鍼灸小説「道案内のシンシン」〜その24: デスノート由紀
今日は久しぶりに藤が丘にある美容院フラップにやってきた。
いろいろな美容院を巡ったが天然パーマの僕の髪の毛を綺麗にセットできるのは美容院フラップしかないと思っている。
「ではシャンプー台にどうぞ!」
いつも元気いっぱいのアシスタント、由紀ちゃん。
可愛らしい顔をしているが、『デスノート由紀』という異名を持っている。
由紀ちゃんが好きになった芸能人は必ずと言うほど不幸に見舞われるのだ。
前回は好きだと話していたアイドルが失踪して落ち込んでいたし、前々回は好きな歌手が薬物で逮捕、その前はファンの芸人が交通事故と…
枚挙にいとまが無い。
「ちょんまげ可愛いね〜」
「そうでござるか!」
と嬉しそうなシンシンの声が聞こえる。
どうやら今回由紀ちゃんのターゲットはシンシンに決まったようだ。
まあ神様の化身だから大丈夫だろう。
「ついに開業って聞いたよ!うちのホームページにリンク貼るからURL教えてね」
とオーナーの田浜隆一さんが声をかけてくれた。
「ありがとうございます。開業って言っても、まだ往診専門のぺーぺですけどねー」と照れながら応える僕。
シャンプーを終え席に着くと奥さんの友子さんが
「ちょっと聞いてよ比呂先生〜」と由紀ちゃん伝説を語りながら髪を切り始めた。
友子さんは以前ギックリ腰ならぬギックリ背中を起こし往診を頼まれたことがある。
そんな奇病?を試行錯誤で必死に治療したら何とか良くなったこともあり、それ以来『比呂先生』と呼んでくれている。
友子さんは会話をしながらも凄いスピードで僕のモコモコヘアーを綺麗にカットしていく。
カットが終わると
「うちのお客様で治療院探している方が結構いるから宣伝任せてね!」
と宣伝隊長を買って出てくれた。
「こうでござるか!」
「そうそうシンシン君カッコイイ❤️」
振り返るとシンシンの毛先は由紀ちゃんによって
ビジュアル系バンドのような形でセットされていた。
(あの、ちょんまげって侍の魂的なものなんじゃ…)
神の髪をも遊んでしまうとは
デスノート由紀恐るべし…
つづく
シンシン 「サポートが加われば鬼に金棒 拙者に丸ごとバナナでござるよ!」 比呂 (そこは愛刀とうがらしじゃないんだ…)