2022年6-7月 最近読んだ本

読書欲がなぜかむくむくしているので、ここ2週間ほど本ばかり読んでいる

①恐竜まみれ/小林快次

 恐竜ファンなら皆知る小林先生の本。
 命がけ(ほんとに命がけ)
 化石ってそもそも秘境でしか出ないもので、秘境は命がけが基本。
 グリズリーに襲われかける、スコールで唐突に川ができて溺れかけるなどマジで命がけだった。そんな環境でも化石から恐竜の姿を想像して仮説を立てていく様子が研究者のすごさだなあと。
 獣医の人と福井の恐竜博物館に行ったことがあるんですけど、「象は1日中草を食べてやっと体を維持している。その象より何倍も大きい恐竜はどうやって体を維持しているのか」と私に聞かれ(知らんよ…)研究者気質の人って、自分の知識から未知のことに対して「不思議だ」「どうやっていたのか」と想像を巡らせることに長けているのだと思った。それを再確認した。そしてオタクにあるのは想像力じゃなくて妄想力だとも思った。

②高岡親王航海記/澁澤龍彦

 想像力と来たら空想力か。
 澁澤龍彦。長野まゆみが好きなのでよく比較されることから気になっていた。調べたところ、翻訳や学術書が多く、小説はこれしか見つからなかった。他にもあるのかな?発行元は変態に優しい河出書房。お世話になっています。
 内容は幻想奇譚そのもの。エロティシズムとオリエンタリズムを感じる優美な世界観。私の想像する幻想奇譚って甘美でエロくて品があり荒唐無稽、って感じなんですけど意外と探すと見つからないんですよね。「未知の鳥類がやってくるまで」って本も買ったりしたんですけど、こっちはとめどない空想って感じで結構この界隈もジャンル分けが難しいなと。
 本の内容自体は深く考えずに世界観に浸るタイプの本。ファムファタールに狂わされよう。

③medium 霊媒探偵城塚翡翠/相沢沙呼

 有名なやつ。
 ミステリーが好きで、表紙がきれいなのと、伏線回収が鮮やかとのことで文庫化を心待ちにしていたのだが…うーん…個人的には今一つ。面白かったけど本棚に並べて愛でていたい本ではないかなあ。
 以下ネタバレ
 




 いわゆる語り手=犯人。男性の描写に比べて女性の描写が異様に詳しくて作者は女の子が大好きなのかと思っていたが、語り手が犯人であり単純にやべー奴だったという。この、地の文にふわっと異常性をしこむ手段は珍しくて良いと思う。…けどそもそもこういう性格の悪さを前面に出した作品があんまり好きではないので好みに合わないなあという。最後ガンガンにメタフィクションで煽り散らしてきたしね、城塚翡翠。私、アンダーテールとかね…苦手なんですよ…。

④妖奇庵夜話シリーズ/榎田尤利

 大当たりを引いてしまったな…
 
めっちゃ面白かったです。癖です癖。
 えだゆうりさん、BLの方では存じ上げておりましたが一般書籍も…おもしろいね!中村明日美子先生の表紙も素敵。
 ホラー×ミステリー×異能ということで先述のメディウムと方向性が被ったかなーと思ったけども全く違った。こっちは結構ほのぼのとしている。
 方向性的にはミステリー色の強いしゃばけ。ホラー要素はほぼなし。キャラがそれぞれ立っているのでキャラ物のミステリーかと思いきや、しっかり犯人を考えさせる展開もあり、人間と妖人、それぞれの恐ろしさを感じたり。BL出身の作家さんによくあるんですけど、あらゆる境界があいまいな感じの作品で良かった。人間と妖人(人間だけど妖怪みたいな特殊能力を持った人)の違い、同じところ、恐ろしさ、愛しさ。家族の形、孤独の形。分かり合えること、分かり合えないこと。表裏一体それぞれのものが個として存在しつつもきれいに融和して混ざり合っていて良い形の混沌だなと思いました。
 主人公の伊織さんが美男子だけどそっけなくでも実は優しくていい人というもうどこのトワさんって感じだし(さらに隻眼だし)、彼に執着する色男の青目さんもいるし(女好きの癖に”どんな女もお前の美貌にはかなわない”とか思ってる)でこの関係性に狂いそうでした。中村明日美子先生の特典ペーパーが初回のみ封入とかいう事実が発覚して狂いそう。

⑤犬ほど素敵な商売はない

 BLの方。
 何にも考えずに買ったんですけどこれ新装版なんですね。BL本だと思って買ったら恒例の口絵カラー(だいたい肌色しかない)がなくて逆に困惑しました。挿絵もないので手に入るならBLレーベルで買った方がいいかも。攻めのビジュアルがわからん。
 ある特定の関係性で縛られてしまったがためにその関係から脱出できなくてもがくってのが良かったです。犬と飼い主のSM的な関係の描写かと思いきやそこからさらに発展していく様子が読みごたえがあった。なんかもっとこう、おかゆみたいなテンプレそのものの展開を想像していたので見くびっていましたすみません。BLの受け、拉致られがちというテンプレも完備していたので愉快でした。
 美青年が調教されて変えられていくエロさもあるんですけど、愛に飢えていた子が愛されてぐずぐずになっていくエロ可愛さもありました。あと鞭。

⑥花物語/吉屋信子

 百合です。
 女学生の清いほんのり百合かと思いきや、10年前に出会ったお姉さまとふと再会したらその子のイメージフラワーを彫った指輪を渡されるとかいう核弾頭を落とされてビビりました。えっ偶然の再会だよね?なんでもってるの?常に持ってたの??
 分厚いんですけど、1話あたり4頁ぐらいなものなので超絶読みやすいです。読み途中なのですが短すぎてむしろ物足りなさはあるかもしれない。こちらも河出出版。ありがてえ~~

おまけ:フリー乙女ゲーム「ドトコイ」

攻略キャラが■に見えるところから始まるという謎ゲー。
メイン攻略キャラ4人に対し隠しが7人いるというやりこみ仕様。楽しいじゃねえか。狂ってるけど王道のストーリーで良かったです。
教師がちゃんと教師してて感動した。