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カフェイン断ち1か月で驚いたこと

 数年前まではコーヒー、全然飲めなかったんですよね。その代わり、甘いものが好きで、飲み物といえば缶やペットボトルのロイヤルミルクティー。喫茶店に行ってもおおむねそれ。砂糖を一袋全部入れていました。

 パフェ会と称し、仕事終わりに千疋屋や西村や高野に集まることもあったし、居酒屋の後にびっくりドンキーに行くとか、バケツみたいな容器に入ったパフェを食べるとか、ざらでした。

 ところが、どういう過程・タイミングでそうなったのかはわからないのですが、急に味覚が変わって甘いものが全然ダメになり、代わりにコーヒーが飲めるようになりました。

 朝に家でコーヒーを飲み、出がけにキオスクで缶コーヒーを買い、出先では昼食に必ずコーヒーを飲み、午後は眠くなるのでコーヒーを飲む。原稿を書くのに喫茶店に籠ることも多く、当然コーヒーを注文します。それ以外のソフトドリンクはコーラがほとんど。

 さすがにコーヒー飲みすぎでは? と気づいたのは、コンビニのキャンペーンがきっかけです。近くのコンビニでペットボトルのコーヒーを1本買うとレシートにクーポンが印字され、来週そのクーポンを使うことでコーヒーがまた1本もらえるのです。ペットボトルのコーヒーは、3~4回に分けて牛乳で割って飲んでいました。

 毎日コーヒーを買っていたのでクーポンは順調に貯まっていたのですが、いつも買っている銘柄と違うので味覚に合わないな、と思っていながらも、貯めこんだボトルを消費したわけですが、なんとなくこの頃から手足が痒くなることが増えました。

 細かい針の剣山で広範囲を一度に刺されたような痒みで、季節柄暖かくなってきたことで汗腺が一度に開き、冬の間に溜まった老廃物が皮膚を刺激してそうなっているのかとも思ったのですが、熱い風呂に入って汗をかいて流そうが変わらないので、アレルギーだとしたら、思い当たるのは最近飲みまくっているコーヒーだな、と。

 そうでなくても、コーヒーやコーラでカフェインを摂りすぎのところでもあるし、これは思い切って断ってしまおう。

 ぼくは荒療治が好きなので、段階的に減らすということは考えません。なぜなら、コーヒーやコーラ一つ一つに入っているカフェイン量を正確に知らないからです。少なくとも缶やペットボトルの飲料には書いてありますが、それをいちいちメモして計算するのも、喫茶店のコーヒー一杯にどれくらい入っているのかを検索したりするのも、億劫です。

 ゼロかイチか。断つのが目的なら、グラデーションなんかつけずにゼロでいいだろ。

 コーヒーやコーラだけでなく、エナジードリンク、お茶や紅茶にもカフェインは入っているので、それらを一気にやめました。お茶はカフェインゼロと書いてある麦茶、ルイボスティー、ローズヒップに限り、ノンカフェインコーヒーなどの代替品は飲まないようにしました。

 ……カフェイン断ちをはじめて3日間、ロキソニンの世話になりました。ぼくは偏頭痛もちなのですが、それとは違う部位で頭痛が起こったんです。いつもは左目の奥から痛みが始まって側頭部からうなじにかけて痛むのですが、額のど真ん中が痛い。

 カフェインを断ったことによる「離脱症状」ということはわかっていたので、これは仕方ないな、と諦めました。コーヒーを飲めばたぶん治まるのでしょうが、それでは意味がないからです。

 頭痛の3日間を超えると、頭痛が弱まって、おそらく小さいやつがそういうふうに感じられるということなのだと思いますが、額から眉間にかけて「もやもや」が居座り始めました。そして、その重みもあって日中がとにかく眠い。

 季節的に花粉症も終わりかけではあったんですが、思考も何も鈍重になるんです。さすがに物を考えるのに「もやもや」は邪魔です。

 ここで投入したのがラムネ。ブドウ糖を摂取して脳に栄養を送り、突破しようという試みです。この試みは奏功しました。

 糖質を重点的にとっておこうということで、昼夜炭水化物を摂ったり、ポテチを食べたりしていたところ、体重が5キロくらい増えました。これは別の意味でヤバかった。ジーンズがパツパツになり、ズボンの上に腹が乗った。年に一度くらいひどく便秘になることがあって、たぶんそれとも重なった。

 思えばコーヒーを飲むとお通じがよくなる感じがあって飲んでいたというのもあったので、それを断ったら、そりゃ関所で停滞するよな、と。

 しょうがないので、サラダを食べる機会を増やしました。ぼくはもともと肉が好きで、なんで食物連鎖の頂点に立っている人間が草を食わないといけないのかよくわからない(=草を食べた獣を食べればよい)くらいだったんで、自らサラダを買ったり注文したりすることは無いんですが、しょうがないので増やしました。「しょうがない」と二回書いてしまうほど、率先して野菜を食べることなんて、無かったんです。

 炭水化物は、1日のうち1回だけ。ルールを細かくすると続かない。昼にご飯を食べたら夜はおかずだけ、昼にサラダだけだったら夜はたくさん食べてもよい、という簡単なルールにしました。

 これを続けていると、3週間目くらいには体が軽くなってきました。いつのまにかポテチを食べなくなったというのもあります。

 タイミングよくといえばいいのか、東京事務所をオープンしたので、通勤に最寄り駅は使わないようにして片道30分、往復1時間を歩くようにしました。1日の可処分時間のうち1時間もそれに充ててしまうのはどうか、とも思ったんですが、そもそも考えることが多い仕事なので、歩きながらものを考えるのはとにかく良い。

 振り返ってみると、人生において良い考えが浮かぶシチュエーションというのはだいぶ限られていて、ぼくは大抵シャワーを浴びているときか歩いているときなので、外を歩きながらシャワーを浴びたいくらいなのですが、それは逮捕されるやつです。

 机の上で考えている時間の蓄積があってこそ、シャワーや歩行時にそれらが結実しているのだともいえます。

 いよいよ1か月。次のような効果に気づきました。

  • 額のもやもやが無くなった。

  • コーヒーのおかわりに席を立つことがなくなった。トイレ(小)も減った。

  • 集中モードに入りやすくなり、出にくく(=飽きにくく)なった。これの効果はめちゃめちゃすごくて、ここ数年ぼくが悩んでいたことだった。集中できないのは加齢による老化だと思っていた。

  • 通勤時等にコーヒーを買わなくなった。一品買わないことのお小遣いへのインパクトはけっこうある。150円×2本×30日というだけで1万円ちかいよ!?

  • 便通が良くなった。正確に言えば、繊維が足りなくて出てないな、というのがわかるようになった。

  • 腹回りが元に戻った。これはカフェインを断った→離脱症状を超えるために糖質を摂るようになった→反動で太った→という愚策をサラダや徒歩1時間で解消した。という因果。

  • 睡眠時間帯が変わった。カフェイン断ちするまでは、午前3時に就寝して午前9時に起きるような感じだったが、とにかく眠くなるのが早いので、午前0時や、早い時には22時半に寝てしまうようになった。もちろん、夜更かしをすることもあるが、それでも午前8時には目が覚めてしまう。

  • 原因不明の痒みはほとんど無くなったが、汗のかき始めであれば汗腺が開いて熱くなる似た感覚はある。

 人によってベースとなる食生活も環境も身体の反応も知識も全然違うので、他の人がカフェイン断ちをしたところで別のことが起こったりするのだと思うのですが、とりあえずぼくはこんな感じでした。酒、タバコ、コーヒー……依存につながる嗜好品とはまったく無縁になってしまった。

 思えば、覚醒状態を維持するためにコーヒーを飲んでいたのだろうから、素で覚醒していればコーヒー要らないってことなんだろうな……。

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