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43鍼灸小説「道案内のシンシン」:学会終わり

鍼灸学会での様々な講演や発表を見終えた僕は鍼灸関連の業者スペースに向かった。

会場はお土産にサンプルを貰おうとする人々で大混雑していた。

サンプルというのは鍼やお灸を二、三個パック詰めしたものだ。

鍼とお灸はメーカーによって様々な特徴があり使う人間によって好みが分かれる。

しかし数本、数個とバラ売りをしておらず100本単位、数百個単位で販売されているため学会でサンプルがもらえるのは貴重なのだ。

業者側としても試してもらわないと買ってもらえないので宣伝とばかりにサンプルを大盤振る舞いしてくれる。

サンプルゲットは鍼灸学会での醍醐味の一つでもある。

僕も人混みをかき分け、なんとか三つほどサンプルを手にすることができた。

「よし、お土産もゲットしたしビールでも買って帰るか!」

帰りの電車でサンプルと一緒に貰った商品の説明書きを読んでいると、近くで峰鷹さんの声が聞こえた。

顔をあげ声のする方に目を向けると少し離れた所に峰高さんが立っていた。

(あ!峰高さんだ!どうしよう声かけようかな…失礼かな…)

そんなことを考えながらコッソリと初恋相手を見ていた僕に衝撃が走った。

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なんと峰高さんの右手は隣にいた男性と繋がれていたのだ。

ガーーーン!

(か、彼氏できたんだ…)

最寄り駅に着いても失恋のショックは増すばかりだった。

コンビニに寄ってビールを買おうと思っていたが、何だか飲む気にもなれず丸ごとバナナを手に取った。

(帰ったら学会の復習をしよう!)

僕は失恋のショックを忘れるために勉強で頭を一杯にしようと決めた。

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つづく

シンシン 「サポートが加われば鬼に金棒 拙者に丸ごとバナナでござるよ!」 比呂  (そこは愛刀とうがらしじゃないんだ…)