急がば回れ
とある重要取引先との契約更新がほぼ確定となった。
社長就任後、明石営業所を軌道に乗せる事に引き続いての大きな仕事。
契約条件等についての交渉はこれからなので何とも言えない部分はあるものの弊社、先方ともベストとは程遠いがベターな結論になりそうだ。 美しい均衡点。こんなに順調にいくことは珍しい。
勝因はいくつか考えられる。
まず隊長の先方に対する働きかけ。
今回は特に隊長にはよく働いていただいた。業務の枠を超えて営業的な働きをしていただいたおかげで終始こちらのペースで勝負することができた。戦術面での功績は大きいと評価できる。
また会社の方針を現場の隊員が実行してくれたことが大きい。
例えば先方の仕様書に資格要件があるが、これは常々会社側が隊員に対して警備検定取得を奨励し、その現場の主要隊員に資格を取ってもらったこともあり、かなりウチに有利に働いた。
そのメンバーの中には自分と一緒に資格をとった方もいらっしゃる。
中には複数回落ちながら取得された方もいる。
その一方、ライバルの安売り会社は検定受験料が高いので当然隊員に受験等させるはずもない。
結果、その会社はその要件に対応できず、競争から降りざるをえなくなり、うちの勝利が決まった形となった。
確かにウチのような小さな会社にとって検定料はバカにならないほど高いし、警備検定受験のお願いに対し、隊員の中には心ない批判の声もあったことは事実。
にも関わらず、会長や自分は資格奨励にこだわった。
それは真っ当な会社でありたかったから。
頑張ってくれている隊員に国家公認の業界資格一つまともに取らせない会社なんてまともであるはずがないと思っていたから。
それに限らず隊員には先方の要望に応え続けるため、日常業務について警備員を超える働きをしていただいた(ここまで頑張ってくれている隊員に対して会社として何とか報いて上げたいという思いが固定給、警備マイスター制度の制定に繋がったこともまた事実)。
この姿勢が隊員の頑張りにつながり、結果として先方に評価された。
そう考えると戦う前からだいたい8割方勝つことは決まっていたと思う。
価格設定はいままで積み上げてきた会社・隊員の頑張りを信じた上で先方の事情を加味して根拠付けを行い、算定すればよかった。
だから今回の契約更新はあるプロ意識のある警備隊の隊長・隊員全員で掴み取ったものであり、自分は経営者として求められるパズルの最後の一片をはめ込み完成させるという補完仕事をこなしたにすぎない。
以上が自分が考える勝因であるが、特に今回の契約更新で自分は大切なことを学んだ。
それは真っ当なお客様に相手にされたければ真っ当なことを日頃からすべきであるということ、つまり誠実であるべきということ。
その裏付けがあって初めて営業なり広告といったテクニックがビジネスになるのであり、それがなければ一種の「詐欺」。
「詐欺」する会社にまともなお客様は相手しない。
まともなお客様に相手にされない会社は長続きしないだろう。
急がば回れ。地味だが確実な積み重ねが大切だと教えられた気がする。
とはいえ、冒頭にもふれたようにこんなに綺麗な契約更新は珍しい。
きっとこれが神様なりの社長就任祝いなのだろう。こんな幸運はあまりないと思う。
この先、従業員を守るため、先方に対して無茶な要求をしたり、仕事を繋ぐため、従業員を苦しめざるをえなくなることもありうると思う。
そのことでひょっとしたら鬼呼ばわり、さらにはブラック呼ばわりされ、嫌われることもあるかもしれない。
それでもそんな時にも本当にお客様、従業員の利益とは何なのかを意識し、今回の得た教訓を大切にしながら社長として隊員が日々の職務に専念出来る環境をきちんと作って行こうと思う。
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