いいものでハレなくなった時代に
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阪神百貨店の元会長の三枝輝行氏曰く、服以外で百貨店の収益部門を作る際、着目したものは祭りだったと。
なぜ、普段財布の紐の固い庶民が祭りの日にはその紐を弛めて3,4百円もするドリンクや場合によってはもっとする焼きリンゴなどのお菓子を喜んで買っていくのか。
それは普段の日と違うハレの場が醸す空気がそうさせるのだと。
だったら百貨店のワンフロアにその空気を持ってくればいい。
そのためには、百貨店に行けば近所では食べられない美味しいものがある、というハレの空気を根拠付けるものがなければならない。
そうして全国の有名店を駆けずり回って呼び込んでできたのが、みなさんにもお馴染みのデパ地下だと三枝氏は講演でおっしゃっていた。
つまり、お客様の財布の紐を弛めて、モノを高く買ってもらうにはハレの空気を作る必要がある。そのためにはいいものを作るか集めないといけないと。
2(1)
でも最近いいものを作ったり集めるだけでは人は財布の紐をゆるめなくなってきている。
A
一つは社会の成熟化により、物質的な豊かさが当たり前になってきたことが挙げられる。
例えばステーキ。
豊かな社会の申し子である団塊ジュニアの中でも比較的裕福な中流家庭で育った自分ですら、小さい頃はステーキはそう簡単に食べられない高価な食べ物だという認識だった。
何だかんだ言ってもステーキはビフテキ(死語笑)だった。
それが今やいきなりステーキの台頭に引っ張られる形で全国に千円代で食えるステーキが増え、ついには松屋がサラダ付200グラム1000円の格安ステーキ店を立ち上げるに至った。
ステーキもビフテキからちょっと高い日常のお肉料理にまで下がってしまった。
もはやハレの食べ物じゃなくなった。
B
もう一つはコンビニの普及。
コンビニのクオリティは凄い。
あらゆるジャンルの食べ物やあの狭い空間の中で完結する。しかも質が高い。
飲食・小売のスマホ化。
それにより小売・飲食が破壊されてきた。
例えばコンビニスィーツ。誰が一昔前、誰がローソンとゴディバのコラボを予想できたたろうか。
(そらモンブランも潰れるわ。)
以上のようにもはや質の高さは日常化し、ハレの条件でなくなった。
そしてこの現象は小売・飲食だけでなく、警備を含めあらゆるジャンルで起きていることだと思う。
(2)
ではこの社会はもはやハレることはないのか。
それはないと思う。
人が人である以上、どこかしらで満たされない感情を抱いている。
昔はそれはいいモノや食べ物だった。
今は繋がりや参加、熱気といったライブ感なんじゃないかと思う。
例えば個人店のカウンターで料理人がひた向きに調理をしているのをみるとワクワク感が出てくる。
これはマックや吉牛では味わえない感覚。
モノ自体の消費だけでなく、その作られるプロセスも消費する、そんな時代になったのだと思う。
その際のキーワードはひた向きさとガラス張りだと思う。
自分の属する警備業にしても警備自体の提供だけでなく、ウチでどんな教育やミーティングがされているのか、それを一生懸命行う隊員はどういったスキルや心構えをもつにいたるのかをガラス張りにしてみなさんに見ていただく。
そのためにSNSを活用する。
もちろん、顧客の秘密保持との関係にも考慮する必要はあるだろう。
でも、やることやればいつか分かってくれるという時代はもう終わった。
今やそのやることをきちんとやるプロセスを大切にしながら、それをガラス張りにしてみなさんに見せていく時代。
そういう時代にあった経営を今後さらに心がけたいと思う。
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