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鍼灸小説「道案内のシンシン」〜その38: 美容院flap

店舗構えることになった僕は、報告がてら藤が丘にある美容院フラップに髪を切りに行った。

「シンシンさん!おはようございます!」
何故か、スタッフの由紀ちゃんが
深々とシンシンに挨拶をしている。

由紀ちゃんは「デスノート由紀」という異名を持っており、好きになったアイドルや芸人が次々とハプニングを起こすことで有名で、前回訪れた時シンシン VS  由紀 の戦いではシンシンの魂ともいえる丁髷をビジュアル系バンドみたいな髪型にセットした由紀ちゃんに軍配が上がった。

そんな由紀ちゃんが何故か運動部の後輩みたいに深々と挨拶をしているのだ。

担当の友子さんが僕の髪を切りながら

「ちょっと聞いてよ比呂先生、最近の由紀ちゃんのハプニング!」と笑いながら話出した。

ここ二ヶ月の間で通常では考えられないようなハプニングが由紀ちゃんに起こったようで…

ある時は地元のハンバーガー屋さんで

月見ハンバーガーを注文したらメインディッシュである卵が入っていなかったり…


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ある時はラーメン屋さんで友人と話していて一瞬どんぶりから目を離したら、鉛筆がラーメンに刺さっていたり…

(注文取っていた店員さんの手から滑り落ちたらしい)

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極め付けは駅で仲間内でワイワイ話していたら

突然走ってきた犬にマフラーの端っこを咥えられ

危くそのまま絞殺されそうになったりと…

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有り得ないハプニングの連続だったというのだ。

由紀ちゃん的にも何かの祟りかと思ったらしく

真っ先に思い浮かんだのがシンシンの顔だったそうで、今日やたらとシンシンに低姿勢なのは

そんな理由からだった。

「シンシンさん!お飲物いかがなさいますか?」

「拙者バナナシェイクが飲みたいでござる」

(おいおい美容院にシェイクがあるわけないだろ)

と思っていたら、

「かしこまりました!」

と言って由紀ちゃんはダッシュで駅のほうに走って行った。そして10分後汗だくになった由紀ちゃんがバナナシェイクを持って帰ってきた。

「シンシンさんお待たせして申し訳ございません!」

「いいでござるよ」

何故か偉そうなシンシンに僕はイラッとしつつも

新しく出来たチラシを田浜夫妻に見てもらった。

「おお〜ついに店舗じゃないですか!」

と田浜隆一さん。

「いやぁ住居兼なんで、まだまだこれからなんですけどね」

「うちのお客さんで往診に来てもらうのは、家を片付けなきゃいけないから呼びづらいっていう人多いから店舗に行けるってなれば喜んで行くと思うよ!」

と友子さん。

「そうですか!ありがとうございます!また紹介宜しくお願いします!」

と僕は深々と頭を下げた。

お会計終え「シンシン帰るよー」

と振り向くと

由紀ちゃんがめちゃめちゃ丁寧に

シンシンの丁髷を整えていた。

(どうか由紀ちゃんに御利益ありますように)

そう祈りつつ僕はシンシンを連れ店を出た。

つづく

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シンシン 「サポートが加われば鬼に金棒 拙者に丸ごとバナナでござるよ!」 比呂  (そこは愛刀とうがらしじゃないんだ…)