鍼灸小説「道案内のシンシン」〜その36:物件探し④
今回の物件はポストに異常もなく、一安心。
駅からも徒歩2分と近いわりに
電車の音が全然聞こえない。
不動産屋さん言わく、鷺沼駅は谷の形で地下に線路が通っているため音が静かなんだそうで
治療院としては駅近なのに周りが静かというのは凄くポイントが高かった。
間取りは3DKと細かく分かれていて
1DKのエリアを生活空間にして
残りの2部屋を待合室と治療室にできる。
しかも三階!
これならシンシンの高所恐怖症もギリギリOKなはずだ。
僕は早速、家に帰ってシンシンに
間取り図と写真を見せた。
「ふむふむ、なかなか良いでござるな…
三階というのが気になるでござるが…」
「でもシンシン、見てベランダから下はすぐ二階のエントランスだから、三階っていう感じしないでしょ!」
「ほうほう、これは見た感じ二階でござるな!」
「でしょ!でしょ!」
「共益費込みで138000円でござるか。ということは2年後に支払う更新料を計算に入れて…」
凄い勢いでシンシンコンピュータが計算を始めた。
更新料のことなんか、全く想定していなかった僕は黙ってシンシンの計算を待った。
「今の売り上げでギリでござるな…」
「ギリなら大丈夫でしょ?」
それを聞いてシンシンは軽く溜め息をついた。
「比呂殿、毎月毎月同じ売上になるという保証はどこにも無いのでござるよ」
意外と慎重派なシンシン。
「そっか…じゃ、じゃあポスティングのバイトするよ!治療院のチラシも一緒にポストに入れれば一石二鳥だし」
「そんなバイトがあるでござるか?」
「うん!なんか高級マンションのチラシを家のポストに投函するっていうバイトがあって一枚3円くらい貰えるんだって」
「1000件回って3000円でござるか…月に3000件は回って欲しい所、つまり毎日100件はポスティングしないとダメでござる!大丈夫でござるか?」
「うん100件くらいなら余裕だよ!」
「よし!ならば思い切って鷺沼の物件を押さえるでござる!」
「わーい、OK!」
僕は不動産屋さんに連絡を取りマンションを契約することにした。
いよいよ鍼灸院比呂の店舗が出来るのだ。
つづく
シンシン 「サポートが加われば鬼に金棒 拙者に丸ごとバナナでござるよ!」 比呂 (そこは愛刀とうがらしじゃないんだ…)