イギリス冒険記１

ロンドン・ヒースロー空港に着いてしまった。

移動時間がめちゃくちゃ長かった。家から関空まで2時間。関空でも待ち時間2時間半。関空からシャルル・ド・ゴールまで14時間半。トランジットで3時間。ヒースローまで1時間。まるまる1日移動していた。しかもあんまり寝れていない。

14時間半の間に寝ればよかったのだが、あんまり眠れない。左と前に座っているがきんちょがうるさかったのもあるし、体勢の問題もあるし。
ヒースロー到着は夜の9時半予定（実際には9時ちょうどに着いた）、滞在するドミトリーの関係で到着当日の宿がないため、「ヒースロー　仮眠」で検索して出てきたCOSTAコーヒーにて夜を明かそうとしていた。いくら空港とはいえ熟睡してはいけないだろうと思い、起きておくためにも、飛行機の中で寝たかったのに。

でも飛行機の中は悪くなかった。知らなかったけど、国際線のジャンボジェットだと後ろの方の席がドリンクバーみたいになってて、立ち歩いておしゃべりできるらしい。ずっと座っていて固まった体をウンと伸ばすために行ってみた。人がミチミチに立っていた。申し訳程度にトマトジュースをもらって帰るけど、しょっぱかった。

でもこのスペースのいいところは、潜水艦の窓みたいな小さな丸い窓があって、外が見えるところ。通路側の席に座っていて全然外が見えない私としてはかなり嬉しい。

結局この小窓に無駄に通ったのだけど、無駄に通っていたおかげで思いがけないものが見れた。上空からのオーロラである。

確かに北極圏を通るなあとは思っていたのだけど、そんなもん、見れると思わないじゃないか！

初めて気付いた時は目を疑った。だってあの、イッテQとかで、映像でしか見たことないあの綺麗な光景が、見れると思っていない。ぼんやりとしていて、でも明らかに帯になっていて、緑色で、確かにカーテンである。レックウザみたいな感じである。

泣いた。綺麗なもの見て泣く人のことバカにしてたけど泣いた。綺麗なもの見ると人って泣くんやな。多分私は宇宙で地球見ても泣く。行かないけど。
ずっと窓に張り付いて写真を撮っていたので、不思議がられたらしく、周りにいた人たちが日本語で「この人すごい写真撮ってるけど、見えるのかな」と言っているのが聞こえた。日本人じゃないと思われたらしい。「見えますよ」と言って席を譲ると動揺されていた。その後4人いた日本人たちはオーロラ談義になっていたのだが、やれ「僕が初めて見たのはどこどこでしたね」やら「あそこのオーロラは綺麗だね」やらマウント取り合っていたので馬鹿馬鹿しくなって退出した。ぼんやり聞いていたところによるとフランスでワインの輸入の仕事をしているらしい人が1人いたが、やはりかという感想を抱いて席に戻る。

人間は汚いがオーロラは美しかった。地球上のどこかであれが怒っていると思うと、なんでも良くなってくるくらいには綺麗だった。見えた時眼下は雲に覆われていて、つまり地上からそのオーロラを見るkとはできなくて、周りを見回しても他に飛行機は見つからなかったから、本当にあれを見ていたのは私たちだけということになる。誰かに見てもらうためでなく、勝手に起こっているあんなに美しい現象があるとは。間違いなく本日のハイライトである。

シャルル・ドゴールではたまたま話しかけられたおばちゃんに中国の人だと思われ、いや日本人なんですと返したところからしばらく話が弾み、結果彼女が経験した「神のお告げ」の話を聞いていた。そのためここにいるという。ヒースローでは入国審査のおっさんにめちゃくちゃ話しかけられ、うっかりCOSTAで夜を明かすと答えてしまったがために「じゃあ仕事終わったら行くわ」と言われ違う階のCafe NEROに滞在先を変更したりした。結局NEROにそのおっさん、来たけど。追い払ったけど。本当はYotelというカプセルホテルがあるって聞いてて、ダメもとで当日カウンターに突撃してみようと思っていたのだが、Yotelの場所に行ってみたけど何もなくて怖かった。せめて何かあれよ。
NEROでは2つ上の、グラスゴーの学生だという中国人男子と話したりした。なんかココアくれた。が、欧米特有の香りづけがされていて食指が動かない。そもそも私、自分で注文したカフェオレまるまる残ってるんよな。

そういえば機内食、当然のように小麦食だったけど耐えられるだろうか。パン、最近そんな好きじゃないけど。小麦系の主食、できれば避けたいけど。辛いのも甘いのもそんな好きじゃないけど。やばいかもしれない。

そういえば母親が学生の頃1ヶ月イギリスにホームステイしていて、太って帰ったと言っていた。ラズベリージャムが挟まったドーナツにどハマりして、そればっかり食べていたかららしい。それを聞いた時は（大丈夫かよ）とか（自分は大丈夫かな、たぶん好きな味じゃないし）とかしか思っていなかったが、よく考えてみるとラズベリードーナツを好きになって頬張る母親、可愛い。そのまま健やかに育ってほしいよね。不思議な気持ち。

時差とかタイミングとか好みとかの問題で、出発してからあまり食べていないし今も何も食欲が湧かないが、さっきNEROの女の子がくれた（賞味期限切れで捨てちゃうからもらってくれと言われた）チョコクロワッサンはすごい美味しそうに見えるので食べようと思う。お礼にと、持ってきた千代紙でめちゃくちゃ丁寧に折り鶴を折って渡したらなんか喜んでくれた。

寝よ。