高知県土佐市の一件はあくまで一例 "普遍的"に起こり得るもの

※あくまで自分のためのメモですので、内容に期待しないで下さい。
私は民俗学的な手法を学んで、各地で聴き取りを行い、それを漫画に活かそうと考えて、各地の諸問題などを取材しているという、いわば変わり者です。各地にも同様の問題があり、その問題解決に対する手法などを学んできておりますが、基本的には素人の意見でしかありません。

本稿は、本件に関しての、あくまで個人的な経験からくる感想と、一部はその対策についてとなりますが、参考になると幸いです。

■事件の概要

のちにあらためて確認できるよう、事件のあらましを記しておきます。読み飛ばし推奨です。

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東京から高知県の土佐市に移住した女性店長が地元の有力者に従わなかったために追い出されそうになり、漫画であらましを伝えたツイートで告発した。移住者は地元食材を使ったカフェを開業し成功させたが、80歳のNPO法人の理事長から恫喝やセクハラを受けたと主張している。

店長は市の担当者に相談したが、市も理事長の影響力があり何もできない状況だという。しかし市の担当は、そのような相談は受けていないとのこと。
市と理事長は退去を迫っており、理事長の知人の飲食店が入居する予定になっている。

この事件は地域おこし協力隊の一部であり、国の制度で税金を使った国の事業である。これは、移住者が地域の活性化を支援する取り組みの一環であり、各地方も無関係とはいえない問題である。また、地方移住の難しさも浮き彫りになっており、特定地域だけ人口増加を図ることは容易ではなく、時間をかけて我慢強く推進していく必要性が指摘されている。

以後、同市による聴き取り調査が行われるも、NPO法人の理事長は「不信感がある」などとし、両者は真っ向から対立している。
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-2023年5月18日時点での各社の記事より-

以上となります。

■感想と対策の提案

本件について、発端はセクハラや暴言などを繰り返していた"土佐市の有力者"、つまりNPO法人の理事にあると考えたくもなるものです。
しかし、民事・刑事共に、各々の事件を個別に考えることが公平な見かたと言えるでしょう。
そのため、個別的に、なるべくこの事件についてのみ考えていきたいと存じます。

さて、問題のツイートですが、私には移住者カフェ側にまったく何の問題もなかったようには見えませんでした。

まず、Twitterの傾向から、対象となるNPO理事長の個人名が不明なため、また読み手は自分に引きつけて考える傾向があるため、"土佐市の有力者"などと略した表現を行うと、"土佐市"と規模感を大きくした言い方を多くのユーザーがしてしまいますし、実際にそのようになっております。
あの漫画の存在そのものが【当地の人達が困る原因になっている】のです。

次に、当地の人たちも「田舎ってどこもこうなんですか?」などと言われるのは極めて【外部の人間の意見】だと感じられるはずだと考えられます。
移住者カフェ側に味方意識を持つ方々には配慮不足となりますし、土佐市民にとっては不本意なはずであると考えられ、しばしば全方位的に配慮に欠けている面が散見されるのです。
※対策としては、"NPO理事長A氏"のような仮名を付けることかと存じます。これなら短縮しても"NPO理事長"となります。

続いて、結ばれている契約についてですが、借家借家法に基づくテナントでも、民法の賃貸借でもないようです。
行政手続きに基づいて占用許可を取ってるというもので、そこに料金が発生しているだけと言えるはずです。
一般的なテナントの契約ではないものの、こうした契約は割とあるようで、特殊なケースとは言いがたいでしょう。
NPO法人の理事長の日頃の行いや、本件について臨む姿勢はともかく、行政手続き上において不備がなければ、自治体は、この契約に準じて対応するしかない可能性が高いです。

次に拡散についてですが、例えば迷惑系インフルエンサーなどの影がなければ、移住者カフェ側をフォローしてるのは当地の人ばかりのようなので、拡散は彼らがまずは行ったということになると考えられます。
つまり、【拡散したのは当地の人達であり、彼らに読解力が不足していて、あまり読まずか考えずに、勢いで義侠心から拡散してしまった】ということになってしまいます。
そんなことがあるのだろうか?そう考えた私は、迷惑系が関連ツイートをしたタイミングを調べてみました。すると、かなり早い段階でツイートされており、どうにもきな臭い。
もちろん依頼か、迷惑系が異常なほどに情報通か、はたまたどこかの誰かが報せたかなどは、短時間に爆発的に拡散されてしまったために、調査依頼でも出されない限りは確定しようもないでしょう。
しかし、【移住者カフェ側が市にまったく問い合わせていない】という情報を信用するとするならば、正規ルートを試す前に迷惑系の力を借りるような人物像に見えてしまいました。
また、市が圧力を受けて記録を消去したというケースを想定するならば、NPO法人の理事長は情報戦にもっと長けているはずですので、これは握りつぶされたと考えるのは無理があるでしょう。

これらにより、結果として、市を巻き込んで炎上させる気満々で、あの漫画が出されているように読み取れてしまうのです。懐疑的に捉えられてしまうのも無理はありません。

以上のことから、件の漫画の文面は、悪影響の範囲が大きすぎるようにあらかじめ設定されており、毒を撒き散らす気満々、むしろ炎上商法的に読み取れてしまいました。
言葉を、そして手段を選んでいないように見えるのです。これは実際に、世論にも多大な影響を与えているポイントとなっているようです。

また、文字ツイートではなく、計画的に漫画が制作されており、情動的とはいえないでしょう。私は漫画を描きますが、少なくとも制作に2週間近くかかるものと考えられます。

■感想まとめ

以上のことから、対立する原因が双方にある可能性が読み取れ、どちらにも加担するのは危険だ、というふうに見えてしまいました。
この時点での結論としては、方々で言われている通りのつまらない内容になっていますが、大事なのは「内訳」であると考えたため、これを記しました。

土佐市民の方々におかれましては、例の漫画のものの言い方に問題があったにせよ、事実であるならば、NPO理事に謝罪と是正をさせるよう、向き合わなければならないということになるかと存じます。
また、妥当な反論だとしても、感情的に行うと、今はむしろ風当たりが強くなるでしょう。冷静な判断をお薦めします。

移住者カフェの方々については、「SNSの力」の結果がこのような評価となり、ひいては爆破予告になってしまっています。
戦うと決めたことは否定しません。しかし戦う方としては多くの他者を巻き込むものである以上、手段はより選ばれなければならなかったように存じます。

そして、NPO法人の理事長についてですが、個別に考えないようにすると悪い噂が立ったり、強い言葉を使われるなりの条件が揃いすぎていますし、移住者カフェ側が強硬な姿勢を取る根拠が、この人物の今までの行いにあった可能性が高いことは否めません。
事実であれば、当人にこれを求めても仕方がないので、おそらく外圧によって退陣を迫られることとなるでしょうが、いわゆる各地の有力者についても、こうした劇薬を使われないよう改めていただきたいものです。
募らせている「不信感」(高知新聞にて発言の記録あり)についても、年齢を重ねると人を信用するための脳機能が衰え、また未来を見据える理由も薄れていきますので、難しい面もあるかと存じます。しかしそれでも、ものには言い方というものがあるはずです。

■終わりに

こうした「情報戦」において、双方に悪手が散見されました。一般化できる教訓としては、被害者だからと何をしてもよいという考え方は、極めて危険だと学ばせていただきました。
やられたからやり返す気持ちも分からなくはないのですが、やられたことを倍返しするとか、手段を選ばないと、その戦力となる民衆に味方してもらえないのだな、と学ばせていただきました。

━━私が大好きな田舎。しかし本件は、田舎だけの問題とは言いきれない内容であり、どこで起きてもおかしくないものと言えるものでしょう。それが今回、たまたま土佐市で発生した、くらいに考えた方が妥当かと存じます。
また、土佐市だから発生した、というような考え方は極めてバイアス(偏り)が効いている考え方だと考えられます。

また、「田舎だから」という場合、それは恩や縁の結びつきの強さによるもので、必ずしも悪く働くものとは言えないものです。また、そうしたものを求めて移住する方も必ずおられます。
そのため、慎重な判断が求められるものであるはずです。

両者、そして無関係な土佐市民が負わなくてよい傷を負っています。また、無責任に傷を負わせている人も見受けられます。
怒りを正しく運用していただき、早期解決されることを望みます。


■追記


SNSで大炎上の土佐市移住者カフェ、現地で起こっている事の総括と問題点(ヨッピー) | Yahoo!ニュース

https://news.yahoo.co.jp/byline/yoppy/20230524-00350545

関心がある方にはぜひ読んでいただきたい秀逸な記事でした。
成因から経緯、それに起因する契約やその理解、各々の立場からの目的と手段、そして責任の所存が網羅されていました。

まず結論から申し上げると、恩と縁を加味する範囲設定が狂っていることがムラ社会的と言われる特徴の1つなので、残念ながら土佐市の問題に関わった人々は、ムラ社会的と評さざるを得ないでしょう。
また、それがあるからこそ、一方的な決定が覆せなかったともいえるため、構造的な欠陥が浮き彫りになっています。

次に、公文書偽造および偽証という明らかな不正があり、それが通った背景について情状を加味するならば、市担当者は「信用した」ともいえるでしょうけど、安定を選んで戦ってこなかったのは否めません。
事実、人の話を鵜呑みにして確認されていなかったという事が事態を悪化させた要因となっているといえるため、防げない事態ではなかったと言えてしまうからです。
登場人物が皆して事実関係を確認するとかそういった行動が足らず、やり取りを録音もしていません。これは実態不明なセクハラについてもいえることで、具体性に欠ける印象は否めません。
そうした助言をする人物もまたいなかったことが窺え、少なくとも事件の関係者については客観性を欠いた上に対策も取れていないという見かたもまた避けられないでしょう。

次に、私のいる関東での実体験に基づく話ですが、対地域系のNPOは少し関わった程度で派閥が割れているという話がよく出てくるし、「よそもそんな感じだとよく伝え聞きます」などというお話をしばしば伺います。
組織運営についてシステマティックにやらない方針なところが多いのか、結果として力の有無で押し通される面が少なくないのです。
そのため力がある者が、補助金を使用した"あこぎ"な商売を行っても是正はされず、いわゆる優しさとか信頼といった曖昧さで包んだだけの事勿れ主義によく指摘されているデメリットが悪用されてしまいます。

次に、そもそもこの「賃貸借契約が出来ない施設」という設定から、それを移住者に貸し与えるということは、しばしば疑われていた移住者を封殺しにかかっているという疑惑を深読みさせてしまっているため、極めて印象が悪いです。
説明不足であったのか、店側の失念かは、類似する契約形態の施設があれば比較検討可能かもしれませんが、証拠能力がある物(募集要項など、形態を説明する書類だが契約書ではないもの)が出てくる場合、市の説明不足があったとしても、店側の確認不足もあることにも繋がるでしょう。
また、今回のことで同施設では稼げないと判明してしまったため、新規契約者が集まらない可能性が高く、そのため、補助金を返金するという選択は必須となるのではと推察されます。

次に、「議会と市長が最終判断をしている」ため、少なくとも責任を取らざるを得ないでしょうが、再発を防止するのであれば、本項とかぶりますが、市長や議員を糾弾して気分をスッキリさせてしまうのではなく、ぜひそれを許しているシステムにこそ目が向けられて欲しいと感じております。

次に、これら大部分について、「田舎だから」や「土佐市だから」ではなく、システム上の問題であり、それはどの地域も起こりかねない要素が盛り沢山であったという点です。
おそらくここまで杜撰な手法が通用すると考えている人物が周りにいる場合、そこがいわゆる「悪いムラ社会」といえるのではないだろうか。それは、本稿をお読みになられているあなたのお住まいの地域も同様かもしれません。

最後に、退去通告の前、「市の職員に相談したところ、『通告は無効だから無視していい』という回答を得た」という部分が気にかかります。
同じくYahoo!の別の記事にて、土佐市(市長や担当者などは不明)からは「相談は受けていない」と証言されている記事があり、そこについては語られていないのです。

「強制立ち退き」迫られた?カフェが切実訴え 「地域おこし協力隊」として移住もトラブル...土佐市「問題がなかったか調査する」(J-CASTニュース) #Yahooニュース

つまり、記事が間違えているか、店側や市の証言がブレているか、コメントを控えている市が意図的に情報を変更したのではないか?ということになりますが、ふつうに考えれば、コメントを差し控えている市が奇妙です。
この返答が記録されていたならば、相談した市の職員と、インタビューした市の職員証言は矛盾することとなりますが、とにかく記録・証拠がなさすぎていてはっきりしません。
いま実際に類似するような案件に悩み、対策したい方には、ぜひ録音や撮影といった証拠の採集をお薦めします。

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