W杯日本代表選出と代表戦自体に思うこと。

カタールワールドカップまであと2週間とちょっと。
先日1日に日本代表の発表も行われました。
正直、溜息もののメンバー発表でしたが、これに関しては監督の専権事項であって、文句は言えても誰も侵すことが出来ない代表監督唯一の仕事と言えるので古橋を何で外したのかだとか、柴崎が入って何で旗手や原口が外されたのかだとかは言わないでおきましょう。

ここで私が言いたいのはW杯自体、いえ、もっと広く言えば代表戦の意義です。
今回のW杯は異例の大会で開催時期がヨーロッパの主要リーグの真っ最中に行われます。
従来はシーズンが終わった5月~6月の開催であったのに、中東という開催地の都合でこの11月開催というイレギュラーな時期での開催となりました。
当然、ここにはFIFAがより多くの観客を確保したいという思惑のもとでカタールからの要請を受けたからに他なりません。
ですが、これによって選手や、所属するクラブにはとてつもなく大きな負担を強いられることになりました。
選手たちは4年に1度しかないビッグタイトルに参加したいという気持ちはあるでしょう。
ですが、ヨーロッパはそれと同時にネーションズリーグという金儲けのためだけに設立された公式戦が組まれており、日程はより厳しいものになっています。
強豪と言われれば、言われるほどに各国のスーパースターが集まるクラブ編成になるために選手は毎年60~70もの熱量の高い試合をこなさなければいけません。
当然、深刻なケガも増えてきます。

日本でいえばアーセナルの冨安 健洋が度重なるケガに悩まされています。
復帰を果たして左SBとしてポジションを確立したのも束の間、11/4未明のELの試合でまたしてもハムストリングを痛めて負傷交代しています。
板倉 滉も負傷離脱中で復帰は大会寸前と言われています。       中山 雄太に至っては手術を要する負傷でW杯は絶望。
ソシエダで素晴らしい活躍を見せていた久保 建英も肩を脱臼。
現在はチームに復帰しているそうですが、負傷明け。
ドイツで試合に絡んではいるもののさほど活躍したわけでもないですが、浅野 拓磨も負傷中。
ハッキリ言って、スカウティングしているのかと疑問に思うほどに負傷者だらけのメンバー構成になっています。

海外に目を向けると王者であり優勝候補筆頭と言われていたフランスはエンゴロ カンテ、ポール ポグバの中盤2人は参加不可能がほぼ確定的で最終ラインのラファエル ヴァラン、リュカ フェルナンデスが難しい状態、ウェズレイ フォファナも厳しいでしょう。
日本と対戦するドイツはティモ ヴェルナーが足首の靭帯断裂で欠場確定。
レロイ ザネ、トーマス ミュラー、マヌエル ノイアーのバイエルントリオも負傷からどれだけ回復できるかにかかっています。
イングランドはカルヴァン フィリップス、カイル ウォーカーのシティコンビがほぼ絶望的。
アルゼンチンに至ってはアンヘル ディマリア、パウロ ディバラの2人が参加できるか微妙な状態。
最終ラインのクリスティアン ロメロが年内絶望、中盤のジオバニ ロチェルソも欠場が濃厚。
更にショッキングなことに韓国のソン フンミンが顔面骨折。
リシャルリソンもふくらはぎを負傷と出場が危ぶまれています。

夏のプレシーズンに作ってきた体をフル回転で熾烈な戦いを繰り広げる各国リーグの前半戦。
更にはCLやEL、ECLがミッドウィークに開催されるためただでさえ試合が多いのも開始してからのこの3か月です。
そこにきて先にも述べたネーションズリーグなる利益のみを求めた馬鹿らしいコンペティションのせいで選手たちは代表ウィークに息を吐くことも許されなくなりました。
アフリカではANCが2年に1度あるためにウィンターブレイクがないプレミアは多くのアフリカ人選手たちを代表に送り込まなくてはならず、戦力を掻いた状態での試合を余儀なくされています。

代表での負傷に関しても各国には何の責任も課せられることもなく、治療にかかる費用も全てが所属クラブ持ち。
これで招集を拒否しようものならとてつもなく重いペナルティがクラブと選手に課せられることになります。

私はこんなにまで多方面にわたって迷惑をかけるコンテンツである代表戦が好きではありません。
世界最高を決める戦いはUEFA Champions Leagueであると思っていますし、寄せ集めの代表チームがクラブチームに勝ると思っている人間がいるとしたら本質が分からないナショナリストなのだとしか思えません。

話は変わって、ヨーロッパの主要リーグにアメリカ資本が入ることが珍しくなくなってきました。
彼らはファンサービスの一環にオールスターマッチを提案していると聞きます。
多くの人々がそれに反対していることも知っています。
ですが、強豪と呼ばれるクラブの人々は一考していただきたい。
オールスターに選手を送り込む代わりに代表への招集拒否ペナルティの撤廃や軽減、親善試合の縮小、大きく言えばネーションズリーグの廃止などを求めていく足掛かりにしてはどうでしょうか。
なぜなら、結局はW杯こそが代表戦におけるもっとも大きなコンテンツであることは動きません。
それは4年にわたる予選を勝ち上がってきた世界中の代表チームが戦うからこそ意義があるからです。
であれば、毎年行われる大会などに何の魅力がありますか?
事実、世界中のフットボールユニバースにおいてUEFAネーションズリーグがどれほどの認知を得ているでしょうか。
既に2大会が行われましたが、どこが優勝したか分かる人間が何%でしょうか。
世界中のサッカーがリアルタイムで見られる環境が整っている今、親善試合も意義を失っている。
チャリティや国際親善は重要だが、選手の健康状態やコンディションとどちらが大事かを良く理解してほしい。

今回のカタールW杯は例年になく冷めた大会になることは必至だろう。
それはお祭り騒ぎが大好きで代表万歳勢が多数を占める日本も例外ではない。
今後の代表戦の在り方を見直すためにもW杯には失敗してほしいと心のどこかで思ってしまう。
そんなことを思う初冬の土曜日。


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