ワンピースを買った

袖とスカートが花柄の水色のワンピースを買った。
ショッピングモールからアウトレットまで移動したりして、最後に入ったお店で決めた1着。
運命を感じたとか、そんなものは無いのだけれど、私が初めて自らの意思で欲しいと強請ったワンピースであることには間違いない。

元々私は可愛いものが苦手だったのだ。水泳でゴツくなった肩幅や、身長が止まってもなお増える体重のせいで、お世辞にも可愛い服が似合うとは言えない見た目をしている。そのため、いつの間にか可愛いものを嫌悪するようになっていた。
(結局今は可愛いものが大好きだから、ただの嫉妬の様な気もするが)
高校生(細かく言うと中3)になってから、どうしてか可愛いものを素直に受け入れられるようになっていき、やがて愛でるようになった。
恐らく初めて彼女ができたこと(高校受験期に別れてしまったが)や、メイクを始めたことも関係している気がする。そういった経緯からか私は可愛いものが好きになり、少しずつ集めるようになった。

まずはコスメから。次は洋服。そうやって範囲を広げていって、最後に辿り着いたのがワンピースだった。私の中でワンピースは最も女の子らしくて可愛いものであり、最も着ることに抵抗のあるものだった。

それでも買った。欲しいと言った。明らかに今の私が着たらお腹や背中が気になってしまうとわかってはいながら、これを着てみたいのだと母に強請った。
帰宅して真っ先にタグを外し、ハンガーにかけてみた。可愛い。なんの変哲もない普通の部屋が、どうしてか少しだけ可愛くなった気がした。

学校終わり、家に1人だった私はこっそり着てみた。まず入ったことに安心して、それから鏡の前に立ってみる。
あーあ。嫌でも目に入ってくるお腹と背中の肉に顔が歪んだ。ワンピースはこんなにも可愛いのに。
こんなんじゃいけない、と気を取り直してアクセサリーも付けてみることにした。青い花のイヤリングはワンピースにとても合っているような気がして、少しだけ心が躍った。
鏡を何度も見て、それからすぐにワンピースを脱いだ。脱衣に苦労したことは、私をより落ち込ませた。

これから1ヶ月くらい本気でダイエットしてみようかなあ、なんて、ベッドに寝転がりながら打ってみる。きっと3日で終わるだろうな、と予想しつつも、このワンピースで外に出かけることができる日を夢見てほんの小さなやる気が湧いた。

これから夏だもんね。暑さできっとスルスル痩せちゃうよね。そんな希望を抱えつつ私は今日も明日も芸人のことで頭がいっぱい。果たしてこんなんで痩せられるもんかねぇ、と大人ぶってみたりする。でもきっと大丈夫。私はなんていったって優等生だから今夜からモリモリ筋トレとストレッチ始めちゃうもんね。モリモリ。

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