セクショナリズムの弊害を防ぐには

1.(1)昨夜から大鹿靖明著「東芝の悲劇」を読みはじめた。仕事終わりがまた楽しみだ。

この本はバブル期から今までの時代背景や歴代社長・役員の経歴や資質に触れながらバイセル取引等を利用した粉飾操作、無謀なウエスチングハウスの買収を振り返り、東芝の経営基盤を揺るがす大赤字に至った原因を考える良書。

その原因についていくつか言及されているが、組織形態が不正を誘発したという点が個人的にしっくりきた。

(2)東芝は社内カンパニー制という組織形態を採用している。

社内カンパニー制とは1994年にソニーが採用して始まった制度で、同じ会社内で、例えば家電、原発、パソコンといった事業分野ごとに、ヒト・モノ・カネといった経営資源を分配し、各事業分野ごとに独立採算制度をおく組織形態のことをいう。

A  この組織形態のメリットとしては、

①事業部ごとに目標が設定されるので結果責任が明確になる。
②事業部ごとに予算が割り当てられるため、市場の変化に対応しやすい、

ということが挙げられる。

B  しかし、そのデメリットとしては

①結果責任の明確化の反面、目標数値を意地でも達成しようと、組織ぐるみでの粉飾といった不正が行われやすい。
②また、事業部ごとに分かれるため、セクショナリズムが横行して、事業部間の協力体制が築かれにくい、

ということが挙げられる。


2. (1)東芝の場合、「チャレンジ」という数値目標が悪く作用して、粉飾や無理な買収が誘発されたことが今日の大赤字に繋がった。
そういう意味では直接の原因はデメリット①だと思われる。

(2)でも本当に問題なのは、むしろデメリット②のセクショナリズムの横行だと思う。

部門内の仲間意識やプライドが他部門への対抗意識に変わる。
それがよく作用すれば互いが切磋琢磨して高め合うことにつながる。
でもそれが悪く作用すれば、他部門に勝つための不正な数値操作が行われる。

後者の場合、部門間の協力体制が築かれることなく、それがイノベーションの阻害に繋がる。

例えば同じく社内カンパニー制を採用したソニーの場合は、スマホのアイデアもあり、開発も可能だったのに、このセクショナリズムのため、部門間の提携が進まず、当時のジョブズ率いるアップルに先を越されてしまった。

大きな組織を運営するには現場に近い事業部が機能する仕組みを作る必要からこういった形態が採用されたのだと思う。

でもイノベーションは異質なもの同士の融合から起こることを考えると、このセクショナリズムの弊害を乗り越えなければ、イノベーションを起こすのは厳しいと思う。

この状況を克服するには、例えば新製品開発の場面ではプロジェクトチームを組む等して横断的なつながりを作っていく必要があると思う。


3. 自社は東芝やソニーと比べるのも失礼なほどに小さな会社だが、こんな小さな会社ですら、セクショナリズムによる仲間意識なりプライドは存在する。

この背景には人より上に思われたいという本能があるのだろう。自分も含め、人である以上こういった愚かな感情と向き合った上で、性悪説的な部分も考慮した仕組みも考えていかないといけない。


人手を補うという、実際的な理由がメインだが、セクショナリズムの弊害を防ぐために隊員に違う部門の現場にいっている。

複数の現場を見てもらうことで、視野の広い、柔軟性のある隊員を育てていければと考える。


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