偏見と向き合い、科学する

1. 経営者も人である以上、経営判断を行う際は、何らかの偏見に左右される場合はあると思う。

ただ、その場合にそれをそれと認識できるようにしておくことが「現実を踏まえた企業理念に基づく経営判断」という自分が理想とする経営判断ができることに繋がると思う。

そのためにはまず、こういった経営場面を含む日常生活で問題となりそうな偏見、つまり認知バイアスのことを大まかにでも知っておく必要があろうかと思う。

2. 認知バイアスとは認知心理学・社会心理学上の用語で、人の心理から生じる日常生活上の不合理な選択のことをいう。

そのパターンは無数にあるのですべて挙げるのは不可能だが、代表的な類型としては

①最初に印象に残った数字やものが、その後の判断に影響を残すアンカリング効果

②世の中で流行しているというだけで、その流行物への価値を高めてしまうバンドワゴン効果

③自分に都合のいい情報だけあつめる確証バイアス

④他人や物を評価する場合、自分が期待する行動ばかりに目が行き、それ以外の行動に注意が向かなくなる観察者バイアス

⑤自分が所属する集団を他の集団よりも高く評価する内集団バイアス

⑥他人も自分と同じ考えや同じ知識を持っていると思う偽の合意効果

⑦半沢直樹の上司のごとく成功の原因は自分にあると思い、失敗の原因を他人や環境など自分が制御できないことにあると考える自己奉仕バイアス

⑧利益と損失が同額である場合、利益で受ける効用よりも、損失から受ける苦痛の方がはるかに大きく感じる損失回避

⑨他人や物の価値を、一部の目立つ特徴によって決めてしまうハロー効果

⑩説明や質問のされ方によって、選択の結果が変わるフレーミング効果

⑪物事の結果を知ってから、それが予想可能だったと考える傾向がある後知恵バイアス

⑫誰にでもあてはまる一般的なことを、自分だけあてはまると錯覚するバーナム効果

⑬他人の考えや思想に影響をうけ、自分の判断や行動を決定する傾向のある社会的証明

⑭立場を明確にすると、必要以上にその立場に矛盾のない言動をとろうとしてしまうコミットメントと一貫性

⑮科学者や専門家など、権威あるものからの情報を信じやすく、その要請にも影響されやすい権威主義

といったものがある。

3. こんなこと言うと多くの人の日常生活のほとんどは認知バイアスに基づいた言動をおこなっていると思う。

でも経営者は取引先や従業員や金融機関等のたくさんの利害関係者と関わっている以上、そういった偏見を自覚していないと誤った判断により、多くの方に迷惑をかけてしまう可能性があることを知っておかなければならないと思う。

大切なのは企業理念というゴールを認識し、その実現のために必要な現実の客観視をし、物事の優先順位を決める。その上で主体性をもって経営判断を行う事。

それさえしっかりしていれば、上記のバイアスに対して適切に対処できるのではないかと思うのである。


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