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37鍼灸小説「道案内のシンシン」:一国一城

無事引越しも終わり、いよいよ店舗を構えることになった我が「鍼灸院比呂」

今まで往診専門でやっていたので

いろいろと登録をしに保健所や役所に行かないといけない。

それにチラシに地図を入れたり

ホームページ内容を変更しないといけないし

治療室の内装用に買い物にも行かないといけない。

エアコンに、サイドボード、椅子、着替えを入れるボックス、ゴミ箱などなど

内装はオシャレにしたいから雑貨屋さん巡りにも結構時間がかかった。

時間がいくらあっても足りないくらいだ。

「比呂殿!拙者のヌンチャクを知らないでござるか?」

「押入れの中の段ボールに入ってない?」

「さっき見たけど無かったでござる」

「じゃあキッチンの前にある段ボールかも」

「OKでござる」

先に治療部屋のほうを形作ったものだから

いろいろな物が、こんがらがって収納されてしまった。

「比呂殿、そろそろチラシ撒きに行かないとダメでござるよ!」

「あ、もうこんな時間か!行ってきまーす!」

僕は慌ててチラシを持って家を飛び出した。

チラシのポスティングバイトは楽だと思って

始めてみたものの

意外にも大きなマンションは

「チラシお断り!」

と玄関に貼られている場合が多かった。

そのため一軒家に1枚ずつ入れていくから時間も労力も削られていった。

最初はシンシンが張り切って手伝ってくれていたけどポスティング途中で犬に吠えられてから一切手伝ってくれなくなってしまった。

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目が回る忙しさとはこのことか…

それでも

住居兼治療院とはいえ『一国一城の主』

になれたことが嬉しくてハイテンションで

日々の雑務をこなしていった。


つづく





シンシン 「サポートが加われば鬼に金棒 拙者に丸ごとバナナでござるよ!」 比呂  (そこは愛刀とうがらしじゃないんだ…)