獺祭に学ぶ

1. 昨夜、獺祭で有名な旭酒造の社長をされている桜井博志著「逆転経営」を読破した。

地元山口でも負け組扱いされていた小さな会社を継ぎ、日本酒業界に新風を巻き起こした桜井社長の奮闘記である。

この本を読んで感じたのはゼロ・ベース思考の大切さである。

ゼロベース思考とは今もっている常識や思い込みをゼロにして基礎がない状態から物事を考えること、である。

桜井社長はこの著書の中で継いだ会社が廃業寸前まで追い込まれていたからこそ、今まで常識とされてきたやり方や慣習を根本的に考え直し、改革できた旨のことをおっしゃっている。

(やはり、人は追い込まれないと思い切ったことができないのか。)

2. その中で個人的にすごいと思った桜井社長のゼロベース思考とそれに基づく行動は2つある。

すなわち①選択と集中、と②合理的で安定した生産体制。

以下それぞれについて述べた上で自社や自社の属する警備業について検討する。

(1) ①について

A 桜井社長は日本酒が下火だった時代、ワインテイストな日本酒だと受けるだろうということで試飲会にワイン酵母を使った日本酒を出展した。

それなりに好評だったが、ある女性の「これだったらワインを直接飲んだほうがいい」旨の発言にショックを受ける。

日本酒なのに洋酒テイストじゃしょせん本物には敵わないと感じた桜井社長はこれによって日本酒らしさを追求する覚悟を決める。

その上でターゲットを中小零細のメーカーが避けていた純米大吟醸に絞って、一点突破を図り、獺祭を生み出し、成功した。

B  警備という仕事は差別化がしにくい。だから付帯業務で他の業者に差をつけようとする。

例えば警備員のわりに事務補助作業の出来るだとか、警備員のわりに簡単な接客のできる、みたいな。

でもその程度じゃ本職の事務の方や番頭・仲居さんに敵わない。

結果、誰でもできる仕事とみなされ、少し景気が悪くなると価格競争に巻き込まれる可能性が高まる。

お金をいただきたいならそれらの業務も本職以上のレベルに持っていくべきだと思う。それと本職の警備も究めて本当の二刀流でいく。

しかし、会社として警備員にそれを幅広くさせるのはいろんな意味でキツい。

結局、例えば、旅館なり、病院といった特定の施設の業務と警備業といったふうに市場を細分化してターゲットを絞り、そこに経営資源を集中していくやり方が一番お金をいただく近道だったりするのではないか。

それも難しいなら職種を変えることも検討しなければならない。

(2)②について

A  次に桜社長は日本酒業界では常識とされる杜氏と呼ばれる醸造作業に頼るやり方をやめて機械化とマニュアル化と数値化を徹底させて醸造作業の出来る正社員を増やして年間を通じて日本酒を生産できる「四季醸造」体制を可能にした。

これによって財務が安定するので、いろんな計画が立てやすくなる。

もちろん、この体制を維持するためには売り上げを上げる必要がある。

ただ、これが軌道に乗れば、質の高いお酒の大量生産も可能になり、従業員の管理レベルも上がるので、一気に企業規模が拡大する。

今の旭酒造の隆盛はこういったところにあるのではないかと思う。

B  自社も施設警備の仕事を増やすなどして、年間仕事の比率を増やして財務の安定を考えたり、ミーティング等を活用して業務のマニュアル化を進めている。
その結果、ある程度経営が安定してきている。
ただ、人的警備という業務形態に限界を感じている。

やはり、隊員がどれだけいいパフォーマンスをしても1人あたりいくらでは売り上げはなかなか伸びない。

既存の機械警備も市場飽和状態で行き詰まりを見せる中、今後のロボット化、AI化で警備業界がどれくらい変わっていくのか。

変わるとして費用対効果の問題はどうなるのか。
この流れに乗れる業者だけが今後生き残っていけると思う。

3. これからは警備業者も業界の常識に囚われていてはジリ貧になることが目に見えている。

今こそ、業界の常識を徹底的に疑い、思い切った改革をしてきた旭酒造さんを見習うべきではないかと思うのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?