視する傾向という。実際、少し辞めたウチで働いていた若い子はそんな感じだった。

とすると、教え方に関しても、20代とそれ以外で若干教え方を変えていく事も検討した方がよいのかもしれない。

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